表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【1】胃の中の君彦【完結】  作者: ホズミロザスケ
困惑
25/48

第二十五話 困惑1

 夏休みは目の前に来ていた。世間は浮かれ始めているが、神楽小路と佐野の二人は教室で真剣な面持ちで一枚の紙を見ていた。

「うむ、誤字脱字もない」

「ごめんね。家のパソコンが調子悪くてこんなぎりぎりになって」

「間に合っているのだから、なんの問題もない」

「『マスコミの世界』の課題もこれで最後になるね」

「そうだな、長かった」

「そう? 短かったけどなぁ」

「俺の人生の中で一番長い二か月だった」

 自分たちの前のグループが戻ってきたのを確認し、二人は立ち上がった。

 一歩一歩教授の待つ教室に近づくたび、この授業の終わりをカウントダウンしているようだった。新聞を提出すると教授は嬉しそうに読んだ。

「よく書き終えたね、ご苦労様。一回目に比べてどんどん良くなっていったね。終わるのがもったいないくらいだ」

「ありがとうございます」と佐野が代表して頭を下げる。

「そういえば、男女のペアは君たちだけだったけど、何かきっかけでもあったの」

「神楽小路くんと一緒に記事書いたら面白いだろうなって思って声をかけました」

「佐野さんの目論見通り、良い化学反応が起きてたね。神楽小路さんもいろんな発見あったんじゃないかな」

「そうですね。いろいろと学ぶことがあり、良い時間だったと思います」

 ふと横にいる佐野に顔を向ける。視線が合うと、まさかこちらを見ると思わなかったのか、一瞬びっくりしたように目を大きく見開く。次の瞬間には、つぼみが花開くように笑った。

「二人ともこの経験を生かして他の授業も頑張って」

「はい」と返事をした二人の声が揃った。


「無事に提出完了出来たね~」

「そうだな」

 授業終了後、一食の発券機の前で神楽小路が立ち止まる。

「佐野真綾、今日は何にするんだ」

 課題は終わったのだから、メニューを佐野に訊かなくてもよい、そもそも一緒に食べなくてもよいということに気づくまで数秒かかった。神楽小路はわざと咳払いをしてから、

「俺は山菜そばにする。お前はお前で……」

「あ! 今日からわたしお弁当持ってきてたんだった。先に席取って待ってるから」

 と、先にテーブルの方へと走っていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ