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Truth Of Legend  作者: 座敷猫
第三章:アミナス教国編

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47話:宣戦布告

〜前回のあらすじ〜

降臨祭の終盤、メインイベントである女神降臨の儀を終えた直後、突如として上空が眩い光に覆われる。

その光景は一瞬演出として人々の目に映るも、直後巫女から告げられたのは"魔法による敵からの襲撃である"という恐ろしい事実。

何故そんなことになったのか……事態は少し前に遡る。


※今回は魔族側が視点の話です

「わぁ……」


 目の前の光景に思わず吐息(といき)()れてしまう。

 心臓の鼓動(こどう)が止まらない。加速する。

 この感情は一体なんなのだろう?これが恋……?

 いや、恋は(すで)に知っている。

 それにこの感覚、()()()も同じものを覚えた。

 そうだ、この気持ちは……




 ──────美しい。





「フフ……グプッ……!」


 視界一杯(いっぱい)に広がる緋色(ひいろ)(かがや)きに対し、紺色(こんいろ)のフードを被った()()は混じり気のない純粋(じゅんすい)な感情を抱く。



「あ……が……」

「悪魔……め……」

「誰……か……たす……」



 景観(けいかん)だけではない。

 自分達に最後まで抵抗してきたウジ虫達による断末魔(だんまつま)呪詛(じゅそ)(うめ)き声……そして肉の焼ける死臭(ししゅう)……

 それら全てが調和(ハーモニー)(かな)でるように、この芸術のような美しさを構成しているのだ。



「アハッ……アハハハハハハ……!!」


 人の(いとな)みがあった都市()()()場所の中心で、一匹の魔物────全能のフォルリアは高笑いを上げていた。


 "城塞都市(じょうさいとし)トロイアイト"

 クヴィスリングと同様、これまで幾度(いくど)となく自軍の大陸中央への侵攻(しんこう)を邪魔してきた敵側の(とりで)の一つ。

 海域に(へだ)てられた地形の悪条件や、これまで大陸中央への侵攻(しんこう)に戦力を()くことが出来なかった関係上、長年攻め落とすことが出来なかったが……



「やっと……ここまで来たか」



挿絵(By みてみん)




 ────大陸北部をほぼ完全に掌握(しょうあく)し、()()()()が前に出てきた今、形勢(けいせい)は変わったのだ。



流石(さすが)です……流石です……!」


 積み上げられた(しかばね)の上に君臨(くんりん)し、一息を()く自らが主君(あるじ)

 "全能"の二つ名を持つ自分をして戦慄(せんりつ)する程の圧倒的魔力、そして敵対者を一方的に蹂躙(じゅうりん)する力……

 数々の英雄が並び立つ戦場の中であって(なお)一際(ひときわ)存在感を放つ()を前にフォルリアは恍惚(こうこつ)としてその名を口にする。



「ハイル様ぁ……ッ!!」




「……戦況(せんきょう)を報告しろ」




『ズキッ……』



 返ってきたのは抑揚(よくよう)のない、普段通りの冷淡(れいたん)な反応。

 その事に一抹(いちまつ)(さび)しさを覚えるも、敬愛する主君の要望に応えようとフォルリアは「はい……」と報告を開始する。


「下級兵を何割か失いましたが影響は微々たるもの、全ては首尾(しゅび)よく進行しております……これで(ようや)く我が軍は敵の本拠地(ほんきょち)────アミナス教国(きょうこく)の目前まで迫ることに成功致しました」

「聖地アミナス……なんとも懐かしく……不愉快(ふゆかい)な響きだ」

「……ただ人間共も(さか)しいと言いますか、どうやら開戦当初から騎馬(きば)を何頭か天使(エルフ)共の国に向け放っていたようです……ここの情報が渡るのも時間の問題かと」



 城塞都市トロイアイトでの戦いを終えた後、フォルリアが感知したのは南方へと向かう(いく)つかの魔力反応。

 咄嗟(とっさ)に追撃部隊を送ることも考えたが、その時点では何をしようと追い付けず徒労(とろう)に終わることは明白だった。


 本来であればこの場を駐屯地(ちゅうとんち)として領土(りょうど)を広げ、各方面に戦力を展開した上で一気に敵の中枢(アミナス教国)を攻めるのが理想的な流れであった。

 しかしこの侵攻が伝わってしまえば、天使共はすぐに周辺国と結託(けったく)してここを包囲し、潰しに掛かる(はず)……


 時間がない────そんな懸念(けねん)を口にすると、王であるハイルは「問題ない……」と返して自身に背を向ける。



「聞け……優秀なる我が子孫(しそん)達よ……!」


 その先に広がるは、彼自身が生み出した何万もの同胞(どうほう)が待機する姿。

 主君の言葉に一斉(いっせい)に上を向く彼等に対し、王は両腕を(かか)悠々(ゆうゆう)と演説を始める。


「我々は今日、悪夢始まりしこの大陸中央の制圧を開始し……そして今、(ようや)く敵の喉元(のどもと)に剣を突き立てるまでに至った」


 同胞達は皆、一切の音を立てずに王の言葉を聞き入っていた。

 当然だ────彼等にとって……フォルリアにとってハイルは自分達を生み出した神にも等しい存在なのだから。


「ここまでの戦いで我々は多くの同胞を、大切な家族を失ってきた……これは真の平和のための聖戦(せいせん)であり、それを勝ち得る(ため)、私は長年準備を進めてきた」


 やがて王は掲げた両腕に魔力を集中させ、(まばゆ)い光を放つ。

 凝縮(ぎょうしゅく)された様々な属性の魔力……フォルリアをも凌駕(りょうが)する魔力を持つ彼によって生み出されたそれは、地獄の業火に焼かれた街並みをより一層(いっそう)明るく照らしていた。


()(じゅく)した……今こそあの(いつわ)りの女神の軍勢(ぐんぜい)を討ち倒し、我ら一族に真の安寧(あんねい)(もたら)すのだ!!」


 そして最後の言葉と共に光は上空へと放たれる。

 それは天使共への宣戦布告(せんせんふこく)を意味していた。


 ────瞬間、場に大きな喝采(かっさい)が上がる。


「ハイル様!!」「明るい未来を!!」「ハイル!ハイル!ハイル!ハイル!」「新しい歴史はここから始まるのだ!!」


 最高潮(さいこうちょう)まで高まった士気(しき)……王は満足気に(うなず)き、自らが光を放った方へとゆっくりと歩き出す。



「フォルリア……お前は兵を生み出しつつ護衛と共にここを死守(ししゅ)していろ」

「!?」


 その後に自身も続こうとした時だった。

 王から出された新たな(めい)にフォルリアは目を見開く。

 トロイアイト跡地(この場)の防衛……それは退却経路(たいきゃくけいろ)の確保を意味していた。


「お、お待ちください!!どうか私も……貴方様(あなたさま)のお側にお(つか)えさせて頂きたく……!!」


 一見重要な任務ではあるものの、実態(じったい)は万が一の敗戦を想定した(そな)えだ。

 前線に出る者に比べれば遥かに期待値の低い配置……そんな屈辱(くつじょく)はフォルリアには耐えられない。

 何よりも、敬愛する主君(ハイル)の側にいたかった。



「クヴィスリングで(いたずら)に兵を失ったお前が……か?それに()の用意はどうした?」

「……ッ」


 許しを得るべく必死になって懇願(こんがん)するも、返される言葉はただただ冷たく、フォルリアは思わず声を詰まらせる。

 試行錯誤(しこうさくご)を繰り返すも未だ成し得ていない王の悲願(ひがん)、そして城塞都市クヴィスリングでの失態(しったい)……

 それらはハイルからの信頼を(そこ)なうには十分な理由(もの)だったようだ。



「フォルリアよ、信頼を回復したいのであれば先ずは私の(めい)に素直に(したが)うことだ……さァゆくぞ、()()()()よ」

「はっ、(おお)せのままに……魔王様」


 王の(となり)────本来自分がいるべき場所に今立つのは、黒血(こっけつ)色の外套(がいとう)と異様な雰囲気を(まと)いし騎士、ただ一人だけ。





「……さない」


 遠ざかっていく彼等の後ろ姿を呆然(ぼうぜん)と見送るフォルリア。

 その内には喪失感(そうしつかん)……そして自身の信頼を失墜(しっつい)させ、居場所を(うば)った人間への激しい憎悪(ぞうお)がメラメラと燃え上がりつつあった。


「絶対に……許さない……ッ!!」


 奴ら────特に奇怪(きかい)な能力で自身を翻弄(ほんろう)したあの赤髪の男……

 一瞬だけ触れることが出来たあの時、自身の魔法で身体を調べたが、結果判明したのは奴が何の変哲(へんてつ)もない凡庸(ぼんよう)な人間であるという事実だけ。


 自身が奴に変身した時、結局あの時の戦闘で見せられた数々の力を使うことは出来なかった。

 それならば何故……まさか……


「あの虫ケラ……絶対にこの手で散々(さんざん)に苦しめてから、殺してやる……ッ!!」


 ────いずれにせよ、奴だけは自身の手で仕留(しと)めなければ。


 気が付けば、心を支配していたのは先程抱いていたものとは真逆の感情。

 憎しみと悪意……全能のフォルリアの次の標的(ターゲット)が決まった瞬間だった。

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