後朝の温もりと新たな謎
璃珠が、ふと目覚めると、
外からの日差しで部屋の中はだいぶ明るくなっていた。
目の前には蒼劉の胸元が呼吸で規則正しく上下している。
寝入り端に抱き込まれてそのまま朝になったようだ。
人の温もりに包まれて目覚める朝に
懐かしいような切ないような感覚が沸き起こる。
無いはずの記憶の一部を呼び起こされたような気がした。
眠っている蒼劉をじっくり見る。
昨夜は少し顔色が悪かったように思うが今は良くなっていた。
薄茶色の髪が重力に従って流れている。
璃珠は蒼劉の髪がどんな手触りなのか気になって手を伸ばした。
うあ、サラサラです。柔らかくて良い手触りです。
璃珠がニコニコと髪を触っていると蒼劉の目が開いた。
目の前の璃珠を見てゆっくりと瞬きをしている。
「あ、蒼劉さま・・・」
「璃珠、何をしているんだ?」
「・・・蒼劉さまの髪を触っていました。起こしてしまってすみません」
「いや、構わない。そろそろ起きないといけない時間だろう」
そう言って蒼劉も璃珠の髪に触れ頭を撫でる。
「お疲れはマシになりましたか?」
「うん、頭がスッキリしていてとても調子が良さそうだ」
「それは、良かったです。夜伽の甲斐がありました」
「夜伽・・・あ、ああ・・・そうだな。璃珠のおかげだ」
蒼劉がふわりと微笑んだ。
コンコン
部屋の戸がノックされる。
「蒼劉様、入室してもよろしいでしょうか?」
外から櫛奈の声が聞こえる。
「ああ、起きようと思っていたところだ」
ガチャリとドアが開いて満面の笑みの櫛奈が入室して来る。
2人の顔を見て
「良い夜を過ごされたようですね」
と、更に嬉しそうに笑う。
「身なりを整えたら、食事の間で朝餉にしましょう」
そう言われて蒼劉が立ち上がる。
「では、先に行っている」
璃珠を振り返りそう言葉を残して蒼劉は退室していった。
「璃珠、こちらへどうぞ」
櫛奈が鏡台の椅子を引いて璃珠を呼ぶ。
相変わらず満面の笑みだ。
璃珠が寝台から降りてトテトテと歩き鏡台の前に行くと椅子の上に抱き上げてくれた。
鏡の前に座ると櫛奈が後ろから髪に触れる。
「この髪は昨夜は結われていたのですか?」
「あ、はい。ここに来る前に姉さまに結っていただきました」
「そうだったのね、寝る前に下ろしたの?」
「そのままでは寝にくいだろうと、蒼劉さまが解いてくださいました」
「まあまあまあ!蒼劉様が、そうだったの」
櫛奈が弱冠興奮気味のような気がしたけれど
嬉しそうだから、それでいい事にした。
軽く身なりを整えて貰い、食事の間に移動する。
部屋に入ると旺耀が出迎えてくれた。
彼も満面の笑みだ。
「おはようございます」
「おはようございます。旺耀さま」
テーブルには美味しそな朝餉が広がっている。
先に座っていた蒼劉と共にご機嫌で食事をした。
満面の笑みの2人に見守られながら・・・
「ではな、璃珠。その、また度々頼むかもしれぬ」
「はい!お役に立てるのでしたら、喜んで!」
そう言葉を交わし璃珠は後宮に戻った。
櫛奈と旺耀は始終とても嬉しそうにしていてた。
そして後宮まで先導してくれた侍従さんも満面の笑みだった。
皆がなんだか嬉しそうで、良かったなと思った。
その日、王太子の執務室で蒼劉は旺耀に指示を出した。
「旺耀、彩伽について少し調べて欲しい事が出来た」
「何でございましょう?」
「かの国に、異能を操る者がいるかどうかを」
少し意外な指示に旺耀は何度か瞬く。
「・・・璃珠に何かございましたか?」
「彼女は、癒しの力を使えるのかもしれない」
「・・・蒼劉様、それは彼女と眠って、とっっっても癒されたという、惚気ですか?」
旺耀の目にいつものからかいが混ざる。
「ちが・・・!いや、癒されたのは本当だが・・少し不自然な事が起こったのだ」
「どんな事が?」
蒼劉は自分の手を見ながら話し始める。
「書類仕事で忙しくて気付いていなかったが、後で見たら、紙で切った小さな傷が手にたくさんついていただろう?」
「ああ、そうですね。私にも少しばかりついています」
「昨夜は確かにあったそれが、今朝には跡形もないのだ」
そう言って手の平を見せる。
その手を取って旺耀が確認する。
「確かに傷のない綺麗なお手をされていますね」
「自然に治癒するにも早すぎる気がするのだ」
「それはそうですね。私にはまだ残っています」
旺耀が手の平を差し出す。
そこには薄らと細かい傷が残っていた。
「璃珠と半刻ばかし眠っただけで、調子が良くなる事から考えても、今のところ原因は彼女しか考えられない」
「また、それは・・そうだとしたら彼女の価値は跳ね上がりますよ」
「そうだな、彼女を買い取った組織を壊滅させてでも、手に入れたいと思う者がいてもおかしくはない」
「そうですね。ふむ、その線でかの国について調べてみます。璃珠の出自を知る近道になるかもしれませんね」
「頼む」
「承りました」
王太子「今日ならあの男を倒せるような気がする!」
王太子「やっぱボコボコだっわ」
将軍の壁は高い!!
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