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Truth Of Legend  作者: 座敷猫
第二章:城塞都市クヴィスリング編
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16.3話:手合わせ

今回はアルスとウォルフの番外編です。

通常番外編は◯.5話表記ですが、クス伯爵領〜城塞都市クヴィスリングまでの道中がそこそこ長い期間なのもあり、もう一話分くらいは間話を挟みたいと考えているため今回の話数表記になります。

「オラァッ!!」

「ふんッ!!」


 青空の下、掛け声と共に(ひび)くは物同士がぶつかり合う音と空を切る音。

 一進一退(いっしんいったい)の攻防────その末に相手が見せた(わず)かな隙にアルスは踏み込んでいく。


「おっと!ふぅ…やるな」

「お前もな……ウォルフ」


 胸元で木の棒を寸止(すんど)めすると、感心したように呟いたのは顔に傷を負った大柄な男……ウォルフ。


 ────大陸南部のクス伯爵領(はくしゃくりょう)から大陸中央の城塞都市(じょうさいとし)クヴィスリングへ向かう道中、アルスはウォルフと共に近くにあった手頃な木の枝を使い手合わせを行っていた。


 移動には馬車を使用しているのだが、現在は近くでフィルビーとレヴィンの二人を待機させており、クス伯爵から送り込まれた暗殺者達を拘束した状態で見張ってもらっていた。

 その間にアルスとウォルフは薬草や食材の採取(さいしゅ)に周囲を散策していたのだが……その途中でウォルフが手合わせの提案をしてきたのだった。



「やっぱ強えな……正統派に見えて自由に動きが変わりやがる……何て流派(りゅうは)だ?」

「さぁな……俺にこの剣を教えてくれたカリヴァも、そこまで教えてくれなかったからな」


 手合わせが終わった後、その場に腰掛けるウォルフから聞かれた何のことはない疑問。

 ……それに対する答えをアルスは持ち合わせてはいない。


 "勇者カリヴァ"

 かつて所属していた魔王討伐隊の(おさ)であり、アルスの親友にして剣の師匠。

 彼自身もこの剣術を誰かから教わったようだが、詳しくは教えてくれなかった。


 ────そんな事を考えながら、アルスはかつて親友に聞く事が出来なかった疑問をウォルフにぶつけようと口を開く。



「そういうウォルフの方は、何か流派でもあるのか?」

「いや……基本(ベース)にしてる流派(もの)はあるが、ほぼ我流(がりゅう)だな……俺の魔法の特性上」

「だろうな……おかけで動きの予測が全然付かなかったぞ」


 ウォルフの剣技はこれまで目にしてきたどの剣士とも似つかぬものだった。


 剣筋(けんすじ)そのものは直線的だが、彼固有の力である"自身と触れたものの重力の方向(ベクトル)を自由に操る魔法"を組み合わせる事により、通常人ではなり得ない変幻自在(へんげんじざい)の動きを実現している。


 もしこの手合わせが実戦と仮定して、彼が初見の敵として相対(あいたい)していたならば自分でも危ないかもしれない────そんな思考に一瞬背筋がヒヤリとすると共に、今仲間として共に行動している彼にアルスは頼もしさを覚えた。



「全く……お前が敵じゃなくてよかったよ」

「そりゃこっちの台詞(セリフ)だぜ……たまにはよ、またこーやって汗流そうぜ」

「それもいいな……カリヴァとも、昔はよく手合わせしてもらったものだ」

「ほーん……で?お前は勝ててたのか?」

「いや、残念ながら一度も勝てたことはないよ……はは」

「お前が?マジかよ……いつか俺も手合わせ願いてえもんだな!」

「あぁ……ところでそろそろ戻るぞ……あまり遅いとフィルビー達に心配掛ける」

「やべっ、つい熱くなりすぎて忘れてたぜ……急がねえとな」


 そうしているうちに繰り広げられたのは、なんて事のない普遍的(ふへんてき)な会話。

 ────ただそれだけの事が、アルスにとってはたまらなく嬉しかった。


 かつての仲間達と離れ離れとなり後悔と孤独(こどく)(さいな)まれる日々を過ごしていた(はず)が……今は頼れる仲間と一緒に切磋琢磨(せっさたくま)し、楽しく会話出来ている。

 カリヴァとは違うが、同性故の親近感……まるで新しく友が出来たような感覚。


 そんな幸せを噛み締めつつ、アルスはウォルフと共に仲間達の待つ馬車への帰路(きろ)()いた。

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