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Truth Of Legend  作者: 座敷猫
第三章:アミナス教国編

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38.5話:憧れと弱音

番外編です。この話はアルスがスーヤ騎士団からの誘いに対する相談をシオンとした後の、幼馴染二人の秘密の会話です。

「にしてもアルスさ……改めてだけど、ちょっと雰囲気変わったね」

「え?そ、そうか……?」


 それは巫女(みこ)レイアからの"スーヤ騎士団に入らないか"という誘いに対し、勇者アルスが自身の考えを(まと)めた後の事だった。

 幼馴染(おさななじみ)の少女────シオンからの思わぬ言葉に動揺を(あら)わにするアルスに対し、彼女は「えぇ……」と言葉を続ける。


「昔よりなんか、すごく頼りになる感じがするもの……正直ちょっと驚いたわ」

「そういうことか……これでも一応一つの部隊を率いる勇者だからな。そう見えたならよかったよ」

「そうね……まるで()()()みたい」


 それは数年間離れ離れになり、久しぶりに再会した幼馴染からの飾り気のない素朴(そぼく)な感想。

 兄さん────"勇者カリヴァ"みたいだと言われた赤髪の青年は、思わず「ふっ……」と自嘲的(じちょうてき)な笑みを浮かべる。


「やっぱり俺は……君の言った通り、無意識に真似てるのかもな」

「え?」

「ずっと、憧れだったんだ……いつも堂々としていて、自分で未来(みち)を切り開いていくカリヴァが」

「アルス……」


 かつては揶揄(からか)われた……いつの間にか染み付いてしまった親友(カリヴァ)と似たような口調・立ち振る舞い。

 "勇者"になってからはより意識的に彼の振る舞いを真似るように……それだけアルスにとってカリヴァは理想的な、まるで物語に出てくるような"英雄"そのものだったのだ。



「彼と同じ立場になってよく分かった……皆を(みちび)く勇者になった以上、弱気な姿は見せられないって」


 そして同時に、これまでは思い至らなかった勇者(リーダー)としての苦悩にも気付くようになった。

 皆の前では自信があるように見せ、その場その場で自信が正しいと思う判断を下しているものの……実際にそれが本当に正しい選択だったのか、後で悩むことも多々だ。


「でもな、本当は不安なんだ……俺はちゃんとカリヴァみたいに正しい判断を、行動を出来てるのかって」

「……」

「ははっ…もしかしたらカリヴァも今の俺と同じように悩んでたのかもな……今更気付かされるなんて」


 レヴィン・ウォルフ・フィルビー……他の皆には決して見せることはなかったアルス自身の苦悩。

 それを今打ち明けることが出来ているのは……ひとえに相手が幼少期から共に過ごし、家族同然の相手であるシオンだからだった。

 (なお)も自嘲的に笑うアルスに対し、シオンは「そうかもね」とすげなく返すが……


「でもね、アルス……どれだけ近づいても、強くなっても、アナタは兄さんとは違うわ」

「なに?どういう意味だ……?」

「だって……アナタには私がいるもの」

「!!」


 ──────続いた言葉はアルスが予想してもなかったもの。

 面を喰らう勇者に対し、茶髪の少女は普段とは少し違う……真剣ながらも優しさを感じさせる表情で向き直ってくる。


「今だってこうやって話してくれた……私の前でだけは、昔の()()()()()に戻っていいんだよ」

「シオン……」

「兄さんは私にはそういう弱音(とこ)見せてくれなかった。だからアナタはちゃんと、私を頼ってよね……アルス」

「……あぁ」


 不意に風になって自然を感じさせるいい匂いが流れてくる。きっと神秘の森から運ばれてきたものだろう。


「そうだな、そうさせてもらうよ……今ここに、()()()を知ってるのは君だけだからな」


 その中には彼女が好きな花の香りも含まれていた気がした。しかしその中に彼女が特に好きだった()()()の姿はない。

 カリヴァと無事再会出来たら……いつかまた、故郷に帰って三人で見に行きたい──────


 自身を優しく包み込むような甘い言葉を言うシオンに対し、アルスは感謝を述べつつも内心で()()()()()()()()へと想いを馳せるのだった。

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