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転校から始まる支援強化魔術師の成り上がり  作者: 椿紅颯
第五章

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第44話『部屋で独り思うこと』

 本日も残りわずか。

 ここからはいつも通り1人の時間が始まる。

 まずは、本棚から本を二冊ほど引き抜き、椅子に座ってから机にノートと本を広げて各授業の振り返り。


 ここ数日の授業はかなり濃密なものばかりだった。

 授業一つ一つに対して不満があるわけではない……が、より実践に近いかたちの授業は、やはり身になるものの量が違う。

 そして、今まで以上に自分の成長を感じることができて、貴重な経験ができた数日だった。


 初めてと言っていい。ちゃんとパーティを組んで戦ったのは、本当に初めてだった。

 誰かが、誰かを蔑むことも、心ない言葉を浴びせてくる人もいない。

 たった、たったそれだけのことが、僕にとってどれだけ救われることだっただろうか。


 初めての発見もあった。

 意思疎通ができるだけで、沢山の戦術を実戦で活かすことができた。

 今までは、心の奥底にしまい込んでいたものをみんなでやる。試行錯誤する。

 あれは、本当に心が躍った。楽しかった。

 そして、しっかりとした成功を収めることができた。


――ああ、そういえばあんなこともあったっけ。


 自分でも気づいていなかったこと。

 気分が高揚している時、僕の口角は自然と上がっているらしい。

 年甲斐もなく、無邪気な子供のように感情が零れてしまっているのか……いや、逆かもしれない。今まで年相応の感情表現が許されなかった環境にいた。

 そんな環境から解放されて、自分でもどうすればいいのか、今でもわからないでいるのはたしか。


「……そろそろ、終わりにしようかな」


 考えに耽っていると、時間はあっという間に過ぎてしまう。

 本や筆記用具を順序良く整頓し、寝支度を開始。

 

――全ての片づけを終えて部屋の灯りも消し、ベッドの中に潜り込む。

 この時間は好きだ。

 この――毛布のふわふわした心地良さは、ありとあらゆる疲れや拘束からも解放してくる。

 同じ類である、お風呂も至福のひとときを感じることができるけど、どちらも共通して訪れるものがある。

 解放感、脱力感、それとは似ても似つかないもの。


 いつも――いや、以前だったら、この時間は好きであり、好きではなかった。

 暗闇の中、静まり返る部屋――瞼の裏に情景が流れるこの時間を。

 いつも自分を嘘で覆って、気にしないようにしていても、こういう心が休まる時にわざわざ鮮明に見えてくる。

 同じく、あの声たちも聞こえてくる。

 だから、この至福のひとときは、好きでもあり、嫌いでもあった。

 でも……


 ……今は、別の声も聞こえてくる。


志信しのぶって――」

志信しのぶくんって――」

「あっはは、おっもしろーい!」


 みんなの声が聞こえてくる。

 その声は明るく彩られ、暗闇に光が射しこんできているようだ。

 たった、たった数日前に出会ったばかりなのに、こんな鮮明に。

 誰の顔にも黒いもやはかかっておらず、決して悪夢のような情景ではない。


 だから今は、少しだけ以前よりこの時間が嫌ではなくなった。

 また明日――そんな、前向きな気持ちで眠ることができるようになったのかもしれない。

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