表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/5

第3話 ボクとカノジョの異世界デート(オンラインだけど……)

 

 RS・オンラインのロゴが表示され、データの読み取りが行われる。

 フレンドの情報が表示され、彼女、ファルがログインしていることがわかる。

 さすが、ファル、時間通り。 些細なことでもうれしい。


 ***  ***


 RS・オンラインのロゴが表示され、データの読み取りが行われる。

 フレンドの情報が表示され、彼、ユウトがログインしていることがわかる。

 さすが、ユウト。 時間に正確なところ、だいすき。


 ***  ***


「ファル!」

「ユウト!」


 だきっ


 お互いのホーム画面 (ゲームの入り口となる画面。このゲームでは、「マイルーム」と呼ばれる)が表示され、2人の3Dモデルが操作できるようになった瞬間、僕たちは抱き合っていた。およそ15時間ぶりの再会とはいえ、ああ、嬉しいなあ。早くスマホで触感や、香りを感じられるようにならないかな。


「マイルーム」は、フレンド同士で、共通のホーム画面として登録することができる。本当にひとつの部屋になっていて、登録したフレンドしか入ることができない。家具などを購入してカスタマイズすることもできる。僕たちのマイルームは板作りの床で、かわいい形をしたテーブルと椅子、ベッド、観葉植物に、紅茶セットが飾られたファンシーな戸棚が置かれている。


 マイルームカスタムに必要な魔法石はなかなかに多いので、ようやく先週アイテムを買い揃えたところだ。それまではデフォルトのフィールドをマイルームにしていたから、なかなかいちゃいちゃできず(コモンフィールドは周りから見えるのだ)に、もんもんとしていたなー。ここは完全はプライベート空間なので、いちゃいちゃできるぞー! 楽しみだ。


 ……おっと、思わず興奮していた。ちゃんとファルの姿を見ないとね。


 彼女はいつものドレス姿。

 ふと、左の前髪に、新しい髪飾りが付いていることに気づく。かわいらしい、レッサーパンダ?の形をした青い髪飾り。彼女の金髪に映えて、きれいだ。


「あっえっと、その髪飾り、新しいの? すごくファルに似合っているよ。かわいいね」

 よし、順調だと思う。女の子に会ったときは、最初にまず褒めろ。僕はネットで調べた「脱・童貞! 高校生男子はここを押さえろ講座」の一文を思い出す。最初にどもってしまったのは、仕方ないだろ、まだ慣れていないんだって。


「えへへ、これはね。 こないだのアップデートで追加されたのを買ったんだ。わたしが飼ってるペットのゴライアスちゃんに似てるの~。現実世界でも同じのを作って、いま、わたしもつけてるんだよ」

 ファルは嬉しそうにはにかむと、たった今撮ったのであろう、一枚の写真を見せてくれる。


 そこには、ファルに抱かれる一匹のもこもこした動物(こちらの世界のレッサーパンダに似ているが、もう少し丸く、毛並みの先が青く光っている。異世界動物! というゴージャスな感じがする)と、満面の笑みを浮かべるファルが写っている。


 おい、ゴライアスちゃんとやら、そこをかわってくれよ……っておお、ゴライアスちゃんの前足が、ファルのおっきな胸にかかっている。それによって少し服がはだけ、胸の谷間が見え……


 こほん、今は発情している場合じゃないので、僕はその写真を大事なものフォルダに保存すると、ファルに向き合った。


「ゴライアスちゃん、もこもこでかわいいね! 現実のファルも、髪飾りよく似合ってる。こういうの作れるんだ。魔導士ってすごいね!」

 女の子の気持ちに同意して、彼女の特徴を褒める。よし、完璧だ!

 マニュアル人間って言わないで。理系男子はこうやって、理論に忠実にしか物事を進められないの!


「えへへ~、ゴライアスちゃん、抱っこして寝ると暖かくて気持ちいいの。 髪飾りはね、わたしもいちおう錬金術師だから、里の裏山から取れる翡翠石から作ったの。 あ、あのあの、こんどユウトに似合う髪飾りを考えて、シロネコトマトで送るね!」

「ほんと!? やったああ! ありがとうファル! お返しも考えるから! ほんとだよ!」

「うん!」


 おおお! ファルからのプレゼント! 女の子からプレゼントもらうの、幼稚園のときに里奈ちゃんから泥団子もらって以来かもだ! ああ、神様ありがとうございます。

 とりあえず僕は近所にある神社の神様に感謝しておいた。


 シロネコトマトは言わずと知れた、日本最大の運送会社だ。先日シルヴェスターランドとの貨物サービスを開始した。通関と輸送に2週間程度の時間がかかるそうだけど、彼女の手作りアイテムをもらえるなんて! これはもう僕、リア充陽キャと言ってもいいのでは?

 僕は童貞らしく、すっかり舞い上がっていた。


 ***  ***


 ふおおお! ユウトにプレゼントを渡せたぞー! お返しも、もらえそうだぞー!

 わたしは心の中でガッツポーズを繰り返しながら、ゴライアスちゃんをぎゅっと抱きしめる。

 少しきついのか、ぺしぺしと前足を動かして、抗議してくるゴライアスちゃん。あ、ごめんね、思わず興奮してた。


 ふう、とわたしは深呼吸する。


 男の子に会ったときは、さりげなくいつもと違う自分を見せましょう。相手が気づいてくれたら、あなたの魅力をアピールしましょう。写真を使ってもいいかもしれません。あくまでかわいく、でも少しえっちなところを見せて。そうすればもう、彼はあなたの虜です。


 先月の帝国ノンノン(10代女子向けのファッション雑誌だ)「脱・地味子! 鈍感男子必殺攻略講座」の一文を思い出す。え、一息でしゃべりすぎって、仕方ないでしょ、まだ慣れていないの!


 でも、胸元をはだけるの、少しどきどきした。こんなんで良かったのかなあ、ねえゴライアスちゃん。

 わたしは、協力してくれた賢いゴライアスちゃんの鼻先をなでる。きゅいきゅいと答えてくれるのがかわいい。


 えへへ、男の子からのプレゼントかあ……105歳のときに、旅人の息子さんから余ったポーションもらって以来かもだ! ああ、神様ありがとうございます。(それはプレゼントなの?っていうツッコミはなしで!)

 彼氏からプレゼントをもらえるなんて! これはもうわたし、リア充陽キャ (最近ニホンではやっている言葉みたい)と言ってもいいのでは?

 わたしは処女らしく、すっかり舞い上がっていた。


 ***  ***


「じゃあ、今日はいつもどおり狩りをして……タウンフィールドで新しいミニゲームが追加されたみたいだから、そこに行こうよ」

「うん!」

 ユウトが今日のプランを提案してくれる。ユウトはいつも引っ込み思案なわたしを引っ張ってくれる。だいすき。


「じゃあ、出発しよう」

 あ、その前に……


「……んっ」

 ぺろっ……


 わたしはいつものように、ユウトに顔を近づけると、そのかわいい耳をひと舐めした。


 ユウトは少しびっくりしてたけど、すくに笑顔になってわたしの耳をぺろり、とひと舐めしてくれる。

 えへへ、気持ちいいな。


 これがわたしたちの「だいすき」の挨拶。


 え、えっちじゃないもん!


 さあ、今日の冒険が始まります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ