第三十三話 パーティー2
駅のロータリーに着くと、神楽小路は乗ってきた車を見送り、駿河の元へ歩いて行った。
「駿河総一郎よ、暑い中待たせたな」
「いえ、今来たところです。駅からも近いので、本来ならマンションの前まで車で来ていただいてと言いたいところなのですが、かなり道が細いので……。案内しますね」
駿河の言う通り、車ではさすがに通れない細い道を歩くこと、五分もかからないうちに到着した。手で日差しを避けながら建物を見上げる。三階建て、全十五部屋の小さなマンションだった。
「お二人は桂さんの部屋で料理作ってくれてます。食べるのは僕の部屋でとのことなので」
階段を上り、突きあたり手前、二〇二号室に入る。ワンルームの部屋は小さいながらもきれいに掃除と整理整頓がされており、充分くつろぐこともできる。博物館に来たかのように部屋を見てまわる。部屋にある本棚で足を止める。
「やっぱり人の家に行くと本棚は見てしまいますよね」
「そういうものなのか」
「本が好きだとつい。あ、気になる本あればお貸ししますので言ってくださいね」
「すまないな」
すると、インターフォンが鳴る。駿河がドアを開くと、ラップをかけた大きな皿やタッパーを持った桂と佐野が入ってきた。
「お、ちゃんと神楽小路も来てんな。じゃあ、さっそく食べるか」
駿河宅のこたつ机には大皿が二皿、タッパーが四つ並ぶ。
「大皿はワタシ作で、タッパーのは真綾作だ」
「朝から咲ちゃんの家のキッチン借りて作らせてもらったよ」
大皿には揚げたてで熱を持つからあげと、山盛りに盛られた回鍋肉。タッパーにはキャベツとハムがしんなり混ざっているコースローサラダ、豚肉に巻かれたアスパラガスとにんじん、筑前煮、そしてたまごやき。
「で、駿河と神楽小路は用意してきたか?」
「ちゃんとご飯炊いて、おにぎりにしておきましたよ。持ってきますね」
「言われた通り、飲み物。こういうのでいいんだろう」
持ってきていた紙袋から瓶に入ったオレンジジュースとぶどうジュースが出てきた。二本とも果汁100%と書かれ、その証のように果物のイラストが描かれている。
紙皿と割りばしを配る桂、おにぎりを盛った皿を持って戻ってきた駿河が動きを止めた。
「めちゃくちゃ高級そうなの出してきやがった」
「桂さん、正直、僕もこの瓶の形状やラベルを見て高級品だろうということは感じますが、口に出すと恥をかくだけです」
そんなお高いジュースを、佐野は「美味しそうだね。オレンジジュースでいいかな?」とにこやかに開けて、紙コップに注いでいく。
「じゃあ、みんな飲み物は持ったな? はい、乾杯!」
紙コップを掲げ、一斉に飲む。
「……めちゃくちゃうまいな」
「オレンジの方は果肉入ってるんだね」
「神楽小路くん、ありがとうございます。間違いなく、生きてきた中で一番おいしいジュースです」
毎日、水のごとく飲んでいるものがここまで喜ばれるとは思わなかった神楽小路は首をかしげた。




