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家族と友人

「うーん……」

俺は目が覚めて木の天井を見上げる。

俺は……そうか、女神に言われた通りに転生したのか……。だが、ここはどこだ?家である事は理解しているけど……。

(……俺の名前はモルガン・レイン。男。七歳)

俺は自分の名前と性別と年齢を頭の中で反芻しながらベッドから立ち上がる。

モルガンとしての俺は……まあ、この時期の少年としては普通の性格をしている。活発で好奇心旺盛。同世代の中では頭は少し悪いけどそこまで問題視するほどではない。

……本当に普通の人間に生まれ変われたのか。

「……あれ?」

瞳から何かが流れるのを感じてそれを拭う。

これは……涙か?もう何年も涙を流した覚えがないが……俺は嬉しい。だって、こんなに簡単に普通の生活が手に入ったのだから。

「モルガン、朝ごはんだよ!」

「分かってる!」

下から聞こえた幼い少女の声に答えて服を着替えて部屋を出て下の階に向かう。

この服は麻か。前世の世界の合成繊維と比べるとやはりゴワゴワとしているな。まあ、少しすれば馴れるだろうけど。

(……アルビノは変わらず、か)

着替えている時に見えたのだが、俺の髪は前世と同じくアルビノだった。前世ではそれが原因で周りから浮いていたが……大丈夫か。この世界だと逆に黒髪の方が珍しいし。

「もー、遅い!」

「ははは、別に構わないさ」

「そうね、それでこそモルガンだもの」

緑色の髪をした少し歳上の少女が膨れ面をし、黄色い髪をした男が快活そうに笑い、少女と同じく緑色の髪をした妙齢の女性が頬に手を当てながら微笑む。

少女はエイワス・レイン。俺より三歳年上で真面目で勉強熱心な人物だ。男はリンクス・モルガン。兵士として働いておりその快活な性格をしていて職場でも部下から慕われている。女性はガブリエウ・レイン。内職でバックを作っており、おっとりとして穏やか性格をしているが怒らせるとかなり怖い。

母親が蒸発し親父が過労死、伯父一家は事故死したからこんなに普通の人間の間に生まれれたのはとても良いことだ。

「早く食べなさい。早く食べないと魔導院に遅れるわよ」

「うん、分かった!」

ガブリエウに言われたとおりテーブルに置かれた硬い黒パンと野菜のスープを急いで胃の中に入れる。

……味が薄い。それに量も少ない。まあ、この世界の一般家庭ならこれくらいか。満足がいくまで食べれるなんて貴族しかない。

この国では王族、貴族、僧侶、平民と身分が分かれていて少数の人間が大多数の平民を支配している、封建的な社会体制をしている。そのため、身分差も大きい。

「ごちそうさまでした」

「あら、何のおまじない?」

「……何でもない」

俺が手を合わせて挨拶をしているとガブリエウが首をかしげながらこっちを見てくる。

この世界には『ご馳走さま』がないのか。となると、その対になる『頂きます』もないのか。無自覚に言ってしまうからそう言った細かいところも注意していかないとな。


「ふわぁ……」

俺は講義を聞きながら大きなあくびをする。

ここは魔導院と呼ばれる学校である。科目は大体同じで、習っている者の多くが平民である。

そして、この魔導院の最大の特徴は魔法と呼ばれる技術を教えられる事になる。

魔法とは、魔力を用いて行う技術の総称で基本的に触媒に魔力を通して術式を生み出して発動したり、魔導具と呼ばれる術式が刻まれた道具を使うことが多い。

だが、魔法は魔力と言う膨大なエネルギーを使うため危険性が極めて高い。だから魔力の少ない幼い頃から危険性と利便性を徹底的に教えていかないといけない。

「それでは、魔法の属性についておさらいしようかの」

濃い髭をはやしたいかにも魔導師ですと言う老人が黒い棒で黒板をこずくと黒板に光の文字が浮かび上がる。

魔法を無作為に広まるのは危険なため、魔導師協会と呼ばれる組織が魔法教育や研究を担っている。

魔導師協会の会員にはそれぞれ『魔導師』『魔法師』『魔法師見習い』と言う位が作られ俺たちは『魔法師見習い』である。

魔法を教えれるのは魔導師のみ。魔導師と言うのは数万人は加入している魔導師協会の中で数百人しかおらず、それぞれが極めて高い魔法を扱う事ができる。あの老人も高ランクの魔法を使えるらしい。

「前提として、魔法には五つの種類がある。

一つ目が自然系。これは火・水・風・土・光・闇を操り自然のエネルギーを使用する魔法で、これが一般的な魔法じゃろう。

二つ目が占い系。星や木の枝等を使用して食物の出来や将来の予想、高レベルの魔法なら災害の予測もできるかのう。私の専門はこれじゃな。

三つ目は精霊系。この世界に存在する魔力が極めて高い種族である精霊と契約することで様々な力を行使する。凄まじい力を使える反面、条件が与えられる。私の精霊の場合は『一日に三回魔力の1/3を与える』と言うものじゃ。精霊によってここら辺は変動するがのう。

四つ目は製薬系。これはポーションや解呪薬等の薬を作り出すものじゃ。制作者の腕によって変動する上僅かなミスでも失敗する、繊細な技術が必要となるのう。

そして最後、変革系。既存の法則をねじ曲げて発動するため、他の魔法と比べて極めて危険かつ複雑なものとなっておる。私もこれについては深くは分からないからの」

再び老人が黒板を棒でこずくと黒板の文字が消える。

魔法の種類は五つ。ここら辺は記憶から読み取れるたが……やはり、こう言った講義を聞いていた方が理解が深まる。

「それでは、今日は実践を行う。私が渡す木の棒を持って中庭に出るのじゃ」

老人が棒を持っている右手の手首を三回回すと緑色の風が棚に置いてあった木の棒を持ち上げて各々の机に置いていく。

魔法の基点となる触媒なのだろうが……確か、普通の木の棒はそこまで魔力の通しが良くないから触媒としては不適合だった筈だ。

「ふ~む……」

「よっ!モルガン」

「モルガン君、授業の内容ついてこれた?」

木の棒を持って中庭まで歩きながら手を顎に当てて考えていると右側の頬に一筋の傷がある赤髪の少年と眼鏡を掛けた青髪の少女が話しかけてくる。

こいつらは……確か男の方がレグルス・アマリリス。女の方がシェーレ・エルミア。(モルガン)の友人でどちらの両親も同じ工房で働いている。

「うーん……よく分からない」

「まあ、魔法は感覚で覚えろって親父が言ってたし理論なんて分からねぇよな」

「もう、二人とも……」

俺が頭をかしげ、レグルスが笑い、シェーレが呆れながらツッコミをいれていれながら中庭に行くのだった。


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