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悪役姉さま①

蒼劉と璃珠を引き会わせた、恋のキューピットのお話です☆



ちょっと、じめじめしています(笑)

結風(ゆいふぁ)は面白くなかった。

何故ならここ数日、自分が住まう後宮がザワザワと落ち着かないからだ。

と言うのも、王太子が夜伽(よとぎ)を命じた際に使う

奥の殿(でん)に度々、明かりが灯り、女性が入った事をまるで自分に見せつけるように示すからだ。

ここは後宮なのだから、本来ならそれは当然の事だ。

皇族は妃を何人も持ち、その血を絶やさないようにする義務がある。

だから、それならば、これほどイラつく事もなかっただろう。


結風は、両親からの多大な期待を背負い、自分自身も少なからず野望を抱いて後宮入りを果たした。

実家の商家が傾きかけている時に

王城が女性を広く集めていると聞いて、その話に飛びついたのだ。


そして結風は、王太子に密かに憧れを抱いていた。

入ったばかりの頃に、宮中の大きな儀式が執り行われ、

王太子殿下を遠目に伺うことが出来た。

当時16歳の成人を迎えたばかり。

まだ少年らしさが残りながらも王太子としての貫禄を持ちあわせた堂々とした(たたず)まい。

そして美しい(かんばせ)を一目見て結風の心は震えた。

この後宮に居ればお近くに行く事も夢ではない。

複数持つだろう妻の1人になったとしても

つかの間の夜に、あの方を独り占め出来る瞬間があるのなら

どれほど幸せなのだろうと、想像し出すと止まらなくなった。

同僚の女官達は、現実的な所を装いながらも

心の中では万が一を意識はしていたようだが、

結風ほどにあからさまに態度に出ている者はいなかった。

なんと言っても将来、この国の至高の地位につかれる方、

それほど容易に近づけるとは思っていなかったが、

機会は無いかといつも注意深く周囲を伺っていた。


ただ王太子は東の後宮が立ち上がった当初から

こちらには興味を示さなかった。

誰かの所に潜んで訪れるどころか寄り付きもしない。

結風が彼を垣間見る事が出来たのは年に何回かの宮中行事の手伝いに出た時のみだった。

いや、焦っても仕方がない。

誰にも興味を示さないと言う事は、まだ誰のものにもなっていないと言う事だ。

(きさき)(きゅう)(あずか)りの令嬢達は

お茶会と称して度々(たびたび)彼をお呼びしていると言う。

何度も直接お会いして交流しているのに、進展がないのならば、殿下のお目に止まる者がいないと言う事だ。

いずれ皇后になる正妃は身分の高い者から選ばれるだろうけれど、それは政略的な関係に過ぎない。

多数の妃はしょうがないとしても嫉妬を覚えないわけではないので、この事実は結風にとって、とても気分が良かった。


1年が過ぎた時に、新しく後宮入りした見習(みならい)の教育係に着くことになった。

その子供は初めて見た時から気に入らなかった。

まず、見た目が気に入らない。

髪の色が珍しい上に、質感は柔らかく艶々(つやつや)と美しい。

目の色も珍しい上に、長いまつ毛とくっきりとした二重(ふたえ)に切れ長の大きい瞳。宝石のようにキラキラと揺れる光をたたえている。

肌も白く、絹のようにきめ細かく輝いている。

若さも手伝っているとは思うが、誰の目から見ても彼女を総評するとしたら出る言葉は「美しい」だった。

同じ年頃の見習達と並んでいても彼女だけが浮き上がって見える。

それだけでも気に入らないのに、

更に立ち居振る舞いまで洗練されていた。

礼儀が身についた者は、ただそこに立っているだけで優雅だ。

女官見習として下働きをしているのだから、貴族ではないはずだけど

幼いこの娘はどうやって育ったのか皆が疑問に思うほどに整っていた。

下手をすると貴族館の令嬢よりもきちんとしている。

結風は平民ながらも、(最近は傾きかけているが) 下働きもいる裕福な家でお嬢様と呼ばれ育った。

後宮の他の女官の事など見下していたのだが、この娘を見ると自分の平凡さが浮き彫りになって嫌になる。

そんな子が王太子の視界に入れば、珍しい色合いも相まって途端に彼の意識に入り込むだろう。

後宮で女官として出世などしたら、殿下のお側で働くことも有り得る。

正直、選ばれる者とはこう言う者なのだという自分の中の認めたくない思いが顔を出す。

結風は強い危機感を覚えた。

今の自分で璃珠(リーシュ)よりも(まさ)っている所と言えば、王太子に近い大人の年齢と言う所だ。

高貴な方とはいえ、王太子も立派な成年男子、いくら興味を引かれたと言っても(とぎ)も出来ない子供に具体的な行動を起こす事は無いだろう。

彼女がある程度育って、女性の身体つきになるまでは

まだ本当の脅威とはならないと、思っていた。


結風は璃珠に殊更厳しく接するようにしている。

教育係とされていたけれど、仕事の指示を出すだけで

具体的に何かを教える事もない。

嫌気がさして、逃げて行くことを狙っていた。

それなのに、璃珠は全く(こた)えない。

子供だけでは無く普通の女官でも怒り出すか泣き出すような仕事を与えても、寧ろ笑顔で礼を言われるのだ。

初めは馬鹿なのではないかと思った。

けれど、彼女が大人の手伝いをする時に気がついた。

予め人の動きを予測し邪魔にならないように動き

更にはこのままだと困りそうだなと思う所にはいち早く補助に向かい女官達の作業が円滑に進むのだ。

商家で育った結風は忙しく働く大人達を常に見ていた。

だから、この璃珠の動きがとても価値がある事だとわかる。

そして、それは恐らく周囲への気配りから生まれる動きだろう。

優秀で性格が良くて見た目も美しいなんて最悪だ。

早く居なくなって貰わないと・・・・


結風は、璃珠の優しい性格を、彼女を懲らしめる為に利用する事にした。

気に入ってよくつけていた髪飾りを自室の引き出しの奥にしまい、川べりで作業をしている時に落としてしまったと悲しげに話して聞かせた。

川に流れたかもしれないから探して欲しいと伝えると

これまた嬉しそうに引き受けてくれた。

1日目、びしょ濡れで帰って来た璃珠から見つからなかった旨の報告を受けて、叱りつける。

2日目も同様だ。

3日目は、帰って来なかった。

何らかの事故や怪我で動けなくなっているのならいい気味だ。

遅れて戻ってきたら、門限を破ったとして厳しく罰すればいい。

問題行動をする子供として、後宮に相応しくないと女官長に

訴えるのもいいかもしれない。

胸のすく思いで夕餉を美味しく食べていた時に

女官の1人から声があがった。


「奥の殿に明かりが灯っている!!」

良い気分から途端に落とされた。

ああ、とうとう妃宮の候補から夜伽に選ばれる者が出たのか。

面白くない。面白くないけどしょうがない。

後宮が開かれてから1年、その目的から考えると遅すぎるぐらいだ。

側近や、もしかしたら皇帝陛下に()かされて致し方なくお(めし)になったのかもしれない。

少し気分は落ちたけれど、冷静に食事を続けて部屋に戻った。

その後、念の為点呼を取ると言い出した無謀な女官が数人で各部屋を回り出した。

案の定女官は全員部屋にいた。

今この女官棟にいないのは璃珠だけだ。

まだ川で有りもしない髪飾りを探しているか、

動けなくなっているか、下手をして死んでいるのかもしれない。

そう想像して、密かにほくそ笑んだ。

まだ盛り上がっている女官について食堂に行くと、そこにはほとんどの者が出てきていた。

そこに舞い込む新しい事実。


「妃宮から、女官に欠員がないかの確認の通達が来ました!」

ふーん、と言う事は妃宮でも、それに仕える貴族館の者でもないのね。

・・・・・。

え・・・・?

・・・・・・!!

その事実に気がついて血の気が引いて行く。

今、この後宮で奥の殿に入っている可能性があるのは璃珠だけだ。

この事に気付く前は彼女が戻って来ない事で上がっていた気分は

これまた彼女が戻って来ない事で一気に絶望まで落ちた。


冗談じゃないわ!

そんなの許せない!!

あの子が王太子の目に触れてしまうなんて!

ましてや今、奥の殿であの方の近くにいるかもしれないなんて!


でも、どうしてこんな事に?

・・・私が川に探し物をするように言いつけたからっ?!!


そう、小さな川で区切られた向こうの土地は

王太子が住まう東宮の庭だった・・・・

結風姉さまは、自意識過剰な陰険根暗陰キャなお人です。

姉さま方の中でも平凡でいつも周囲から見て埋もれております。

でも、2人を出会わせてくれて、ありがとう☆


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