第4話 ボクとカノジョの日常生活 前編
*** ***
ふう、楽しかった。
僕はファルとのデートを終え、RS・オンラインからログアウトした。VRメガネを外すと、何の変哲もない男子高校生の部屋。(そっち系のアイテムは一応押し入れの中。ま、まあ、たまには非ヲタの友達も来るし……いやホントだって!)
この瞬間は、やっぱりさみしい。明日も学校だから、早く寝ないとって思うんだけど、健康な男子高校生が、先ほどまで女の子と触れ合っていたのに、そのまま寝れるわけはないのだ。僕はベッドの下から、R-18な、おかずセットを取り出す。いわゆる、”薄い本”ってやつ。
……う~ん、我ながら見事にエルフキャラばかりだよな……あーでも正直、ファルの方がカワイイ……
ファルと付き合いだしてから、大好きなはずのエルフの薄い本を見ても、興奮より先に罪悪感が勝ってしまうのだ。二次元よりかわいいとか、正直、ずるい。
結局僕は、薄い本での生理行為をあきらめ、スマホの大事フォルダに保存した、ファルのカワイイ写真と、ASMR (催眠音声)な彼女の音声で、ナントカしました。
今日の所要時間、1分30秒。我ながら、これはいけない……
*** ***
ふわあああ~、楽しかった~
わたしはユウトとのデートを終え、RS・オンラインからログアウトした。感覚再現魔法を解くと、何の変哲もない女子錬金術師の部屋。(ワイバーンの頭とかアビスワームの幼虫とか、錬金術に必要なグロイ系のアイテムは、一応押し入れの中。ま、まあ、たまにはフツーの友達も来るし……ホントよ! みんな女の子だけど。くすん)
この瞬間は、やっぱりさみしい。明日も錬金術師の仕事があるから、早く寝ないとって思うんだけど、健康な女子ハイエルフが、先ほどまで男の子と触れ合っていたのに、そのまま寝れるわけはないのです。
わたしはベッドの下から、最近ルキア村にも入荷しだした、二ホンの女性向け雑誌を取り出す。かっこいいモデルさんがたくさん載っているのだ。
……う~ん、確かにかっこいいんだけど……正直、ユウトの方がいいな……ぽやん、とした優しそうなところも、たまにえっちなことを考えて、こっそり興奮してるカワイイところも。なにより、この人たちはわたしの耳を素敵と言って、舐めてはくれないのだ!
結局わたしは、雑誌をベッドの下にしまうと、シーツをかぶり、アルカディアの大事フォルダに保存した、ユウトの少し興奮した横顔の写真で、ナントカしました。
今日の所要時間、2分30秒。ナニがって? 女の子にそんなこと聞いちゃダメ! えっち!
*** ***
ピヨピヨピヨピヨ……
……ゆさゆさ……
キイロマジックバードの優しい鳴き声が朝を知らせてくれる。わたしがもう一度夢の世界に戻ろうとすると、ゴライアスちゃんが前足でわたしを揺らして、起こしてくれる。
「ふああ~~、もう朝かぁ。 結局昨日は一度じゃ満足できなくて、三回も……ふにゅー……はっ!?」
なにか、とんでもないことを口走ってしまった気がして、わたしは飛び起きた。
(……ふるふる)
わかってる、何も聞いてないよ、と大人の対応をしてくれるゴライアスちゃん。ふう、誰にも聞かれてないよね?
……あ、ゴライアスちゃんは女の子です。わたし、そこまで寂しい女じゃないよ!
ちょっとシミてるシーツをベッドから外し、洗濯桶に放り込むと、洗濯魔法をかける。女子の身だしなみとして、沐浴をした後、わたしとゴライアスちゃんの朝ごはんを作る。ハイエルフは成人すると一人暮らしをするしきたりなので、この家にはわたし一人で住んでるの。両親は現在、ヴァイナー公国でお仕事ちゅう。
戸締りをして、仕事場にむかう。とはいっても小さな村だから、わたしの仕事場って、武器屋 兼 道具屋 兼 魔導素材工房 兼 雑貨屋なんだけどね……「ルキア村随一のメガストア!」ってのぼりが立っているけど、そもそも1軒しかお店がないので、随一も何もないよね。
後は宿屋が1軒と、食堂が2軒だけ。人口およそ500人のルキア村、ここがわたしの生まれ故郷です。のんびりするには、良いとこなんだけどね。
「おっはよ~ファル、今日もかわいいじゃん」
がばっ
「きゃっ、もうリリアン、いきなり抱きついてこないでよ~」
お店に向かう道すがら、後ろから抱きついてきたのは、わたしと同い年の友人、リリアン・ソーフィー。
わたしより少し背が高く、紫色の髪をサイドテールにしている。少し浅黒い、みずみずしい肌は、むにむにすると、気持ちいい。なにより、わたしより二回りは大きなバスト! むっちむちの太もも、大きなお尻からは、しっぽまで生えている。妖艶な流し目に、ぷっくりとした分厚い唇。女のわたしから見ても、正直、とてもえっち。超えっち。神がかってえっち。
わたしもバストにはそこそこ自信があるんだけど、この娘と並ぶと霞んじゃう。ずるい。
彼女はハイエルフとサキュバスのハーフ。ハイエルフである彼女のお父さんが、彼女のお母さんであるサキュバスにねっとりじっくりと捕食 (はい、別の意味です)されちゃったのが馴れ初めらしい。なにそれえっちすぎる。
ということでそっち方面では彼女に全く敵わないわたしですが! このド田舎のルキア村では、彼女のエッチさを活用する場面はほとんど来ないのでした。まる。
わたしが悲しく自己完結していると、リリアンがふんふんとわたしの臭いを嗅いできた。
「ファル~? 昨日シタでしょ? しかも三回……いやー、えっちな友人をもって、ウチ、幸せだわ」
「ふえええええ!? そういうこと言わないで~!」
そうなのです。彼女はサキュバス。念入りに体を洗っても、えっちなにおいは彼女にすぐばれてしまうのでした。
「昨日のおかずは何~? やっぱりカレシさん? いやー、妬けるねー♪」
「うーうー! ちが……わないけどおかずとか言わないで―!」
じゃれ合うわたしたちを、ハンナおばさんがほほえましいわ~という顔で見ています。 もう、恥ずかしい……
「あはは、ごめんごめん。 ファルは一途でかわいいな~。 でもそのカレシさん、やっぱりこっちには来れないんじゃん? それはサミシイよね~」
リリアンはそういうと、わたしの頭を優しくなでてくれます。そうなんです。彼女とこの話をするたびに、こちらと二ホンの、何よりも遠い距離を思って、ため息が出ちゃうな~。
「……あ、そうだ、そんなサミシイ友人に、ウチがとっておきの人形を作ってあげよう。カーズ・パペットって知ってるでしょ?」
「ふえ?」
そう、彼女の本業はサキュバスでなく、魔導人形師。魔力で動く人形を作り、雑用や単純作業をさせるのが本来の役割なんだけど……
「……って、カーズ・パペット!? それって呪いの人形だよね!?」
カーズ・パペット。人形に相手の「毛」を練り込むことで、相手に呪いをかけ、意のままに操る強力なマジックアイテム。その強力な効果から、むやみに作るのは禁止されているんだけれど……
「わたしがいくらユウトに、色々してもらいたいと思っていても、無理やりはダメだよ~、犯罪だよ~」
彼女のあんまりな提案に、思わず怒るわたし。わたしとユウトは純愛なんだから、そういうのはダメ!
「まってまって、早合点しちゃだめ。確かに使うのはカーズ・パペットの術式なんだけど、「毛」は練り込まないよ。お互いの魔導像……最近は写真っていうんだっけ? そこから魔導情報だけを読み取って、練り込むことで……なんと、相手と感覚だけ共有できるパペットを作成することに成功したんだよね。さすがウチ、天才じゃん!」
え、それって、もしユウトがわたしの人形の大事なところを触ると、もしかして……ふわあああぁぁ!?
その可能性に思い当ってしまったわたし。一気に頬が熱くなる。
「そういう事♪ せっかくだから、彼氏へのプレゼントにしなよ」
ふわわ……ユウトへのプレゼントが一つ増えちゃいそうです。