13.5話:見張りの時間
今回は13話から14話の合間にあった本編外の話となります。
今回のように◯.5話と表記してある話はキャラ同士の絡みがメインの話となります。
読まなくても本編には差し支えありませんが、読むとキャラの背景や行動に対する理解度が上がるかもです。
より本編の世界観を楽しみたい方、又は暇潰ししたい方はどうぞ。
雷の魔導書 152ページ…
上級魔法 "神の怒り"
体内で凝縮した雷の魔力を一気に解き放ち、上空から広範囲の相手に解き放つ高等魔法
雷神の手と異なり上空からの攻撃となる性質故に、前方に防御魔法を展開されたとしても…
「おい、交代の時間だ…お前何してんだ?」
───深夜の時間、月の明かりを頼りに読書に集中していると不意に上から男の声が聞こえた。
ビクッとして上を向いて見えた顔に、レヴィンは思わず「げっ…」と声を出した。
…どうやらちょっと集中し過ぎたみたいだ。
「げっ…ってなんだおい…」
「別に…アンタには関係ないでしょ」
男の不服そうな反応にレヴィンはそっぽを向いて素っ気なく返した。
ウォルフ…レヴィンが魔王討伐隊として活動を始めた日、魔獣に襲われそうになったところを助けてくれた顔に傷を負った強面の男…
───今は行動を共にしている同じ隊の仲間だ。
"そこの女…お前、今すぐ辞めろ"
"戦いの最中ぷるぷる震えてるだけの奴は邪魔だって言ってんだよ"
"そこのお荷物はともかく…"
…が、初めて会った時に浴びせられた数々の暴言の事をレヴィンは未だに根に持っていた。
そんな彼女の敵意を知ってか知らずか、ウォルフは頭をガリガリと掻きながら呆れたように声を掛けてきた。
「けっ、お前な…暇さえありゃ何か読んでたり魔法の練習してんな…何かに打ち込むのも良いが、たまには休まねーと身体が持たねーぞ」
「だから…アンタには関係ないって言ってんでしょ」
彼にしては珍しい心配するような言葉…しかし、レヴィンは素直に受け取る事が出来なかった。
愚図…宝の持ち腐れ…ノーコン…家の恥…
家族や親戚…同級生から言われた心無い言葉に傷付けられた過去故に、レヴィンは人一倍他者に対する警戒心が強かった。
───それは共に行動する仲間に対しても例外ではない…特に自分に対して当たりが強いウォルフなら尚更だ。
そんな拒絶の意思を込めた言葉に対し、ウォルフは「関係あんだよ」と言って、ズカズカ踏み込むように言葉を続けた。
「無理して途中で倒れたりしたら…誰がお前の面倒見んだ?俺はどうでもいいがアルスやフィルビーがほっとかねーだろ…また迷惑かけるつもりか?」
…本当にムカつく。
こいつの言う事の何がムカつくって、言っている事自体は割と正しいってことだ。
態度も口も悪いのに…おかげで反論することが出来ない。
「…わかったわよ…ほんとうっさいんだから…」
そう思ったからこそ…レヴィンは渋々ながら彼の言う事に従い本を閉じた。
…といってもこれから自分が魔獣が近付かないように見張りをする番なわけだが。
そんな風に考えていると、ウォルフが「へっ…」と笑った。
「口の減らねー奴…そんなところもあのバカにそっくりだな…」
「は?誰のことよ?」
「…チッ、なんでもねぇよ」
呟くような言葉…バカという単語に思わずカチンときて食い気味に聞くと、彼は舌打ちをしてさっさと横になってしまった。
「なんなのよもう…相変わらずムカつく言い方ばかりして…!」
余りの意味わからなさに、レヴィンは内心イライラしながらも上で輝く月を見て…心を少しばかり落ち着けた。
お読み頂きありがとうございました。
番外編も一話完結ではなく、今後も話が続いていく予定です。
不定期で更新していくのでよろしくお願いします。