表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Truth Of Legend  作者: 座敷猫
第二章:城塞都市クヴィスリング編
27/49

22話:紅い竜巻フラスト

〜前回までのあらすじ〜

魔族の侵攻に遭い戦火に包まれる城塞都市クヴィスリングにて始まった二体の上級魔族との本格的な戦い。

ウォルフとフィルビーが黒い魔物ザヴォートと対峙してる間、アルス達は……

"魔龍族(まりゅうぞく)"

 古来(こらい)より存在する()()類似(るいじ)する特徴を持つ魔族。

 ほぼ全ての個体が炎・風の自然魔法の扱いに()ける他、飛行能力を保有しているなど戦闘に秀でた種族である。

 そのため過去の戦争において幾度(いくど)も人類を苦しめてきた……



散開(さんかい)せよ!人間共(きゃつら)に我ら龍族(りゅうぞく)の力を思い知らせてやれ!!」


 ───城塞都市(じょうさいとし)クヴィスリングでの戦いの中、敵将の片割れである紅龍(こうりゅう)フラストの号令(ごうれい)を皮切りに周囲の魔龍達が一斉に空高く舞い上がる。


 人類の魔法の歴史において、姿勢制御(しせいせいぎょ)繊細(せんさい)な魔力操作(コントロール)を要する事から習得難易度(しゅうとくなんいど)が高いとされている風の飛行魔法……

 目の前に光景を見るに、どうやら魔龍族は背中に生えた翼を姿勢制御に用いる事によりそれを克服(こくふく)しているらしい。



『『『『ゴオオオオオォォォッ!!!』』』』


 ───感心した刹那(せつな)、そのような思考の(すき)など与えないとでも言うように上空から炎の雨が()(そそ)がれる。


「"水の奇跡(アクア・テラス)"!!」


 人海戦術(多数)による火炎魔法の嵐……通常であれば有利相性であっても押し切られてしまうだろう数の暴力を、レヴィンの水防御魔法(アクア・テラス)はアルスの期待通りに事も無げに防ぎ切った。

 ……とはいえ、このまま一方的に攻撃されていては魔力の枯渇(ジリ貧)による敗北は必至(ひっし)


「【散り行く火花(フォルスパーク)】!!」

「ええいッ!!」


 状況(じょうきょう)打破(だは)するべく、アルスはレヴィンと共に雷魔法を空に向けて撃ち放つ。


「チッ…魔力が足りないか…!」

 ───が、アルスの魔法は魔龍達が周囲に展開している風の魔力により届く前に霧散(むさん)してしまい……


「もうっ!今日調子良いからいけると思ったのに!!」

 レヴィンの魔法は明後日(あさって)の方向に飛んで行ってしまった……。

 やはり防御魔法を会得(えとく)したからといって、すぐに攻撃魔法を当てれるほど魔力操作(コントロール)が上達するわけではない。



「それだけの魔力も宝の持ち腐れか……!」

 攻撃手段のないアルス達を嘲笑(あざわら)うような紅龍(フラスト)の声……それと共に上空から放たれる火炎魔法がより一層(いっそう)その激しさを増す。



「くっ…!ウォルフがいれば……」

 ───こんな時、上空に構える敵に攻撃するのも容易(ようい)だっただろうに……。


 一向(いっこう)に止まない攻撃の嵐を前に防戦一方の中、思わず出掛かった言葉をアルスは深く()み込んだ。


 ウォルフは現在(いま)、フィルビーと共にもう一体の敵将である黒い魔物───ザヴォートと戦っている。

 上級魔族が相手である以上向こうも苦しい状況な筈……。

 そんな時に勇者(部隊の長)である自分が弱音を吐いてはいけないと、アルスは今一度奮起(ふんき)して思考を(めぐ)らせた。


 生半可(なまはんか)な魔力の魔法では、遠距離にいる上に周囲に風魔法を展開している(魔龍達)に攻撃は届かない。

 打開(だかい)するにはレヴィンの高い魔力が必要だが、現状の彼女では攻撃を命中させるのは難しい。

 それならば……


「アルス、何か言った?」

「……レヴィン、俺に考えがある…協力してほしい」

「ほんと!?何でも言って!!」


 ───考えた(すえ)辿(たど)り着いた結論を、希望を見出したように明るい表情を見せる仲間(レヴィン)にアルスは伝え始めた……



 ・・・



「……これでいい?」

「あぁ、十分だ…ありがとう」


 ……数分後、自身の剣に雷の魔力が()()されたのを感じ、アルスは礼を述べた。


 "魔力付与(まりょくふよ)"

 物質に魔力を(まと)わせる基礎的(きそてき)な魔力操作技術の一種。

 実戦においては剣や槍などの武器に炎や雷の魔力を付与して殺傷力(さっしょうりょく)を上げるために使われる事が多い。

 実際にヴァイゼン村での上級魔族(シルク)との戦いにおいても、剣に雷を付与することで戦いを優位に進められた。


『バチバチッ…』

 剣から感じる彼女の膨大(ぼうだい)な魔力……素の状態では不可能だが、アルス自身も(あつか)う事が出来る雷の魔力に変質させた今ならある程度(あやつ)ることが出来る。


「やっちゃって……アルス!!」

 仲間の鼓舞(こぶ)する声に(こた)えるべく、防御魔法(アクア・テラス)の範囲外に出たアルスは上空へとゆっくりと剣を向け…深呼吸をする。


 ───レヴィンが剣に付与した雷の魔力を、自身の雷の魔力を媒介(ばいかい)する事で代わりに魔法を発動する……それが上空から一方的に攻撃される不利状況を(くつがえ)すために出したアルスの答えだった。



「【散り行く…花火(フォル…スパーク)】!!!」

 口に出したのは先程と同じ詠唱(えいしょう)───しかしその威力(いりょく)(レベル)が違う。


「「「グオアアアアアアアアアァッッ!?」」」


 レヴィンの魔力を借りて放った一撃は、風の魔力に妨害(ぼうがい)されることなく複数の魔龍を(つらぬ)き……墜落(ついらく)させた。


『ビュオオオオオオオオオオオオ……ッッッ!!』


 ───しかし、魔龍の()れの中心に届く直前……突如(とつじょ)前面に巨大な風の防御魔法が展開され、樹枝状(じゅしじょう)に伸びた雷の軌道(きどう)()らされてしまった。


「もしやと思ったがこの様な芸当(げいとう)も出来るとは……どうやら悠長(ゆうちょう)に構えている(ひま)はないようだ」

 それを出した魔物……物憂(ものう)げな声を(はっ)する紅龍(フラスト)の姿を見て、アルスは戦慄(せんりつ)した。


 ……やられた。

 完全に不意を突いた(はず)の……雷魔法での速攻(そっこう)にも対応された。

 早く、次の手を考えなければ……


「なるべく魔力は温存(おんぞん)しておきたかったが…これ以上、仲間を死なせるつもりはない…!」

 考えている間も紅龍(フラスト)の身体から放出される魔力が(ふく)れ上がっていくのを感じる────大技が来る。



「……【大いなる嵐(グロ・シュトゥルム)】」


 身構(みがま)えた次の瞬間、周囲に巨大な竜巻(たつまき)が展開された。


「くっ…!」

 耳を(つんざ)くような(するど)咆哮(ほうこう)のような音と共に少しずつ近づいて来る暴風に対し、思わず身体に力が入る。


 巻き込まれれば一溜(ひとた)まりも無い……アルスと同様の危機感(ききかん)を覚えたのか、隣にいたレヴィンは水の防御魔法(アクア・テラス)を展開した。


「くっ……魔力が乱れる……ッ!!」


 ───しかし、展開された防御魔法は先程よりも(はる)かに小さい……どうやらこの竜巻が魔力の操作(コントロール)阻害(そがい)しているようだ。


「…【地獄の業火(インフェルノ)】」

 徐々(じょじょ)(せま)る暴風に追い詰められる中、不意に紅竜(フラスト)の詠唱が聞こえた。


「まずい!!」

「えっ!?」


 詠唱と同時に突如(とつじょ)発生した炎の魔法は竜巻の中でその勢いを()し……


「…【業火の竜巻(トロンフェルノ)】」


 ────"(あか)竜巻(たつまき)"となってアルス達を()み込んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
戦闘シーンが面白くなりましたね! どうなるか楽しみです!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ