表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Truth Of Legend  作者: 座敷猫
第一章:ヴァイゼン村編
3/33

3話:握手

前半は前回と同じく勇者アルスの視点ですが、

最後の方に別の人物の視点が入ります。

 突如(とつじょ)として魔獣(まじゅう)と戦っていたアルス達の前に現れ、大剣を手に此方(こちら)に突っ込んでくる大男。


 ───その(ねら)いはアルスではない。


『ザシュッ!!』

 (するど)い音と共に地面に落ちたのは、今まさにアルスに(おそ)い掛からんとしていた魔獣(ヘルハウンド)の首。


 大男はそのまま魔獣(まじゅう)の群れを次々と叩き斬っていく。

 その動きはとても素早(すばや)(かろ)やかで、とても重そうな鎧を身に付けてるとは思えない。


「すごいな…」

 アルスは男の動きに感心しつつも、自身も残りの魔獣を()っていった。



 ・・・



「ふぅ…ありがとう、助かった」

「あ、ありがと…」


 魔獣を全て狩り終え、助力(じょりょく)してくれた大男にお礼を述べるアルス。

 流石(さすが)にと言うべきか……普段は刺々(とげとげ)しい物言(ものい)いのレヴィンも、この時ばかりはアルスに続いて素直に礼を言っていた。


「…こんな(くんだ)りまで女連れて遠足(ピクニック)か?良いご身分(みぶん)だな」


 ───しかし(とう)の大男から返ってきたのは(けわ)しい表情(ひょうじょう)苦言(くげん)

 思わぬ反応だったのか「…はぁ?」とムッとした反応を見せるレヴィンに対し、大男は「()せろ、死にたくなかったらな…」とだけ言い残して背中を向けた。


「俺は魔王討伐隊(まおうとうばつたい)の勇者…アルスだ」

「…あぁ?」


 去り行く背中を呼び止める様にアルスが名乗ると、男は足を止めて振り向き……何を思ったのか、まるで馬鹿にでもするかの様に鼻を鳴らす。


「はっ…討伐隊か、なら一つ忠告(ちゅうこく)してやる…そこの女…お前、今すぐ()めろ」

「は…?なんでアンタにそんなこと…」

「戦いの最中(さいちゅう)ぷるぷる震えてるだけの奴は邪魔(じゃま)だっつってんだよ」

「!!」


 不意に自身に向けられたキツい言葉に対し、レヴィンは心底(しんそこ)不愉快そうな表情を浮かべ()()ねようとするも、()いで男の口から出てきた言葉にその身を震わせた。


「今回は運が良かったようだが…次はないぜ?お前か、そこの男が死ぬだろうよ…お前を(かば)ってな」

「うるさい…!次こそは……ッ」

「次なんてねぇんだよ、実戦には」


 (くや)しそうに顔を(ゆが)ませながらも必死に食い下がろうとするレヴィン───そんな彼女の言葉はバッサリと切り捨てられた。

 それでも目に(なみだ)を浮かべながら口をパクパクさせるも、結局は何も言い返せず……


「うっ…うぅ…!」


 ───(つい)には(くず)れるようにその場で(かが)み込み、嗚咽(おえつ)し始めた。


「レヴィン…レヴィン!!」

「…ぇ?」


 その様子を(だま)って見てはいられず、アルスは思わず彼女と目線を合わせるように(かが)み声を掛ける。


「俺も初めて魔族と戦った時は、君のように足が(すく)んだ……だから気持ちは分かる」


 ───それは(なぐさ)めと共感(きょうかん)の言葉。


 恐らくレヴィンは実戦が初めてだったのだろう。

 突然の魔獣の襲来(しゅうらい)でそこまで頭が回らなかったが、見た目の若さを考えれば当然のことだ。

 そのことを考慮(こうりょ)せず敵を彼女に任せようとした自分にも今回の件は非がある。


(あせ)らなくていい…慣れるまでは俺が何度でも守る…仲間だからな」

 ……そう考え、アルスは涙を(こぼ)す彼女に優しく声を掛け続けた。


「心配するな、俺は強い…死にはしないさ」

「う…うぅ…」

 その思いが通じたのかは(さだ)かではないが、彼女は涙を流しながらも(ようや)く少し落ち着きを取り戻したようだった。


「…立てるか?」

「…ありがと」

 アルスが立ち上がり手を差し伸べると、レヴィンは礼を言いながらその手を取りゆっくりと立ち上がる。

 顔は(そむ)けられよく見えなかったが、アルスはそこで漸く彼女に仲間として受けいられたと感じた。


挿絵(By みてみん)








「…チッ、甘ちゃんが…」

「あ、待ってくれ」

「…今度はなんだよ?」

「名前を教えてもらってもいいだろうか?」


 その様子に面白くなさそうな反応をして(きびす)を返す男の背中に問うと、男は面倒(めんどう)そうに首だけ(かたむ)け答える。


「……ウォルフだ」

「ウォルフ…?もしかしてお前……」

「知ってるの…?」

「あぁ、北側諸国(きたがわしょこく)でちょっとな…」


 ()()()()───男が名乗ったその名にアルスは聞き覚えがあった……のだが、反応を示したレヴィンに説明しようとしたところ、男はその場を立ち去ろうと歩き出してしまう。

 その背中にアルスは声を掛ける。


「待ってくれウォルフ…よければ俺達と一緒に来てくれないか」


 突然の提案にレヴィンは「えぇっ!?」と驚きを見せ、対照的にウォルフは「はぁ…」と()(いき)()いていた。


「馬鹿言え、誰が…いや待てよ」


 その反応に、一瞬ダメか……と軽く落胆(らくたん)しかけたところ、ウォルフは言葉を止めて振り返りアルスの方に目を向ける。

 そしてジロジロと値踏(ねぶ)みするように観察(かんさつ)したかと思えば、ニヤリと笑って言った。


「そこの()()()はともかく、お前とは組む価値があるかもな……アルス」

「誰がお荷物よ!私は反対よ!こんな奴!!」

「落ち着けレヴィン、今の戦いぶりの通り彼は強い…味方にすれば間違いなく頼りになるはずだ」


 (すご)剣幕(けんまく)で反対するレヴィンにアルスは(さと)すように言葉を返す。

 たった今()めたばかりの相手だ……怒るのも無理はないが、今後の旅を安全に続けるなら戦力になる者の加入は必須(ひっす)

 そのように説明するとレヴィンは「…う」と言葉を詰まらせた。


「決まりだな…俺だって強い奴と組めた方が都合(つごう)が良い」

 そこでウォルフは(つぶや)くように言うと、今度は軽薄(けいはく)そうな笑みを浮かべてその手を差し出した。


「それに…その(じょう)ちゃんのことも心配だしな、俺も守ってやるよ」

「嘘よ!絶対嘘!!」

「決まりだな、よろしく頼む」

「なんでよ!!」


 利害(りがい)一致(いっち)したとして、アルスは(こころよ)くその手を取り握手(あくしゅ)()わす。

 その(となり)で怒るレヴィンを見て、しばらくこの二人の間は自分が取り持たなければ……とアルスは思った。


「…んで、お前らはどこに向かってんだ?」

「今は近隣(きんりん)の村の安否(あんぴ)の確認のため、()()()()()()に向かっている」

巡回(じゅんかい)か……それなら急いだ方が良いんじゃねぇか?」

「…どういうこと?」

「そうだな…魔獣が此処(ここ)にこんなにいるのはどう考えても異常(いじょう)だ」


 ────その後、仲間になった大男に現在の目的地を伝えると返ってきたのは(けわ)しい顔だった。

 レヴィンはその意図(いと)を読めなかったようできょとんとしていたが、アルスには(さっ)しが付いている。


 目撃情報(もくげきじょうほう)自体はあったとはいえ、大陸南部にこれだけの数の魔獣が徘徊(はいかい)していたらもっと大きな騒ぎになっていた(はず)

 恐らくこの件は国も把握(はあく)していない事態(じたい)なのだろう。

 ウォルフに同行(どうこう)(うなが)したのも()()()()()を想定しての事だった。


「先を急ぐぞ…ヴァイゼン村の人達が危ないかもしれない」

「ちょっと!どういうことか説明してよ!もう…」

「何もねぇといいがな…」


 こうしてアルス達一行(いっこう)はトーキテ王国領内(おうこくりょうない)にある村の一つ……ヴァイゼン村に向けて進み出した。



 ―――――――――――――――――――――



「お願いします…先生、どうか村の皆さんに避難(ひなん)を呼びかけてください!」

「一体どうしたんじゃ急に…」

「なんだか胸騒(むなさわ)ぎがするんです…何か恐ろしいことが起こるような…」


 トーキテ王国領の村の一つにして、孤児院(こじいん)併設(へいせつ)された教会が()つヴァイゼン村……その教会内にて、運営に(たずさ)わる司祭(しさい)困惑(こんわく)していた。


「ですからお願いします…!私の言葉ではダメでも先生なら…!」


 助祭(じょさい)にして(みずか)らの養子(ようし)でもある少女が突然(とつぜん)村人を全員避難させるよう(うった)えてきたからだ。

 普段(ふだん)は聞き分けが良く大人しい子の必死(ひっし)な様子は(しん)(せま)るものがあったが、それは到底(とうてい)無理なお願いだった。


「…無理じゃよ…この村には子供とワシのような年寄りしかおらん…あの長い道を越えて移動するなんてとても…それにこんな小さな村…どうせ国は助けてくれんよ…」


 司祭の(あきら)めたような言葉……それを聞いた少女は何を思ったのか突如(とつじょ)として背中を向けて走り出す。


「だったら…私が助けを呼びに行きます!」

「待て()()()!!お(ぬし)はダメじゃ!お主は…」


 司祭は(あわ)ててその背中に手を伸ばし呼び止めるも、言い終える前に少女の姿はなくなり……開いたドアと司祭のみがその場には残された。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
勇者と魔族ということで非常に馴染みやすい物語ですね! 挿絵もイメージがしやすく、より作品を面白くさせていました。 ご自身で描いてらっしゃるのですよね(尊敬) 今後、王道×ダークファンタジーな展開が楽し…
また一人パーティーメンバーが!✧◝(⁰▿⁰)◜✧ これまたクセの強そうなパワーファイター、もといウォルフさん、実力は折り紙付きなようなので、安心感ありますね! 初対面が初対面なだけにレヴィンさんとは分…
続々とパーティーメンバーが揃っていきますね。主人公は安定の強さですが、それに加えて頼りになるウォルフ兄さんも。レヴィンはただ恐怖が邪魔をしているだけなのか、魔法が使えないわけじゃ…ないよね?何か言いか…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ