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どんなに想っても叶わない恋だから

作者: 鷺森薫

 

「アメリアは本当に可愛らしい」

 言われたアメリアは嬉しそうに微笑む。


 そうですね。

 アメリアは自分の利益になる相手には限りなく可愛らしい振りをするので。


「話す事も天真爛漫だ」

 アメリアはそんな〜と照れる。


 そうですね。

 言い換えれば我儘放題と言う事でしょうか。


「小難しい事は言わないしね」

 アメリアは小難しいって?と首を傾げる。


 言わないのではなく、言えないので。

 お頭がちょっとあれですからね。



 ジュードはいつもわたしの異母妹のアメリアを褒めまくる。

 確かにアメリアはふわふわのストロベリーブロンドに薄い青色の瞳と愛らしい顔で、一見妖精の様に見える。

 よく見れば意地悪い目をしているし、気に入られたい人物にはとことん可愛く擦り寄るけど、どうでもいいわたしなんかにはそれは酷い態度ですけど。


 いつまでもアメリアへの褒め言葉が続くのでわたしは正直うんざりしている。

 どうにかしてこの拷問から抜け出さなければ。




 ジュードはリチャードソン侯爵家次男だ。わたしの祖父グレイ伯爵とリチャードソン侯爵は領地が隣り合う旧知の間柄であったため、わたしたちは所謂幼馴染みたいな間柄だ。


 ジュードは煌めく金の髪と空色の目をした甘いルックスだ。


 小さい頃初めて会った時には

『何だこの天使』

 と真面目に思った。

 ジュードが6歳、わたしが5歳の時だ。


 正直なところ、わたしはその時ジュードに恋をした。

 一目惚れだった。

 見た目だけで好きになった。

 初恋だった。

 いつかこの想いがジュードに届く日が来ると信じて疑わなかった幼いわたし。

 甘かった。

 仲が良かったのは2歳下の異母妹が間に入って来るまでだった。


「わたし、ジュードがだいすき」

 この決まり文句でジュードは呆気なく落ちた。

 わたしが言いたくても言えなかった一言。

 それからはジュードとアメリアはふたりの世界に入り、わたしはその場の風景と化した。


 それでもわたしはずっとジュードを諦めきれなかった。

 初恋だから?

 いえ、多分アメリアが介入してこなかった頃の優しいジュードを忘れられないから。

 バカなわたし。

 ジュードの気持ちはとっくにアメリアに移っていると言うのに。


 だからもう、こうやって心にもない事を考えて自分を偽るのはやめにしなくては。



 ある日のジュードの来訪前にアメリアとその母が言った。

「もういい加減、わたしたちの邪魔はやめてくれないかしら。ジュードはあなたなんかに会いたくないの」

「本当に邪魔者なんだから。今日からは遠慮しなさいな」


 本性丸出しのアメリアと、お母さまが生きていた時から父の愛人だった女。

 お母さまが亡くなると愛人とその娘を邸がやって来てわたしを領地に追いやった。

 いやむしろ、おじいさまがわたしを心配して引き取ってくださったのだ。


 おじいさまは一人娘であった母の生前から愛人を囲っていた父に怒っていたし、生まれも育ちも性根も悪い愛人には怒りを通り越して呆れていた。

 わたしにも害を及ぼす事を危惧して領地に呼んでくれたのだ。


 ただ父の再三の懇願で、年に一度ひと月ほどは王都の邸で暮らす事になった。

 わたしが5歳の時だ。


 懇願してまで呼んだ割には父はわたしにあまり干渉しては来なかった。

 偶に遠目でわたしを見ていた事は知っていたけど。

 おそらくアメリアたちの事でわたしに負い目があるのか、若しくは…。

 いや、そこまで悪く考えるのはやめよう。


 負い目であるべきのアメリアたちはあからさまにわたしを邪魔者扱いしたけれど。

 流石に父や周りの目があるので、露骨な差別は出来なかったらしく、専ら嫌味をぐちぐちと言われるくらいではあったが。


 王都ではあまり幸せとは言えない環境に置かれたわたしだったが、ジュードとジュードのお兄さまに会う時は幸せだった。


 ジュードのお兄さまはジュードより5歳年上で、どうやらわたしの様子を見に来てくれていたようだ。

 わたしより6歳年上の侯爵家嫡男は大人びて見えて、寡黙なためちょっと怖かったけれど、週に一回は訪ねてくれてわたしに近況を尋ねおじいさまに報告してくれていたのだ。


 初めて王都の邸に来た時もリチャードソン侯爵家の兄弟が同行してくれた。

 今思えば、騒がしい幼児2人に同行し世話してくれたお兄さまはやはり大した方だった。




 そのお兄さま、サミュエル・リチャードソン卿がわたしをじっと見ていた。

 ジュードより更に深い空色の瞳で。


 いけない。

 わたしがこの拷問から逃げ出したいと思っている事に気付かれたかしら?

 お兄さまは鋭い方だから。


「ソフィア、わたしと庭を歩かないか?」


 どうやらまたお兄さまには見透かされていたようだ。


「そうだ。行ってこいよ!」

「そうよ!そうよ!」


 わたしとお兄さまを邪魔者と思っているジュードとアメリアは揃って声を上げる。


 わたしはお兄さまに頷き、手を取られて庭へと歩き出す。

 小さな四阿までの小道は先ほどの通り雨で少し濡れていた。

「足元に気をつけて」

「はい」


 お兄さまとの時間は穏やかで心が休まる。

 四阿に着くとわたしたちは造り付けの椅子に腰掛け、話をする。

 幼い頃からずっとのお決まりのコースだ。


 いつもはおじいさまの近況やお兄さまの領地の事、王都での出来事などをとりとめもなく話していたが、今日のお兄さまはいつもと違っていた。


「ソフィア、貴女に尋ねたい事があるのだが」

「何でしょう?」

「貴女がジュードに好意を抱いていたのはわかっているが、今のあいつはあの通りあの娘に夢中のようだ」


 小さい頃は年の差もあり、ちょっぴり怖かったお兄さまだったけれど、大人になるにつれ全く違って見えるようになった。


 ジュードより整った美神のような姿。

 背はすらりと高く細身に見えるが、実は逞しい。

 英明で次期宰相と噂されるほどの切れ者。

 令嬢たちはお兄さまの婚約者になりたくて、あの手この手で迫って来るらしい。


 お兄さまなら性格も非の打ち所がないし、周りから騒がれて当然だけれど、いまだに婚約者をお決めにならない。

 もう22歳だというのに。


「ソフィア?」

「すみません、お兄さま。

 すっかり別の事を考えておりましたわ。

 …ジュードの事ですよね。

 確かに小さい頃は好意を持っておりましたけど、ここ数年を鑑みて今では正直煩わしいくらいです。

 あら、失礼な言い回しでしたわね」


 お兄さまが不快に思われたのでは、と見上げると何故か微笑んでいた。


「お兄さま?」

「それならやっと貴女に伝える事が出来る」

 何かおじいさまから伝言でもあったのかしら?


「ソフィア・グレイ伯爵令嬢。

 どうかわたしの妻になっていただきたい」


 突然の求婚に驚き思わず口をポカンと開けてしまった。


「突然の事なので驚いただろうが、わたしの気持ちは初めて会った時から変わっていない。考えてみてくれるだろうか」

「お兄さま、いえ、サミュエルさま。

 ですが、貴方は侯爵家の跡取りです。

 そしてわたしは伯爵家の跡取り。

 お互いが想いあっていても結ばれる事はないのです」


 そう、ジュードの軽薄な姿を見てあっという間に目が覚めたわたしはサミュエルさまがどれほど素晴らしい方かよくわかるようになり慕うようになった。

 でも互いに跡取りというふたりに未来は無い。

 だからずっと自分に嘘をついてきた。

 わたしはジュードを好きなのだと。


 わたしの頬を一筋涙が流れた。


 サミュエルさまはそっと人差し指で涙を掬いわたしを抱きしめた。

「大丈夫だ。

 おじいさまとわたしで全て収めた。

 心配せずに一緒になろう」


 サミュエルさまが言うには、もともとおじいさまはジュードがお気に召さなかったらしい。

 侯爵家の次男で入婿には丁度良いが、軽薄で中身が無いので早々に私の夫リストからは外されたらしい。

 軽薄な入婿は父だけで十分だと言って。


 そしてサミュエルさまはおじいさまにある提案をした。

 サミュエルさまとわたしが結婚して必ず跡取りを2人以上儲けるので、わたしと結婚させて欲しいと。

 おじいさまは若くして子を儲けたのでまだまだお若いから、ひ孫の顔を見るまで現役で頑張って欲しいと。


 万が一、ひ孫が間に合わなかった場合は伯爵家はソフィアが継ぎ女伯爵になる。

 サミュエルさまは侯爵家を継承するので、隣り合う領地の境界にある街を大きくして何は互いの領都として遷都する準備をしていた事。


 もちろん、大貴族同士の合併にも近い話なので、取りようによっては謀反と思われる可能性もあるので既に両家揃って数年前に陛下にお伺いも立て承諾された由。


 どうやらいつも英明なサミュエルさまが必死にわたしへの想いを語り懇願されたのが、陛下の御心に届いたらしい。


「サミュエルさま。

 あまりにも準備万端過ぎます。

 でも、これで本当に一緒になれるのですね」

「可愛いソフィア。

 なるべく早く結婚しよう。

 何しろ、早急に少なくとも2人の跡取りが必要だからね」

「!」

 恥ずかしくて顔から火が出そう。


 幸せいっぱいのわたしたちは手を繋ぎ、先程の応接室へ戻ると、何やら着衣を乱し絡み合うジュードとアメリアが居た。


「な、何をこんなに早く帰って来るんだよ」

「これでわかったでしょ!

 ジュードはわたしの(もの)なの!

 さっさと諦めなさい!

 伯爵位もお父様からわたしに譲って貰うから

 あんたは何処かへ行ってよね。

 目障りだから!」

「俺はアメリアと一緒にこの伯爵家を盛り立ててやるから、お前は安心して出て行け!」


 勘違い野郎たちが何やら喚いていて、空いた口が塞がらない。

 サミュエルさまが呆れたようにジュードを見てため息を吐く。


 応接室の騒ぎに気付いたのか、父とアメリアの母親が駆けつけてきて、絡み合うジュードとアメリアに唖然としている。


 直ぐに気を取り直したアメリアの母親は高笑いを始めた。

「ジュードとアメリアがこうなったからには

 結婚させるしかないでしょ!

 だから当然伯爵位も何はアメリアに譲って貰えるわよね?あ・な・た」


 勘違い野郎がまたひとり。

 嘆かわしい。


 流石に自分の立場をわかっている父は青くなっている。

 この人はアメリアたちに何と言っていたのだろう。

 嘘を言った訳では無いが、恐らく誤解を解く事はせずにいたのだろうか?


 サミュエルさまは毅然とジュードに向かって告げた。

「ジュード、お前が何を勘違いしているかは知らないが、伯爵家は正当な直系のソフィアが継ぐ。そのアメリアと結婚しても爵位はおろか邸も金も無いぞ」

「アメリアだってグレイ卿の娘で直系だ。

 何の問題も無いだろう!」

「その人は伯爵令嬢の入婿に過ぎない。

 ましてやアメリアの母親はその愛人だぞ」

「入婿?

 嘘だ!グレイ卿は伯爵家の血筋だ!

 嘘言うな!」

「実家は伯爵家だが三男で婿としてグレイ伯爵家に入っていた」


 父の事が過去形になっている。


「残念ながらグレイ伯爵は以前からこの愛人騒動にいたく御立腹でね。

 あなたは追放との事ですので、この邸から早急に退去してください。

 もちろん、グレイ伯爵家とは縁もゆかりもない愛人とその娘は今すぐつまみ出せ!」


 サミュエルさまが使用人たちに命令すると、あっという間にアメリアとその母親は邸の外に摘み出された。


「そもそもソフィアの近況確認として来訪しているのに、呼んでもいないあの娘が毎回しゃしゃり出てきて、挙句の果てにソフィアを邪魔者扱いだ。何度首を絞めてやろうと思ったか!」

 サミュエルさま、怖いです。

 でもわたしのために怒ってくださってすごく嬉しい。


「あなたもおひとりになるのでしたら、小さな家を用意するそうです。

 何と言ってもソフィアの父親ではあるのですから」

 父は虚ろな瞳で被りを振り、荷物をまとめて出て行った。

 最後のプライドだろうか。

 虚しさで心がいっぱいになる。


 乱れた着衣で茫然とするジュードは突然雷に打たれたように飛び起きて喚き出した。


「ソフィア!許してくれ。

 アメリアに誘惑されたんだ。

 俺は本当はお前が好きだった!

 お前だって俺の事が好きだっただろう?

 わかってるよ。

 だから、俺と一緒になって伯爵家を盛り立てて行こう!

 いいな?」


 何がいいな?なのでしょう。

 先程アメリアと一緒になって云々と言ってましたよね?

 どの口が言う!


「確かにわたしはあなたの事が好きでした」

「そうだろう!わかってたよ」

「でも好きだったのはお会いした日だけです。明くる日にはアメリアに目尻を下げていらしたのでいっぺんで嫌いになりましたので」


 サミュエルさまは苦笑いしている。

 やはりあっという間に幻滅した事に気づいていたようだ。


「ソフィアはわたしと結婚する。

 だからお前の出る幕は無い」

 サミュエルさまが冷たく言い放つ。


「えっ?

 じゃあ、やっぱり伯爵位は空席だろう?

 だから俺が」

「父上がお前を領地の鉱山送りにすると言っていた。真面目に肉体労働をして心を入れ替えなければ、一切何も与えず追放するそうだ」

「嘘だ!嘘だ!

 助けてくれよ、兄さん!」

「自業自得だ。

 お前がソフィアに出て行けと言った事は許せない。反省するなら大人しく鉱山で働き矜持を見せてみろ」


 ジュードは泣き崩れているが、サミュエルさまはまた使用人に摘み出すよう指示した。


 誰も居なくなると、サミュエルさまは笑ってわたしを抱きしめた。

「やっと邪魔者が居なくなった。

 折角、ソフィアが名前で呼んでくれるようになったのにふたりきりになれなくて少しイライラしてしまったよ」

「わたしがわざとお兄さまとお呼びしていたのをご存知でしたのね」

「わかったいたよ。

 お兄さまと呼んでわたしとの間に線を引いた。お兄さまと呼ばれるたびにどんなに苦しかった事か」

「ごめんなさい。

 貴方はわたしの夫になる方のお兄さまだと自分に言い聞かせていたのです」

「もう二度とお兄さまとは呼んでくれるな」


 わたしはにっこり笑いサミュエルさまの唇にそっと口付けた。




 サミュエルさまとわたしは翌日婚約し、2週間後には結婚した。

 サミュエルさまが、早く跡取りが必要だからね、と急がれたからだ。


 おじいさまはそんなサミュエルさまに、ずっとソフィアと一緒になる為頑張って来たからね、と目を細める。


 おじいさまはお母さまの事をずっと後悔していたと仰った。

 お母さまには想いあっていた方がいたそうだが、身分差があり無理矢理引き裂いて、伯爵家三男の父と結婚させたそうだ。

 でもお母さまは病で亡くなるまでその人を想い続けたらしい。


 初めて聞いた。

 でも何となく合点がいく。


 父はそれでもお母さまを愛していたらしい。

 でも届かぬ想いに絶望し、あの愛人に走った。


 それがわかっていたから、おじいさまは強く出られなかったようだ。

 父も可哀想な人だったのかもしれない。

 母そっくりのわたしに会いたくて、年に一度ひと月だけの同居を取り付けたが、結局何も出来ず遠目で見るだけで。


「おじいさま。

 お父さまを許して頂けませんか?

 お母さまを愛していたのは間違いないのですから」

 そしていつも辛そうにわたしを見ていた。

 恐らく今でも愛しているのだ。


「お前ならそう言うと思っていた。

 あの男は実家の領地の片隅でひっそりと暮らしているらしい。

 迎えに行ってあげなさい」


 わたしとサミュエルさまはお父さまを迎えに行く準備をしたが、それは叶わなくなった。

 わたしの懐妊が判明したからだ。

 結婚してまだ2ヶ月だと言うのに。

 これもサミュエルさまがあまりにお励みになるから、コホン。


 こうなると、おじいさまもサミュエルさまも負担の掛かる馬車の旅なぞ許してくれる訳がない。


 結局、おじいさまが迎えに行って下さる事に

 なった。

 上手くいかなかったふたりで話が纏まるのか心配して待っていたが、お父さまはあっさりこの遷都予定の街に来てくれた。

 これからはわたしたちと一緒に暮らす事も決まった。


 後から聞いたところによると、おじいさまには殺し文句があったようだ。


「ソフィアの娘を見たくないか?

 お前が愛したあの娘の孫だ。

 どれだけ可愛い事か」


 お父さまはこの言葉でノックダウンされたようだ。


 お父さまが戻られて間も無く、気になる話をしてくれた。

 あの愛人とアメリアの事だ。


 お母さまに振り向いて貰えず、酒場で酔い潰れたお父さまは気がつくとあの女のベッドに裸で横たわっていたそうだ。


 そして2ヶ月すると、その女は腹に子がいる。責任を取れと言って来たらしい。

 お父さまを伯爵家の人間と知っていたのだ。

 記憶のないお父さまは困り果てたが、幾ばくかの生活費を援助した。


 そして月足らずでアメリアが生まれ、お母さまが亡くなると、あの女はお父さまの許可も得ずに王都の邸に押しかけたらしい。


 お父さまが言うには、あの酒場での醜態以来、一度たりともその女に手を出した事は無いそうだ。

 お母さまを深く愛していたお父さまには他の人とどうにかなるとかは考えられなかったようだ。

 お母さまを亡くしてからは生きる希望も無くただ流されて生きていたと言う。


「やはりそうですか。

 あのアメリアはお父さんにもソフィアにも似たところが全く無いから、おかしいと思ってました」

「月足らずなぞ、体よく騙されたに決まっておる」


 おじいさまとサミュエルさまが調べてみると、やはりアメリアの父親はその当時あの女が一緒に暮らしていたならず者に間違いないと判明した。

 何せ容姿がそっくりだったのだ。


 あのアメリアと半分でも血縁だと思うと気分が悪かったので嬉しかった。

 やがて風の噂であの女とアメリアは数々の悪事を働き憲兵に捕縛されたと聞いたけれど、今や何の憂いも感じなかった。


 因みにジュードは鉱山送りになり、更生中とか。真人間に戻れるといいけど。



 月が満ちわたしは期待に応え跡取りを産んだ。

 それもいっぺんに2人。

 一卵性双生児の男の子たちだ。

 サミュエルさまにそっくりで何は世の令嬢たちを騒がせる美神と化すだろう。


 やっと役目を果たしホッとしていたわたしにサミュエルさまは、またまた仰った。


「跡取りは産んでくれたけれど、お父さん待望のお母さんの美貌を受け継いだ女の子も儲けないとね」


 サミュエルさまは満面の笑みだ。

 わたしの寝不足はまだまだ続きそう。



 fine







お読みいただきありがとうございました。

皆さまに好評でしたら、一卵性双生児の男の子たちのお話も書いてみたいと思っています。

よろしくお願いいたします。

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