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#5 ユニブルサル戦記 描き歌姫の章

「よし……これでどうだ!」


 史人は、ユニブルサル戦記をまずは第一部分だけ書き上げた。


『魔法字陣の描き歌姫〜役立たずと大国名門貴族家を追放された少女は、生えた前世の知識を元に描き歌を理解し下剋上を小国から始める〜』


 ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□


「違う違う! 何度言ったら分かるんだサラ! お前はいつもそうだな!」

「は、はい、すみませんお父様……」


 この世界の大陸諸国内でも指折りの大国・フラッテの名門貴族家。


 そこの生まれである私は、父からこの世界の魔法たる魔法字陣の描き歌について学んでいたけど。


 我らは円環を描く


 世界の黄昏 空を血のごとく赤く染める

 顔をも赤く染める 怒りの色だ


 染まった空に鳥一羽


 やがて空の夕日は地平線に沈み


 空には蝙蝠一匹


 されど怒り収まらず

 腕を振るい


 武器を取ったら攻撃魔法発動!


 ……何、これ?

 これは、この世界で使われている魔法字陣の描き歌らしいけど。


 ……さーっぱり、分からないわ!


「まったく……お前という奴は!」

「ひいっ! す、すみません!」


 あー怖い怖い……

 まったく、また怒鳴られちゃった……


 ◆◇


「ハックション! ……え?? えええ!?」


 その翌日。

 私は目を覚まして、驚いた!


 何と。

 私は少量の荷物と一緒に屋敷の寝室じゃなく、どことも知れない原っぱの上に寝ていたの!


「さあ……着いたぞ、インカリア王国に!」

「むむ……カータル王国の奴らか!」

「!? え……? な、何あれは……お、お城に騎馬隊が!?」


 と、そこへ。

 タイミング悪くというべきか。


 この私がいる原っぱ――ユニブルサルの西側諸国のうち、インカリアとカータルの国境では。


 今、決戦の火蓋が切って落とされようとした。


「……全軍、描き歌の詠唱用意!」

「はい!!」


 カータル王国側は、描き歌を詠唱し始める。


 我らは円環を描く


 世界の黄昏 空を血のごとく赤く染める

 顔をも赤く染める 怒りの色だ


 染まった空に鳥一羽


 やがて空の夕日は地平線に沈み


 空には蝙蝠一匹


 されど怒り収まらず

 腕を振るい


 武器を取ったら攻撃魔法発動!


「……やっぱり、分からないわね……」


 私はそこで、素早く物陰に隠れて。

 インカリア側の描き歌を聞いたけど、やっぱり分からないままだった。


 ……そう、この時までは。


「……ん!?」


 魔法字陣の描き歌


 攻め側


 我らは円環を描く

()


 世界の黄昏 空を血のごとく赤く染める

 顔をも赤く染める 怒りの色だ

(#)


 染まった空に鳥一羽

  ( #`)


 やがて空の夕日は地平線に沈み

  ( #`Д)


 空には蝙蝠一匹

( #`Д´)


 されど怒り収まらず

 腕を振るい


  ( #`Д´) _


 武器を取ったら攻撃魔法発動!


( #`Д´) _P


「ぐああ!」

「し、将軍! 敵が」

「くっ……狼狽えるな! 何としてもこの城を守り抜け!」


 守り側


 我らは円環を描く

()


 世界の黄昏?

 いや貴様らのみの黄昏だ


 貴様らに滅ぼされる我らではない

 見ろ空の色を


 貴様らの黄昏を表す赤だ

(#)


 そこへ烏が一羽飛び

( ´#)


 更に、今度こそ夕日が沈まんとする

(Д ´#)


 それを見送らんと、烏がもう一羽

(`Д ´#)


 盾携え、我らは防御魔法を発動する!


(ー(`Д ´#)


 生意気な我らが攻撃魔法の前にひれ伏せ


( #`Д´) _P(ー(`Д ´#)


 ふん、それしきか

 口ほどにもない


 我ら、盾を


(ー(`Д ´#)


 槍に持ち替えて


<ー(`Д ´#)


 攻撃魔法に転ず!


( #`Д´) _P<ー(`Д ´#)


 くう、生意気な

 今に見ていろ我らが……ぐああ!


 P\( #`Д´) \<<ー(`Д ´#)


 ははは、思い知ったか


 \(ToT)/<ー(`Д ´#)


 orz(′yy`)


「……え? い、今のって……?」


 私は、頭に浮かぶ変な光景に呆けていたけど。


「ん……!? そ、そうだわ……今思い出した。私は……別の世界からこの世界に!」


 そして、そんな時だけど。


 私、サラは思い出したわ。

 そう、この世界とは別の世界から生まれ変わって来たということも!


 ……とはいえ、前世がどんなだったかそこまではっきりとは思い出してはいないわ。


 あくまで、自分が転生者ということに気づいただけよ。


「この戦いは……私が終わらせないと!」


 でも、

 私は。


 気づいたら。


 ドラゴンの頭四文字と共に滾る炎


 Drag〜


 口を開け、それを吐く者が


 Drag〜>


 それは、目を見開き

 こちらに狙いを定めている。


 Drag〜>゜


 身の毛もよだつような、恐ろしき目だ


 Drag〜>゜彡


 そこの頭の根本には、もたげられた鎌首が見え


 Drag〜>゜彡 o


 更にその胴には足も見える


 Drag〜>゜彡 on


 更に、尾も蠢かせ


 Drag〜>゜彡 on〜


 ドラゴンの、お出ましだ!


「!? な、何だこいつは!?」

「く、あっちへ行け!」


 私がそうして描き歌で呼んだドラゴンは、今城壁に迫っているインカリア軍に襲いかかるけど。


「やっぱり、一匹じゃ無理ね……なら!」


 足りぬ足りぬ、一匹では!

 さあもっと来いドラゴンたち。


 Drag〜>゜彡 on〜


 Drag〜>゜彡 on〜


 Drag〜>゜彡 on〜


 Drag〜>゜彡 on〜


 さあお出ましだ、ドラゴンたちの!


「く!? も、もっとたくさんのドラゴンたちが!?」

「ぐう……ぎゃあああ!」


 私はまたも無意識のうちに、描き歌を歌い。

 それによってより大量のドラゴンたちが、召喚された!


「くっ、み、皆描き歌を詠唱せ」

「だ、駄目です! 間に合いません!」

「くっ……て、撤退い! 撤退!」


 インカリア軍は、それによって。

 あっという間に、撤退していくわ!


「う、嘘……わ、私が戦いを止めたの!?」


 私は……その様子にまた暫く呆けたけど。

 すぐ、確信したわ。


 この力があれば、見返せるって。

 そう、私を捨てた実家を!


 ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□


「どうだい香美ちゃん!」

「うん、そうね……まあ、流れはいいと思うけど。まずタイトルが長すぎるし。父親って基本娘を大切にするものだと思うわ。だからこんな役立たずってだけで娘を捨てる父親がいるかしら?」


 嬉々とする史人に、香美はそう尋ねる。


「ああ、タイトルは最近の小説は割とこういう長いのが流行りだからいいさ。娘を捨てるってのは……まあ、この父親はサラの他にもたくさんの娘がいるからな。それも母親違いの。だから、娘を捨てられるのさ。」

「ふうん……まあ、いいわ。なら、後の展開でそう書いておくべきね。」

「オッケー!」


 史人はそれを聞くや、また執筆に戻る。


「(そうよ……そうやって、どんどん物語を終わらせて!)」


 香美はそれを見て、またも満足げである。


 ◆◇


『エドワルド外伝』


 ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□


「何? インカリア軍が謎の魔法により敗走だと?」

「は、はい! 確かな情報ですエドワルド閣下!」


 その頃。

 私エドワルドは、フラッテの城の一室での部下からの報告に驚いていた。


「まあいい……そのぐらい強力ならば、私と敵対するにふさわしいだろう!」


 私は、そうほくそ笑む。


 ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□


「ふふ……ユニブルサル戦記が大きく動き出したな、これはいい!」


 しかし、その頃。


 そんなペンデルトン家の外で、何故かユニブルサル戦記の内容を把握しており勝手に外伝をタイプライターで執筆する者は。


 新興宗教たる、魔導真実教の教主・垣原標(かきはらしるべ)だった――

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