蜥蜴
遥か太古の地球、その大地を支配した生物達は皆、巨躯を揺らしてその生を歩んだ。
しかし、その特徴とも言える体躯は、今では過去のその姿すら連想が困難と言える程に縮小した形状で残された子孫が矮躯として揺らしている。
かつて、影を作っていた彼らは現在、影に生きていたのだ。
これを目にした人々はなにを思うだろうか、少なくともある人物はこう考えた。
これは『過去、絶滅を迎えた者たちが遺した我々へのメッセージ』なのではないかと。
栄華を極めた者たちが自らの剛力を捨て去り、その身を変えたことに意味を求めたのだ。
それは、進化や退化の話ではない。
力を持った故に世界の理を踏み外した者たちが、自ら力を手放したことにより得た新世界での繫栄を、現在の我々に映して考えたのだ。
そして、彼は、人類の向かおうとしている破滅の未来を改変しようと考えた。
その方法は、現在の技術を失うことによって…というものだった。
だが、その叡智を簡単に手放そうとする者は多くはなかった。
この思想に対して、まさにその叡智を以って抗い、栄華の存続、更なる繫栄を見出した者たちが居たのだ。
現状に満足しているどころか、不満さえ持ち、未だ進化を続けようとする者が大半を占めるこの人類は、後者に靡くものが圧倒的であった。
たとえ、それが間違いだと心のどこかで理解していたとしても、それが正しいのだと思わなければ、彼らはその鼓動を続けられなかったのだ。
ニンゲンは、その生命を止めようとしない限り他の全てを犠牲にしなければ生きてはいけないのだろうか。
狂いだした天地を見つめながら、誰もが抗戦し、誰もが悲観した。