No.7 戦闘・魔熊
お待ちかねの皆様
初めての戦闘描写です。
さて、これで俺は命の保障が無くなった代わりに自由を手に入れたわけだ。なら、これからどうするか真剣に考えないといけないな。それにしても──
俺1人なのは少し寂しいな
ここ異世界だし奴隷商とかあるかな。けど、自分の足手まといを連れて行く気は無いしな~
俺のERRORスキルで何とかならないかな? ステータスウィンドウ改め俺のシステムウィンドウみたいに新しいERRORスキル覚えたりは……しないよね? さっき望んじゃったし、もしかしたら〈大幸運〉で何とかなっちゃったりして。
今考えてみたらこの世界のこと、生活に必要な知識くらいしか知らないな。まずそこら辺のことから調べていくか。
─1時間後─
あそこのおばちゃん優しかったな。
見ず知らずの、それも遠い異国から来た俺にも1からこの世界の常識を教えてくれるなんて。
ましてやこの国の外に行きたいって言ったら嫌な顔一つせずに地図と賃金を渡して「ここで会ったのも何かの縁だよ。短い間でも贔屓にしてくれたら良いさ」とだけ言ってくれたのは嬉しかったな。
よし、買い物はこの国に居る間あそこでしよう。幸い品揃えも良さそうだった。密かに俺は決意をした。
あの店結構国の端に有ったんだな。5分ほど歩いていたら国外に繋がる門に着いた。俺は門番に通行料を払い、国の外に出た。
そこで見たものは
道が一本だけ整備されているだけの森だった。
国の外に一歩出ただけで、これか。
日本で例えるなら知床や屋久島、世界なら何かの原生林かアマゾンの奥地のよう。じめっとしていて薄暗く、国の中とは正反対だ。
さて、今日の獲物を見つけるか。
情報によると、普通の動物と魔物の違いは“邪の気を帯びているか”らしい。
魔物になると目が鮮血のごとく紅色に染まり、大幅に能力が上がる。大人がウサギの蹴り一発で殺られるレベルまで行くようだ。
おっと、考え事をしている内に獲物……が……
そこにいたのは体長5メートルを優に超える熊だった。紅色の目、しかもこっちに気付いている?
魔熊から殺気が放たれる。
恐らくスキルだろうと分かっているのに足がピクリとも動かない。心臓が煩いくらいに跳ね上がり続ける。
ヤバい、これは死ねる。大人も太刀打ちできないのに俺に何ができる?
魔熊がこちらに飛び掛かってきたときにほぼ反射的に後退り転ぶ。手に当たる土がひんやりとして気持ちいい。
そういえば昔にもこんなことがあったな……
あの時は兄さんが守ってくれたっけ。ここに兄さんはいない。信じられるのは自分だけだ。
俺は俺の道を行け!!
気を引き締める
魔熊が紅い目を、更に血走らせながら全力で駆けてくる
俺の目の前で右脚を振り上げながら吼えた
「グォオォェオォォ!!」
一瞬、体が硬直するが恐らくスキルの効果だろう
自分の体を軽くほぐしながら右脚をいなす。ついでにバク転の要領で魔熊の顎を蹴りながら後ろに下がる
「なんだ、いけるじゃん」
先程まで凝り固まっていた恐怖がどんどん融かされて全身が解れていくのが分かる
「早めに片付けるか」
魔熊がまた馬鹿正直に右腕を振り上げたので相手の腹に向かって滑り込み、ボクシングの要領で左ストレートを
ドガンッ!!
ぶちこんだ瞬間に鈍く重い爆音が鳴り響く。
そして魔熊の体、いや、もう死骸で良いか。死骸が錐揉み回転をして後ろの大木をなぎ倒しながら吹っ飛んだ。
この結果に思わず
「ヘ?」
と首を傾げるしかない。ただ殴っただけ、それだけであの巨体が吹き飛んだからだ。この力、気を付けないといけないな。
ピロン
[レベルが上がりました]
おお!!
異世界要素の一つ、レベルが上がったらしい。さっきの魔熊は強かったけどどれくらい上がったのだろう?
仁導 名霧 Lv.1 → Lv.13
すごく上がっていた。いや、1回の戦闘でレベルが12も上がるって何!? 上がりすぎじゃないのか?
いや、そうでもないか。一般人からしたら魔物ってだけで超強敵だし、向こうの世界でも強い部類の生き物だからな。大量の経験値があってもおかしくはないか。
ところで、この熊の死骸どうしよう? 流石にこんなのが倒されていたら大変だと思う。
だって、俺が偶然国の外に行ったときに、偶然熊の魔物が倒されて、偶然俺が召喚されたものだった。
自分で考えといてなんだけど流石に無理があると思う。これならまだ、目の前に騎士が現れて倒したって言った方が良いと感じてしまう。この国の治安にも依ると思うが。
少し考えて、試したいことがあったのでやってみたいと思う。今回使ってみるのはスキル〈導化師〉の中にあった:道具箱 だ。
よくある収納スキルみたいに物質、物体を異空間に保存出来るものだ。システムウィンドウと連結してアイテムリストを表示できる。勿論、その状態にした。すると、リストに :第1道具箱 :フリーの2種類のスロットが出現した。
どうやら初めは全てフリーに入り、そこから他のスロットに移動出来るようだ。なお、スロット増やせて名前の変更もできる。
そして、道具箱の機能に :解体と言うものがある。効果は道具箱内にあるものを分解、解体できる。他に :合成や :コピーもあるが今は置いておこう。
早速、解体を使ってみる。するとまず俺にステータスが追加された。どうやら魔熊のステータスが死骸から分解され、俺に追加されたらしい。まあ、吸収率は1/10とかなり低い。
そして驚くべきことが起こった。それはスキルは俺にすぐ追加はされずスロットに残ったのだ。
手に入れたのは〈ファングベア-スキル 炎顎、氷顎、雷顎〉〈ファングベア-スキル 威嚇、殺気〉〈ファングベア-スキル 身体強化〉と言うものがあった。
とりあえず、威嚇、殺気、身体強化は取得した。ノーマルスキルではなくエクストラスキルに分類されるらしい。
道具箱のスロットを用途ごとに分けた。その方が分かりやすいに決まってるからな。
魔熊の素材をどこで売ろう、と思ったがその心配は無かった。何と「導化師」の効果に :換金と言うものがあったのだ。導化師、超便利だ。
スロットに :金銭を追加し換金した金はそこに放り込んだ。
素材は全てを換金せず一部を変えた。
換金した素材の中に{粉砕された頭蓋骨/ファングベア}とあったが俺は見なかったことにした。
そうか、粉砕してたのか……