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Truth Of Legend  作者: 座敷猫
第二章:城塞都市クヴィスリング編
12/38

12話:人型の魔物

〜前回までのあらすじ〜(把握してる方は読み飛ばしてください)

突如として大陸に現れた魔族…その長い戦いの中で人類は窮地に立たされていた。

国は魔族の侵攻を恐れ、守りを固めると共に…危険な任務を魔王討伐隊に選ばれた者達に押し付けるようになった。

そんな過酷な世界の中…赤髪の青年アルスは戦いの中で離れ離れになったかつての仲間達を探すために勇者となった。

道中出会った魔法使いの少女レヴィン、戦士の男ウォルフ、聖職者のフィルビーの三人を仲間に加え…共に見回りに来た村を襲った魔族の群れを退けた。

その後、アルスは自身の目的を胸に秘めつつも、与えられたある任務をこなすために仲間達と共に歩み始めた…。

挿絵(By みてみん)


 "大丈夫か?"

 ───う、うん…えっと、君は…


 "俺はカリヴァ…お前は…"

 ───僕は…アルス


 "アルスか…話すのは初めてだな"

 ───そうだね…えっと、助けてくれて…ありがとう


 "こっちこそ、妹を助けてくれてありがとうな"

 ───たまたまだよ、僕なんか…


 "そうだ、お前さ…よければ俺と一緒に組まないか?"

 ───え?



 ――――――――――――――――――――――――


「…夢か」

 (ささ)やかな風とそれと共に(かお)草木(くさき)(にお)いを感じ、アルスは頭を抑えながらゆっくりと起き上がった。


「よう、起きたか」

 不意(ふい)(そば)から男の声が聞こえた。

 ボーッとしていた頭が覚醒(かくせい)するに(したが)い、段々と周囲の音と景色…そして男の姿が鮮明(せんめい)になっていった。


「ウォルフ…おはよう」

 その男はウォルフ…昨日の旅立ちの日、魔獣(まじゅう)との戦いの最中(さなか)遭遇(そうぐう)し、仲間になってくれた男だ。


「他の二人ならまだ寝てやがるぜ」

 アルスの挨拶(あいさつ)に対し、ウォルフは苦笑(くしょう)しながらチラリと視線を横に(うつ)した。

 そこには、金髪の少女レヴィンと黒髪の少女フィルビーが小さな寝息(ねいき)を立ててすやすやと寝ていた。


 そう…彼女達もまた、ウォルフと同様に昨日出会い、村を一つ(ほろぼ)した凶悪(きょうあく)魔族(まぞく)を相手に共に戦った仲間(なかま)だ。



「うぅ…ん…」

 アルス達の会話を聞こえたのか、フィルビーが目を()まし始めた。

「あぇ…もう朝…?」と(つぶや)きながら目を(こす)り、やがてアルス達に顔を向けた。


「…あ、おはようございます…アルスさん、ウォルフさん…」

「おはよう、フィルビー」

「おぅ…そこの寝坊助(ねぼすけ)はまだ寝てやがるがな」

 (すで)に日が(のぼ)り始める中…フィルビーの(となり)のレヴィンは(いま)だにすやすやと気持ちよさそうに(ねむ)っていた。


交代(こうたい)見張(みは)りなんて…彼女は初めてだろうからな…仕方ないだろう」

 アルスはそんな彼女を見ながら、事情(じじょう)()んだ発言(はつげん)をした。


 ────昨夜(さくや)、またいつ来るか分からない魔獣(まじゅう)襲来(しゅうらい)(そな)えてアルス達は交代で就寝(しゅうしん)して見張りを立てる方針(ほうしん)を取ることにした。

 元々野宿(のじゅく)などしたことないであろう貴族の()であることを考慮(こうりょ)すれば、彼女(レヴィン)はむしろよく適応(てきおう)してくれている方だろう。



「ったく…とんだ箱入(はこい)りお嬢様(じょうさま)だぜ」

「ふふっ…可愛らしい寝顔(ねがお)ですね」

 そんな事情を知ってか知らずか、ウォルフは(あき)れたようにレヴィンの顔を(のぞ)き込み、またフィルビーは彼女の(ほっぺ)を優しくつんつんしていた。


「なんか…お前ら急に距離(きょり)(ちぢ)んだな」

 そんなフィルビーを見て、ウォルフが(つぶや)くように言った。

 昨日の夜から、どういうわけかレヴィンとフィルビーはお(たが)いの名前の呼び方が変わっていた。

 ウォルフの言葉に同調(どうちょう)するようにフィルビーを見ると、彼女は「あはは…」と照れたように笑いながら言った。


「えぇっと…少しお(たが)いのお話をしまして…」

「あぁ…俺らと似たようなもんか」

 フィルビーの言葉に対するウォルフの何気ない返事に、彼女は目を(かがや)かせた。


「え?じゃあアルスさんとウォルフさんも仲良くなったんですか?」

「馬鹿言え…そんなんじゃねーよ」

 グイグイと(せま)るフィルビーにウォルフは照れ臭そうに顔を(そむ)けていた。

 すると、彼女は今度は物欲(ものほ)しげな顔をアルスに向けて言った。


「そうなんですか…よければ私もお二人の話…聞きたいです」

「…そんな面白い話じゃないぞ?」

「それでも…もっと皆さんのこと…知りたいですから」

「…そうだな、レヴィンが起きたら話すとしようか」

「はい!」

 …そんなこんなで、三人でレヴィンが起きるのを待つことになった。



 ・・・



「それにしてもアルスさんも孤児院(こじいん)育ちだったなんて…なんだか親近感(しんきんかん)を感じちゃいますね」

「あぁ…」

 レヴィンが目覚めた後、次の目的地であるクス伯爵領(はくしゃくりょう)へ向かいながら、アルス達はお互いの事を話し合った。

 昨日共に死線(しせん)を乗り越えた仲というのもあり、話し合いを通して以前より心の距離がぐっと近づいたようにアルスは感じた。



「…てか、アルスってなんでわざわざ南方(こっち)に来たの?勇者になるなら故郷(こきょう)か近くの国でも良かったんじゃない?」

「それは…」

()()()()()のせいだよ」

 …そんな時、ふとレヴィンが聞いてきた事に答えようとしたところ不意(ふい)にウォルフが会話に入ってきた。

 人型(ひとがた)魔物(まもの)────その言葉にレヴィンは動揺(どうよう)を示していた。


「な、なにそれ…?」

(くわ)しい事は分からねぇが、北方(ほっぽう)で人間に近い姿の魔物の目撃情報(もくげきじょうほう)がで上がったらしくてな…はぁ…んな(うわさ)のせいで北方と中央のどの国も入る条件(じょうけん)(きび)しくなりやがって…こんな場所(とこ)まで来ることになっちまったわけよ」

 ウォルフは溜息(ためいき)()いて話しながらも「…ま、結果的におめーらと組むことになったのは運が良かったがな」と()(くく)った。


 ただでさえ戦火(せんか)の絶えない北方…そのような状況下(じょうきょうか)でそんな(うわさ)が上がれば迂闊(うかつ)余所者(よそもの)を入国させるわけにはいかないのは当然の事だった。



「人型の魔物…ここ十数年で新種(しんしゅ)の魔族の目撃報告も増えてるらしいし…それの一種かしら…?」

 そんなウォルフの説明に対しレヴィンは口元に手を当てて考え込み、やがてアルスの方に目を向けた。


「アルスは…何か知らないの?」

「いや…ウォルフが話した事くらいしか…」

「そっか…気味(きみ)が悪いわね」

「…どの道確証(かくしょう)のない話だ…目撃情報とやらも見間違(みまちが)えかもしれないし…今は気にするな」

 浮かない顔をするレヴィンを(はげ)ますように言うと、横にいたウォルフがけたけたと笑った。


「だってよ…怖がらせて悪かったなお嬢様(じょうさま)?」

「怖がってないし!てかお嬢様とか言うな!ムカつく!」

「はぁ…とにかく、魔族の調査も魔王討伐隊(おれたち)の仕事だ…その人型の魔物についてもいずれ明らかになるだろうさ」

 ウォルフ的には(はげ)ましのつもりだったかもしれないが、このままではまた昨日のような口論(こうろん)が始まりそうだ…とアルスは話をまとめに入った。


「…それより次の目的地(クス伯爵領)まではまだ何日か掛かる…余計な口論(こうろん)であまり体力を使うなよ」

ウォルフ(こいつ)が変に(あお)ってくるからでしょ!勇者(リーダー)として注意してよ!」

「んだよ、元気付けてやろうと思ったのに」

「どこがよ!大体アンタは最初から…」

 …が、二人はその忠告(ちゅうこく)を無視し(ふたた)びギャーギャーと言い争いを始めてしまった。


「二人とも…仲がよろしいんですね」

「いや…違うと思うぞ」

 その様子を見て微笑(ほほえ)ましそうに笑うフィルビーに対し、アルスは顳顬(こめかみ)(おさ)えて(あき)れるように言った。

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