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Truth Of Legend  作者: 座敷猫
第二章:城塞都市クヴィスリング編
20/50

16.6話:学校っていいね

番外編です。

今回はアルスとレヴィンの話です(レヴィン視点)。

※この話はトーキテ王国のクス伯爵領から城塞都市クヴィスリングに向かってる道中の話です。

「……レヴィン、一つ聞いてもいいか?」

「ん?なぁに?」


 ────待機中の馬車の中、捕縛(ほばく)した暗殺者の見張りをしている最中に勇者アルスが不意に話しかけてきた。

 フィルビーとウォルフの二人は採取(さいしゅ)に出かけており現在(いま)はいない。


「……()()ってどんな感じなんだ?」

「え?」


 何事かと耳を傾けた直後、彼の口から出てきた思い掛けない言葉に少女レヴィンは思わず目を丸くする。


 以前、お互いの身の上を少し話し会った時に自身が学校生活に良い思い出がない事は教えている。

 ……にも関わらず、それに関する話題を振ってきた理由(わけ)が気になった。


「アルスって孤児院出身なんだっけ?もしかして…学校行ったことないの?」

「あぁ……そんな余裕なかったからな」

「そっか、だから気になるんだ?」

「それもあるが、知り合いにすごく学校に興味を持ってたのがいて……その影響かな」

「ふぅん…前に一緒に旅してたって人?」

「あぁ……それでどうだ?勿論(もちろん)無理にとは言わないが」

「まぁ…アルスなら、いいよ」


 ────とはいえ、その意思に悪意が全くないことは理解(わか)っている。

 ……そんな流れで、レヴィンは赤髪の青年に自身が通っていたトーキテ魔法学校に(まつ)わる話を聞かせるのだった。



 ・・・



「───でねっ!詠唱(えいしょう)の時に声に力を入れるか入れないかで実際に魔法の威力(いりょく)が変わるんだって!原理については色んな説があるらしいんだけど……」

「そうなのか……にしてもレヴィンは物知りだな…よっぽど勉強してきたんだろうな」

「まぁね!これでも座学の成績はかなり良かったんだから!私」


 それから数十分……レヴィンは話し続けた。

 学食が無駄に豪華(ごうか)だった事、魔法を用いた競技(スポーツ)が流行っていた事、生徒同士で揉め事が起こると魔法での決闘(けっとう)行為がたまにあった事、好きな授業の内容などなど。


「……っと、ごめん!話が大分()れちゃった…かも」

「いや、いいんだ……聞いてて楽しかったよ、すごく」


 ────話の最中(さなか)、いつの間にか夢中(むちゅう)になってしまっていた自分の姿に不意に気づき、レヴィンは顔を赤らめる。


 レヴィンは魔法に関する勉強が大好きだった。

 元々は家族に認められるために頑張り始めたので辛く感じていた時期もあったが、新しい知識を身に付ける事自体は楽しかった。

 故に、実技の成績は壊滅的(かいめつてき)だったが座学の方に関しては学年でも一番(トップ)だったのだ。

 ……その事が逆に周囲の反感を買い、陰口や嫌がらせを加速させている面もあったが。



「……ところで、その学校っていうのは卒業したらどうなるんだ?」

進路(しんろ)の事?ほとんどの生徒は国に仕える魔導士になるのを望むらしいけど……魔術学者とか学んだ事を家業に活かしたりとか……まぁほんと、色々らしいわ」

「そうか、自由でいいな……俺も少しだけ行けたらよかったと思えてきたよ」

「……そっか」


 トーキテ魔法学校はその名の通り魔術に関する(あら)ゆる知識を学ぶための場所だが、実戦的な内容のみならず魔法の生活での利用や魔法の歴史……果てはスーヤ教について教える等その範囲は多岐(たき)へと渡るものがあった。


 反面、アルス達のいた孤児院は聞いた話によると教育自体はあったらしいが……その内容は戦いに必要な知識を学ぶものばかりだったようだ。


 教育の内容の違い……その差は恐らく戦時中か否かによるものだろうとレヴィンは察する。

 大陸北部は現在魔王軍との抗争(こうそう)が最も激しい地域……教育に力を入れる余裕もないのだろう。

 大陸南部には未だ魔王軍の影は見えず表向きには平和そのもの。

 ……だが、その仮初(かりそめ)の平和もいつまで続くかは分からない。



「……ま、でもアルスやフィルと一緒なら…私もまた、学校行ってみたいかもだけどね」

「……!」

「…?どうしたの?変な顔して」

「いや、似たような事をさっき言った知り合いにも言われてつい、な」

「へぇ〜……ねぇ、今度はアルスの孤児院のこともっと聞かせてよ」

「勿論だ、そうだな……」


 ────ただ、今はこの細やかな幸せを享受(きょうじゅ)しよう。


 頭の中を(よぎ)った様々な事柄───それらを一旦(すみ)に起き、仲間達が帰ってくるまでの間……少女レヴィンは自身を救ってくれた青年との会話を楽しんだ。

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