12話:人型の魔物
〜前回までのあらすじ〜(把握してる方は読み飛ばしてください)
突如として大陸に現れた魔族…その長い戦いの中で人類は窮地に立たされていた。
国は魔族の侵攻を恐れ、守りを固めると共に…危険な任務を魔王討伐隊に選ばれた者達に押し付けるようになった。
そんな過酷な世界の中…赤髪の青年アルスは戦いの中で離れ離れになったかつての仲間達を探すために勇者となった。
道中出会った魔法使いの少女レヴィン、戦士の男ウォルフ、聖職者のフィルビーの三人を仲間に加え…共に見回りに来た村を襲った魔族の群れを退けた。
その後、アルスは自身の目的を胸に秘めつつも、与えられたある任務をこなすために仲間達と共に歩み始めた…。
"大丈夫か?"
───う、うん…えっと、君は……
"俺はカリヴァ、お前は……"
───僕は……アルス
"アルスか……話すのは初めてだな"
───そうだね……えっと、助けてくれてありがとう
"こっちこそ、妹を助けてくれてありがとうな"
───たまたまだよ、僕なんか……
"そうだ、お前さ……よければ俺と一緒に組まないか?"
───え?
――――――――――――――――――――――――
「……夢か」
細やかな風とそれと共に香る草木の匂いを感じ、アルスは頭を抑えながらゆっくりと起き上がった。
「よう、起きたか」
不意に側から聞こえたのは男の声。
ボーッとしていた頭が覚醒するに従い、段々と周囲の音と景色……そして男の姿が鮮明になっていく。
「ウォルフ……おはよう」
その男はウォルフ────昨日の旅立ちの日、魔獣との戦いの最中に遭遇し、仲間になってくれた男だ。
「他の二人ならまだ寝てやがるぜ」
アルスの挨拶に対し、ウォルフは苦笑しながらチラリと視線を横に移す。
そこには、金髪の少女と黒髪の少女がそれぞれ小さな寝息を立ててスヤスヤと眠りに付いていた。
レヴィンとフィルビー……彼女達もまた、ウォルフと同様に昨日出会い、村を一つ滅した凶悪な魔族を相手に共に戦った仲間だ。
「うぅ、ん……?」
アルス達の会話を聞こえたのか、フィルビーが目を覚まし始めた。
「あぇ、もう朝……?」と呟きながら目を擦り、やがてアルス達に顔を向ける。
「……あ、おはようございます……アルスさん、ウォルフさん」
「おはよう、フィルビー」
「おぅ、そこの寝坊助はまだ寝てやがるがな」
既に日が昇り始める中……フィルビーの隣のレヴィンは未だにスヤスヤと気持ちよさそうに眠っていた。
そんな彼女を庇うように、アルスは「仕方ないさ」と肩を竦める。
「……交代で見張りなんて彼女は初めてだろうからな」
────昨夜、またいつ来るか分からない魔獣の襲来に備えてアルス達は交代で就寝して見張りを立てる方針を取ることにしたのだ。
元々野宿をした経験などないであろう貴族の出であることを考慮すれば、彼女はむしろよく適応してくれている方だろう。
「ったく、とんだ箱入りお嬢様だぜ」
「ふふっ……可愛らしい寝顔ですね」
彼女の事情を知ってか知らずか、ウォルフは呆れたようにレヴィンの顔を覗き込み、またフィルビーは彼女の頬を優しくツンツンしていた。
「なんかよぉ……お前ら急に距離が縮んだな」
そんな彼女の姿を見て、ウォルフはある事を指摘した。
昨日の夜から、どういう訳かレヴィンとフィルビーはお互いの名前の呼び方が変わっていたのだ。
彼の疑問に同調するようにフィルビーの方に視線を送ると、彼女は「あはは……」と照れたように笑いながら口を開く。
「えぇっと、少しお互いのお話をしまして……」
「あぁ、俺らと似たようなもんか」
フィルビーの説明に対するウォルフの何気ない返事────それを聞いた瞬間、彼女は目を輝かせた。
「え?じゃあアルスさんとウォルフさんも仲良くなったんですか?」
「馬鹿言え、そんなんじゃねーよ」
グイグイと迫るフィルビーに照れ臭そうに顔を背けるウォルフ。
すると、彼女は今度は物欲しげな顔をアルスに向ける。
「そうなんですか……よければ私もお二人の話、聞きたいです」
「そんな面白い話じゃないぞ?」
「それでも、もっと皆さんのこと……知りたいですから」
「そうだな……レヴィンが起きたら話すとしようか」
「はい!」
────そんなこんなで、三人でレヴィンが起きるのを待つことになったのだった。
・・・
「それにしてもアルスさんも孤児院育ちだったなんて……なんだか親近感を感じちゃいますね」
「あぁ……」
レヴィンが目覚めた後、次の目的地であるクス伯爵領へ向かいながら、アルス達はお互いの事を話し合った。
昨日共に死線を乗り越えた仲というのもあり、話し合いを通して以前より心の距離がグッと近づいたようにアルスは感じた。
「……てか、アルスってなんでわざわざ南方に来たの?勇者になるなら故郷か近くの国でも良かったんじゃない?」
「それは……」
「人型の魔物のせいだよ」
そんな時、不意にレヴィンの口から発されたのは小さな疑問。
それに答えようとしたところで突如、ウォルフが会話に割って入ってきた。
人型の魔物────その言葉に「な、なにそれ……?」とレヴィンが動揺を見せると、ウォルフは説明を続ける。
「詳しい事は分からねぇが、大陸北部で人間に近い姿の魔物の目撃情報がで上がったらしくてな……んな噂のせいで北方と中央のどの国も入る条件が厳しくなりやがって、こんな場所まで来ることになっちまったわけよ」
ただでさえ戦火の絶えない大陸北部……そのような状況下でそんな噂が上がれば迂闊に余所者を入国させるわけにはいかないのは当然の事だった。
その事に溜息を吐きながらも「……まァ、結果的にオメーらと組むことになったのは運が良かったがな」とウォルフは締め括ったのだった。
「人型の魔物……ここ十数年で新種の魔族の目撃報告も増えてるらしいし、それの一種かしら……?」
その後、聞こえたのはレヴィンの呟き声。
口元に手を当てて考え込む彼女は、やがて考えに詰まったのかアルスの方に目を向ける。
「ねぇ、アルスは……何か知らないの?」
「いや、ウォルフが話した事くらいしか……」
「そっか……気味が悪いわね」
「どの道確証のない話だ……目撃情報とやらも見間違えかもしれないし、今は気にするな」
アルスに話を振るも、対する反応に浮かない表情を見せるレヴィン。
そんな彼女を励まそうとすると、不意に横にいたウォルフとケタケタと笑った。
「だってよ、怖がらせて悪かったなお嬢様?」
「怖がってないし!てかお嬢様とか言うな!ムカつく!!」
「はぁ……とにかく魔族の調査も魔王討伐隊の仕事だ……その人型の魔物についてもいずれ明らかになるだろうさ」
その反応から突如始まる二人の口論。
彼的には励ましのつもりだったかもしれないが、このままではまた昨日のような口論が始まりそうだ……とアルスは話をまとめに入る。
「それより次の目的地まではまだ何日か掛かる……余計な口論であまり体力を使うなよ」
「ウォルフが変に煽ってくるからでしょ!勇者として注意してよ!!」
「んだよ、元気付けてやろうと思ったのに」
「どこがよ!大体アンタは最初から……」
……が、結局のところ二人は忠告を無視し再びギャーギャーと言い争いを始めてしまったのだった。
「二人とも……仲がよろしいんですね」
「いや、違うと思うぞ」
その様子を見て微笑ましそうに笑うフィルビーに対し、アルスは顳顬を抑えて呆れるように言った。
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