表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

冬の思い出

作者: 天江 蜜柑

冷えきった身体をコタツで暖めながら、窓の外の様子を見る。

先ほどまでは粉雪だったが、今では雪がしんしんと降っている。

「うわー、もう少し遅かったら大変だった」

「お疲れさま~疲れた身体には甘いものをどうぞ」

出てきたのはかき氷だった。

「冬にコタツでかき氷とは、しかも金時かー。最高だね」

ふと、台に置かれたかき氷を見て、幼い日のことを思い出した。


子供のころ、家族でスキーに行ったときのこと。興奮していた僕はあちこちに動き回って、家族とはぐれて遭難してしまった。

どちらの方角から来たのかも分からず、途方に暮れていたところ、突然目の前に浴衣姿の女性が立っていた。女性は僕の手を取り歩きだした。知らない人にはついていってはいけないと言われていたが、何故かこの人は大丈夫な気がした。

数分後、僕たちは小屋に入った。中央には囲炉裏があり、近づくととても暖かかった。

そこで女性は僕のことを心配したのか、かき氷を出してくれた。宇治金時でとても甘くて美味しかったことを覚えている。

しかし、そのあとは眠くなり意識がおちて、気がついたらスキー場の施設のなかにいた。

後に聞いた話だと、スキー場からそう遠く離れていないところにある休憩所に寝ていたとのことである。

みんな、自力でそこまで戻ったと言った。

しかし、僕は実際に救われたと思っている。

なぜなら、意識を失う直前に『このことは誰にも言ってはいけない』と念押しされた記憶があるからだ。


「おーい、どうしたの?上の空だぞー」

妻の声に我に帰る。

「あ、あぁ、昔のことを思い出していたんだ」

「どんな話?」

「ん?」

浴衣姿の妻を見る。

「いや、僕はいい奥さんをもって幸せだと思っただけだよ」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ