No.6 提案・拒否
ああ、こいつ九徒がこう言うの分かってて言ったのか。しかしさっきの言葉少し本音も混じってやがった。
あの笑い方は獲物がうまく罠にハマって、しかも相手に自分に有利な条件を突き付けるような本物の悪がする顔だった。
「聖女様はお優しいですね!! その優しさに免じてもう1つ提案致しましょう」
ルーフリーはわざとらしく綴っていく。
「それは……あなた方も魔族やその王、魔王を倒すための部隊に入ってもらうことです。
これはあなた方にとっても悪い交渉では無いはずですよ。なぜならここの4人よりは劣りますがあなた方も強大な力の持ち主です。そこでこの4人の元へ置こうと思ったのです。そうすれば皆さんを同じくらいの境遇であなた方を支えることができます。
これは、私たちは名声を、あなた方は生活の安全を得られるお互いに利のある条件です。どうでしょうか?」
「……」
九徒は黙ってしまった。「この4人の元」と言うのが気にくわないのだろう。代わりに声を上げたのは蒼天だった。
「皆はどう思う!! 彼女は一度君達を捨てようとした。けど、思い返してくれて生活の安全も保障してくれたんだ。これは入らない理由が有るか?!」
周りはどよめき始めた。クラスメイトの声を聞くと8割が国に入りたい、2割が信用できないといった所か?
やはり、一度捨てられかけた、信用出来るわけがない、と言っている。そのような人には勇者サマが説得しに行って次々と国に入ると言い始めている。さっきまでの威勢はどうした。
ふむ、これで国を出たいのは俺だけか……まあ良い、俺はこの国で少し金をためてこの国を出させてもらおう。
「これで皆、国に入ることで良いな?」
蒼天が皆に問い掛けると、俺以外が肯定の言葉を返す。
勿論ここで反論の言葉を返すのは俺だけだった。
「いや、俺は国に入らない」
辺りが静まり返り、ルーフリーが驚きの声を上げた。
「あら、あなたは最初から最後まで私を質問攻めにした人じゃありませんか。ところで国に入らないとは? あなたの命の保障はなくなりますよ」
ハッ、そんなことか。理由なんて1つしかないだろう。
「それがつまらないんだよ。俺はこの世界で意味の無いことをしたい。例えば屋台周りやら観光やら。ああ、魔物を自力で倒してもみたいな。そこに命綱は必要ない、むしろこんがらがって邪魔だ。だから俺は国に入らない」
「そうですか……残念です。なら早く出ていきなさい。あなたのみ、この王城に許可なく立ち入ることを一切禁じます。それでも良いのですね?」
「ああ、その方がより一層望ましいくらいだ」
「では、さようなら」
「お前らも頑張って魔王サンを倒してくれよ~」
俺は戯けた表情、仕草、声音、態度で王城を後にした。
「せっかくの異世界だ。思う存分楽しまなきゃな!!」
俺はさっきとはうって変わって興奮が冷めやらぬ声音で決意を表した。