日焼けしたとき
ほくろ。しにぼくろ。ほくろ。しにぼくろ。ほくろ。
しにぼくろ。しにぼくろ。
空が眩しかったあの日。ぼくらは目を殺した。
「ねぇねぇ。見て。あっちゃんが数かぞえてる。」
「あぁ。あれは大変そうだ。相当な量になるぞ。」
「あっちゃん!数え終わった!?」
「まだ。」
「僕も数えてみようかな。父さんは数えた?」
黒い。まるでコッペパン。食べてしまいたい。
ぽつぽつと湧き上がるのはトッピング。
「あぁ。大昔に。」
「父さんはもう数えるのが大変そうだもんね。」
父に愛する人がいた。愛する人はぼくらに愛を植え付けて水と流れていった。愛はまた育ち、ぼくらを覆う。温かさを包みながら風と揺れる。ぼくらは愛に隠れる、
ただ、父にはコッペパンのすきま風が吹いていた。愛と隠れていた父は風に揺られ薄れていった。
ぼくらは焼かれるたび増えていく。ぼくらがぼくらを数えてもコッペパンにはぼくらだけ。僕のすべてを知りたくとも数えることはできない。ぼくらに僕と君と君と君がいる。焼かれるたび増えていく。薄れるたび死んでいく。
ぼくらを焼くのは彼らでどこにでもいて跳ね返り跳ね返り屈折してぼくらを見るんだ。ぼくらは上書き上書きして目を閉じる。おやすみ。
方程式
ぼくら:ほくろ
父:しにぼくろ
愛する人:毛
彼ら:光
目:メラニン
日焼け止め:上書き効果
コッペパン:作者のふくらはぎ