No.47
また後で投稿する……かも?
「すまないが、まずステータスを確認させてくれ」
外で意気揚々と直剣を弄んでいたベルに伝える。彼女は一瞬待ち切れない子供のような顔をしたが「仕方ねぇな、早くしろよ」とだけ口にして、再び自らの持つ剣へと向き直った。
俺はしびれを切らして襲ってきかねないほど気もそぞろなベルを尻目に、ステータスを表示した。
仁導名霧 Lv.45
HP 250000 (+54608)
MP 340000 (+107219)
STR 167000 (+22363)
INT 186000 (+15384)
VIT 122000 (+18586)
MEN 151000 (+14537)
DEX 287000 (+15353)
AGL 327000 (+21469)
LUK ―――
スキル一覧
〈金剛〉
〈妨害〉
〈ループ〉
〈HP回復力上昇〉
〈MP回復力上昇〉
〈剛力〉
〈救道〉
〈錠前魔術〉
使用可能〈施錠〉〈解錠〉〈作動〉
〈死霊魔術〉
使用可能〈骸人形〉〈霊魂回帰〉〈呪怨具〉
〈墓地〉
〈進化ノ種〉
〈地形操作〉
〈隠蔽〉
〈走馬灯〉
〈ファングベア-スキル 炎顎、氷顎、雷顎〉
〈ファングベア-スキル 威嚇〉
〈ファングベア-スキル 殺気〉
〈ファングベア-スキル 身体強化〉
〈アンデットボア-スキル 不死〉
〈アンデットボア-スキル 狂乱〉
〈アンデットボア-スキル 血涙〉
〈アンデットボア-スキル 恐怖〉
〈アンデットボア-スキル 魔力障壁〉
〈ヨトゥン-スキル 外殻〉
〈ヨトゥン-スキル 衝撃軽減〉
〈ヨトゥン-スキル 闘気障壁〉
〈ヨトゥン-スキル 氷蹴、氷拳〉
〈ゴブリン-スキル 魂喰らい〉
〈ゴブリン-スキル 簡易武器製作〉
〈ゴブリン-スキル 逃走〉
〈ゴブリン-スキル 即死耐性〉
〈ゴブリン-スキル 欠損治癒〉
〈ゴブリン-スキル 物理耐性〉
〈ゴブリン-スキル 魔法耐性〉
〈ゴブリン-スキル 反撃〉
〈ゴブリン-スキル 追撃〉
〈電気鼠-スキル 暗視〉
〈電気鼠-スキル 生体感知〉
〈コボルト-スキル 咆哮〉
〈コボルト-スキル 嗅覚強化〉
〈オーク-スキル 飢餓叛乱〉
〈オーク-スキル 握力強化〉
〈オーク-スキル 悪食〉
魔法一覧
〈属性魔法:火属性魔法〉
〈属性魔法:水属性魔法〉
〈属性魔法:風属性魔法〉
〈属性魔法:土属性魔法〉
〈属性魔法:光属性魔法〉
〈属性魔法:闇属性魔法〉
〈無属性魔法:影魔法〉
〈無属性魔法:刻印魔法〉
〈電気鼠-魔法 属性魔法:雷属性魔法〉
〈ヨトゥン-魔法 属性魔法:氷属性魔法〉
〈ヨトゥン-魔法 無属性魔法:重力魔法〉
ERRORスキル
〈歌唱魔法〉
〈導化師〉
〈システムウィンドウ〉
〈100の魂〉
〈愚鈍の王〉[使用条件:Lv.50]
〈双霊鎌召喚〉[使用条件:Lv.30]
〈大罪魔法〉
〈大幸運〈常時発動〉〉
……色々と増えたな。とりあえず一つずつ整理していこう。
まずはステータスだ。どれも大きき成長しているが、初期ステータスをレベルの分だけ倍増するタイプではなかったらしい。その証に、そもそも攻撃を受けないため最初のステータスでは高かった防御が比較的低くなっている。それでも高いが。
使っているステータスは上がりやすいのかもしれないな。
そして俺のステータスの横に表示されているのプラス値は、これまでに倒したモンスターから奪った分だ。
次にスキル。
これまでに少なくない数を闘い、その中で取得してきた。
よってスキルが増えていくのも当然だった。
多少面倒くさい作業ではあるが、いつかはやらなければいけないと割り切り進めることにする。〈救道〉より前のスキルは以前から変わっていないため割愛。
まず「魔術」系のスキル。
これらは魔法ではなくスキルの枠組みに入る。なぜなら魔法のように先天性ではなく、むしろ魔法の使えないものが同じ効果を得られるよう作られたからだ。努力次第で覚えられる、いわば「後天性の魔法」。
効果も魔法よりは小さく、想像力や魔力で融通は効かない。
そのため俺も〈錠前魔術〉では家の扉に付与されていたもの、〈死霊魔術〉はヴァイオレットが持っていた能力しか取得できなかった。
〈施錠〉〈解錠〉の効果は二つ。
予め鍵に触れて形を認識していれば、鍵がなくとも錠を開閉させることができる。もう一つが、錠のない扉などを魔力を使い開かなくする、またはそれで閉められた扉を開くことができる。門には後者の能力が付与されていた。
そして、錠や扉に動作を設定し、起動したときにその通り動かすことができる〈作動〉。門が勝手に開いたのがこれに当たる。
〈死霊魔術〉はヴァイオレットは易易と使用していたが、詳しく調べてみればなかなかに使い勝手が悪そうだった。
それぞれを大まかに説明すると、〈骸人形〉が遺骸の操作と多少の復元、〈霊魂回帰〉は生前のスキルの使用ができるようになる、〈呪怨具〉は遺骸の一部を使い呪われた物品を作りだせる。
まず〈骸人形〉では防腐処理ができないらしい。つまり〈墓地〉に入れて置かなければ腐っていく。〈霊魂回帰〉では魂が戻ってくるわけでもなく、スキルを使えるようにするだけ。どうやら〈骸人形〉の操作ではスキルを戻せないらしかった。〈呪怨具〉では使用者でさえ呪われるような性質のものしか作れない。
そして何より……外聞が悪いんだよな。彼女みたいに孤高に過ごすなら問題ないかもしれないが、生憎俺はそうではない。第三者が事前に何も知らずに、遺骸を操っているのを見れば、少なくとも好印象は持たれないだろうしヘタすればマイナスだ。
よって〈死霊魔術〉は今の所は人前で使用しないと決めている。
〈進化ノ種〉は更に使い勝手が悪い。──いや、もしも〈死霊魔術〉と組み合わせるなら相性が良かったのかもしれないが。
これの効果説明は『養分に対して忠実に発芽、その植物の操作』と書かれている。
このスキルを使用すると、手に紫がかった黒い種子が出現する。その種子を魔物に付着させると、まるで寄生するかのように発芽するのだ。──魔物の持つ魔力を養分として、種子が枯れるまでの数時間吸い取り続ける。
発芽した芽は黒いツタとなって体に巻き付き、吸い取った魔力を過剰に還元する。そうすることで、魔物はまるで進化したかのように肉体を強化させられる。
しかしその後は悲惨だ。ツタの補助により体が壊れることはないが、刻々と魔力を吸われ、植物が枯れる頃には息も絶え絶えとなるほどに衰弱するらしい。
ただ、発芽するには一定時間種と皮膚が触れておく必要がある上に、ツタが絡みつくまで進行しても種の部分を抉れば枯れてしまうため、対処は簡単だったりする。
それ故に〈死霊魔術〉とは相性がいい。条件も物言わぬ骸を操作しているためないに等しく、衰弱した体もある程度は復元できる。例え復元できずとも問題ない。
実質ノーリスクで捨て駒を強化できるのだ。……まあ俺は仲間に使うわけにもいけないし、死にスキル確定だが。
ここから先は割と文字通りの効果のスキルが多い。魔物から奪ったスキルが単純なのは、本能的に使用できるようにするためだと予測できる。なぜなら亜人型の魔物のスキルは、動物型のものより複雑であるからだ。
まあそこはおいておこう。
まずファングベア─俺が最初に倒した魔物─のスキルだ。
〈炎顎、氷顎、雷顎〉は顎に炎、雷を纏わせ、氷は噛んだ箇所を凍らせることができる。他は文字通りで、威嚇殺気を飛ばすことができ、身体が強化される。
アンデットボアの〈狂化〉と〈血涙〉は、恩恵は大きいがいざというとき以外は使わないだろう。〈不死〉に至っては、俺のERRORスキル〈100の魂〉で事足りている。そもそもそんなに軽々と死にたくはない。
〈恐怖〉は相手を恐慌状態にできるらしいが圧倒的な格下相手にしか使えないのだろう。実際アンデットボアから受けたとき効かなかったし。
ただ、〈魔力障壁〉は使えるかもしれないな。文字通り魔力を障壁にできるらしいが、どこまでできるのかは要実験だ。
ヨトゥンは元々が強すぎて、むしろスキルが少なかったのは意外だった。〈外殻〉は自らの皮膚と同じ性質の硬い殻を作り出すようで、攻撃が当たる前に決着をつけたい身としては微妙と言わざるを得ない。もっぱら徒手空拳の時か、保険として使うのが主だろう。
〈衝撃軽減〉は体に受ける物理的ダメージをある程度抑えてくれるらしい。ERRORスキル〈導化師〉に似た効果の‹衝撃吸収›が存在するが、これは創り出したものにしか付与できないため、劣化とはいえ体に受けるダメージを減らせる〈衝撃軽減〉を得られたのは嬉しかった。
そして〈闘気障壁〉は〈魔力障壁〉の体力版だ。ただ、潤沢に使おうとほぼ支障のない魔力と違い、直接命に関わってくるため余り行使したくはないな。〈氷蹴、氷拳〉は、足や拳に氷の魔力を乗せるだけのスキルだ。
次の〈魂喰らい〉はゴブリンが種族通して持っていた。効果は『自らの仕留めた獲物を喰らうと確率でその個体のスキルを得る、もしくは他人の仕留めた獲物を喰らうと低確率でその個体のスキルを得る』というものだ。正直、俺は〈導化師〉の :道具箱 でスキル、魔法を魔物から分離できるので使わないだろう。
それに、ゴブリン自体が弱いため、スキルを持たないような生き物を狙っているようで全くもって機能していなかった。ゴブリンの持っていたその他のスキルは補正がかかったり強化されたりするだけだった。電気鼠、コボルトも同様だ。
オークの所持していたスキル〈飢餓叛乱〉は、空腹になるほど身体能力が上がるらしい。まあスキルの効果が目に見えるほど発揮できるくらいお腹が空けばそもそも力が抜けるだろうから、ある意味使い所がない。〈握力強化〉はただ握る力を強化するだけだった。
そして〈悪食〉は、どんなものを食べてもエネルギーに変えて活動できるようになる、いかにも雑食なオークらしいスキルだった。このスキルを使わなければならないほどに食べ物がなくなるのは勘弁してほしいものだ。
……他にもう一つ、ゴブリンとオークが所持していた彼らを象徴するようなスキルがあったが、絶対に取得することはないだろう。一生 :道具箱 の肥やし決定だ。
魔法に関しては、今の所性急に考えるようなものはない。
新しく〈無属性魔法:刻印魔法〉を家の門からコピーし、電気鼠とヨトゥンから計三つ〈属性魔法:雷属性魔法〉〈属性魔法:氷属性魔法〉〈無属性魔法:重力魔法〉を奪っている。技の案もいくつか出しており、今回の模擬戦で有用か試すつもりだしな。
そしてERRORスキルなのだが、前回は開放されていなかった〈愚鈍の王〉と〈双霊鎌召喚〉以外は全く変化していない。加えて〈愚鈍の王〉は使用条件のLv.50まで届いていない。
よって確認する必要があるのは〈双霊鎌召喚〉のみとなる。
出来ることはスキル名通り、双霊鎌の召喚だ。どうやらこちらは導化師の武器の状態異常付与と同様に、召喚した双霊鎌を起点に能力を使用していく形らしい。
デフォルトの形状は鎖で繋がれた二本の鎌。
使える能力は四つで‹形状変化›、‹破壊再生›、‹魂霊切断›、‹滅裂切断›。
一つ目の‹形状変化›は単純明快で「形状を鎌の形から損なわない程度に変化させられる」というもの。つまり大鎌や小鎌、果ては薙鎌などと鎌として定義されるなら良いようで割と範囲は広いようだ。あと鎖も鎌の可変部分の判定に含まれるらしく伸び縮みした。
二つ目の‹破壊再生›は壊されたとき耐性を得た上で再生する。再生中は‹破壊再生›以外の双霊鎌の能力は使用できない。
三、四つ目だが、これが癖者だった。
言ってしまえば、この効果を使用しなければ双霊鎌はただの切れ味が鋭い再生する鎌だ。同じ効果を持つ武器は多いわけじゃないが、少なくもないありふれた性能。
ERRORスキルたらしめるのは「鎌を霊魂に干渉できる非物質に変化させ、霊魂に直接攻撃する」という効果を持つ‹霊魂切断›。
つまり装備や身体などの物質はすり抜ける防御不可の攻撃。攻撃対象が魂を持っていないゴーレムなどであれば効かないらしいし、その辺りは良し悪しだろう。
そして「あらゆる実体を切り裂き破壊する」効果を持った‹滅裂切断›。文字通り実体であれば切り裂くいわば‹霊魂切断›と対となる能力だ。
それぞれの鎌は独立していてこの二つを付与するもしないも自由だが、同じ鎌に‹霊魂切断›と‹滅裂切断›を同時に付与することはできないようだ。
とりあえずスキルの確認は済んだが、感想としては充実しているが〈双霊鎌召喚〉以外これと言って特別なものもほとんど持っていない、と言ったところだろうか。
ここからは実践して覚えるしかない。
そうして俺はベルの方へ向き直ったのだった。