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転校から始まる支援強化魔術師の成り上がり  作者: 椿紅颯
第八章

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第57話『わだかまりは晴れていき』

「まさか、こんな組み合わせになるなんてね」


 魔車に乗り込み、一言目にそう零したのは門崎さん。


「一台の魔車に沢山乗れれば良かったんだけどね」


 と返すのは叶。


「う、うん」


 目線も体もソワソワしている一華。

 計3人で、一台の魔車に乗っている。


 ――――――――しばらくの沈黙が流れてた後、門崎さんが口を開く。


「この前の試合、あなたたちのパーティに助けられたわ。本当にありがとう」

「まあ、あんな混戦状況だったらあれが最善策だったんじゃないかな」

「私もそう思う」

「だけど、あれは美咲が咄嗟に判断してああなったから、感謝を言うなら後でだね」

「……そうね」


 叶は事務的に、淡々と話を続け、一華は、できるだけ目線を下げて目立たないように体を小さくしている。

 そしてまた、短い沈黙の時間。


 話の切り出しは再び門崎さん。


「私、2人にちゃんと謝ろうって。あの時から思ってたの」

「いいんじゃない。門崎さんは正しい判断だったと思うよ」

「……それでも。――ごめんなさい」


 着席した状況ではあるけれど、門崎さんは深々と頭を下げる。

 だけど、一華は止めに入った。


「やめてよ門崎さん!」

「いいえ、ちゃんと謝らせて」

「その謝罪は立派なものだけど、謝る気があるのなら、自分がしたことをしっかりと考えないと意味がないよ」

「叶ちゃんってば! ……門崎さん、大丈夫だよ。私は大丈夫。確かに、あの時は、いや。あの後から、意味がわかってショックだったよ」

「本当に、ごめんなさい」


 尚も顔を上げず、門崎さんは誠意を示す。


「でもね、本当に大丈夫なの。私は、門崎さんに対して怒ってはないし、許してほしいっていうなら全然許すよ」

「一華あんたね。本当に理解したの? そんな簡単に許していいはずがない。私たちには用がないから、役に立たないからパーティを抜けてくれって、そう言われたんだよ。直接的な言葉ではなかったけど、正確にはそういう意味だったんだよ」

「返す言葉もないわ」

「うん、ちゃんと理解してるよ。それに、門崎さんはその言葉を向けたのは私だけで、叶ちゃんには言ってなかったってのも」

「……」

「私を気遣って、叶ちゃんも一緒にパーティを抜けてくれた。そうだよね」

「……そこまでわかっていて、なんで許せるの」

「ある人に背中を押され、ある人の背中を見た。それでね、考え方も気持ちもいろいろと変わったんだ。門崎さんはパーティのリーダーで、自分だけじゃなくてみんなのことも考えないといけない。そして、これからもっと上を目指さないといけない。自分の気持ちだけじゃなくて、みんなの気持ちを背負って。――じゃあ、最も上に行けるにはどうするかって考えたら、私みたいなのがメンバーに居たら可能性を下げることになってしまう」

「なんだかな……なんだか、その背中には少しだけ私も見覚えがあるかもしれない、な」


 叶は大きなため息をする。

 だけどその顔は先ほどの険しさはなく、呆れた、でも納得した優しい表情を受けべていた。


「ふふっ、叶ちゃんも見たことあったんだね。――でね、あれから私は変わった。変われたんだよ。一歩踏み出して、本当に変わったんだ。だから、だよ。だから顔を上げて、門崎さん」


 その言葉に、ゆっくりと門崎さんは顔を上げた。

 そして、互いに逸らし合っていた目線が重なる。


「……本当に、本当に変わったんだね」


 門崎さんは、その真っ直ぐな目線を確認して言葉の意味を理解した。


「だからね、私も叶ちゃんも門崎さんも仲直り。……ダメ、かな?」

「まあ、私は一華がそういうなら別にいいんだけど」

「私からは反論なんてないわ」

「じゃあ、これにて今までのことは解決ってことで。そして、門崎さん」

「はい?」

「これからは敵として、よろしくね」

「――言ってくれるわね。こちらこそ、負けるつもりはないから」

「あーあー、なんだか私は蚊帳の外なきーぶーんー」


 珍しく、叶がふざける。


「叶って、そんなことも言うんだね」

「叶ちゃんがおかしくなっちゃったー!」


 3人の楽し気な笑い声が車内に響く。


「今のこの状況が全てを物語っているとも言えるけど、あの時の一華は見違える用だったというか、気迫が凄かったのを憶えているわ」

「私も同じパーティだけど、凄くビックリした。心配で、動悸が凄いことになってたけどね」

「あら? てっきり、あれは打ち合わせていたようなものかと」

「ううん、それが全然」

「ほほう、それはまた独断で大胆なことをしたのね」

「そうそう、別人かと思ったよ」


 急に意気投合し始めるものだから、一華はキョトンとしてしまう。


「私も、一華の行動を観てこう思ったんだ。誰よりも男勝りな子だなって」

「もーう、2人ともーっ!」


 ぷくーっと頬を膨らませる一華を観て、2人は揃って肩を小刻みに揺らしながら笑った。

 それは既に、壁は取っ払われたかのように。


「それにしても、そっちのパーティに居る指揮官はかなり機転が利くし思い切りも良いわね。――月森さんったかしら? 私もリーダーとして見習わなきゃって思ってるのよ」

「ん? ああ、そうだよね。でも美咲はあれで始めたてなんだよ」

「え?」

「そうなんだよ。それに美咲ちゃんは、あの時は即席指揮官だったんだよ」

「え? ど、どういうことなの……? あれ、そういえば」

「そうそう。実はね、私たちはあの段階では7人だったんだよ」

「そして、最後に駆け付けてきた人がリーダーってこと」

「なにそれ……」


 門崎さんは盛大なため息と共に肩を落す。


「正直、もう何が何だかわからないわ」

「ぶっちゃけ、私もそう思う」

「え? 叶ちゃんは同じパーティだよね?」

「でもさ、私たちは後から入った身だけど、みんな変わり始めてるよね」

「だね」

「何があなたたちをそこまで突き動かしてるの? まさか、本気で夏休みの延長を狙ってるとか? それとも、職場体験という名の新境地を目指して?」


 それを聞いて、一華と叶は目線を合わせる。


「まあ、その理由だけはわかってるよね」

「だねっ」


 にひひと笑う2人を見て、門崎さんは首を傾げた。


「その様子だと教えてくれなさそうね」

「「まあね」」

「でもね、たぶんだけど。門崎さんもいずれはどこかでわかるかもよ?」

「なにそれ、一体いつなのよ」

「遠い先かもしれないし、近い先かもしれないね」

「はぁ……少しだけ困るのは、以前の一華より断然お口が動くようになったことね」

「あ、それわかる」

「もーっ!」


 仲睦まじい、穏やかな時間がこれから少しだけ続いた。

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