No.8 能力・知能
今回と次回はちょっとした説明会です
魔熊を倒した後、一度宿屋の一角を借り能力の確認をすることにした。こんな風にレベルアップしたときに能力が増えるのはテンプレだからな。
早く見たいという衝動を抑えつつ、晩飯だけ屋台で買って自分の部屋に駆け込んだ。窓を開くとそこには
[新しい能力を獲得しました]
と通知の欄に書かれていた。俺は思わず握り拳を作り、すぐに能力の効果を見た。能力の名前は〈疑似人格実体化〉らしい。すぐさま詳細を読み理解する。簡潔に表すとこうだ。
まず、この能力を説明するには前提から話さないといけない。俺のスキルの中に〈歌唱魔法〉というものが有ったのを覚えているだろうか。正直、俺は忘れかけてた。
これは15章の魔法が纏めてあり、それぞれの章を冠する術がある。そして章ごとにいくつもの技がある。言うなれば、系統樹のような感じだ。
ここで大切なのはそれぞれの章が1つの術を冠していることだ。その1章分のデータを基に人格を作り、完全に独立させ、俺の魔力で実体化させる。
勿論、俺の魔力で体を作っているので体が消えても人格自体は消えないし、俺の中に戻るだけだ。また、実体化させた体は吸収できる。
この実体化させた体は食事は関係なく、極端に言えば一生飲まず食わずで生活可能らしい。
注意するべき点もいくつかある。まず、疑似人格を実体化させるためにはそれが冠する術を俺が使えなければならない。そして、実体化している間はその人格が冠する術を俺が使えなくなり、その人格が使えるようになる。
利点は、人格は個々の意思を持っているため自分で考えて行動する。人格を実体化させても俺のステータスは減少しない点だ。
なお、実体化させた体のステータスは俺の1/5となる。そして、その人格が冠する術のみ俺のステータスと同じ威力になるようだ。
概要はこんな感じだと思う。早速使ってみるか。
今、俺が使える歌唱魔法は 1章.治癒術 2章.聖魔術 3章.強化術 4章.弱化術 の4つだ。
使用方法は簡単で〈疑似人格実体化〉スキルを維持しながら魔力を使用するだけだ。後はスキルが自動で体を作ってくれるようだ。
じゃあ、やってみよう。俺はスキルを使用した。すると、いきなり魔力が半分くらい抜けるのを感じた。
どうやら、幾つか行程が有るらしく、今のは体を造るのに絶対に必要な分の魔力を抜き取ったようだ。ここから、それぞれの個性を出すために魔力が幾らか要るらしいが今の俺なら十分足りるらしい。
最初に体を造る際は1分ほどかかるらしい。次からは姿形のデータがあるので一瞬のようだ。
1分ほど待つと本当に人格と体が出来上がったようだ。
とりあえず、自己紹介をしておくか。あっちでは仁導名霧だったから……
少しもじって 霧名仁導にでもしよう。
4人が前触れもなく目をゆっくりと開ける
「初めまして。人格は出来ているな? 今から自己紹介をしてくれ。俺は霧名仁導だ、よろしく。好きに呼んでくれて構わないからな。じゃあ、そこの右のヤツからよろしく」
「リョーカイ。私は治癒術のヒースだよ。よろしくお願いします。仁さんと呼ばさせて貰うね~」
1人目は女性で聖職者のようなたたずまいをしている、が話し方は町娘の様だ。目と髪は金色で長髪だ。肌にはうっすらと赤みがかかっている。
「次は私の番なのです!! 私は聖魔術のシェマなのです。仁様、これからよろしくです!!」
2人目は何と身長が140くらいの女子中学生といった感じだ。目と髪は茶色でツインテールにしている。肌は色白だが、活発そうに見える。
「俺は強化術のスグロだ。仁と呼ばせてくれ、よろしくな」
3人目はいかにも好青年と言った風貌だった。身長は180くらいで目と髪はどちらも紺。髪は少し跳ねているが自然と似合っている。これがデフォルトなのだろう。
「ウチは弱化術のジャッカです…… これからよろしくお願いします……」
最後はスグロと正反対な感じで気弱なオタクの様な雰囲気だ。身長は多分145くらいかな? しかし目と髪はスグロと同一の紺。ボブの軽いパーマといったところか。
「そうか。名前は……ヒース、シェマ、スグロ、ジャッカだな。一人一人、かなり個性を持っているな。全員これからよろしく頼むよ」
「は~い」
「はいです!」
「おう」
「はい……」
四者四様だな