No.45
また手直しする、かもです
久しぶり過ぎて書き方がブレブレ……
「──ッ」
目を覚ました直後に感じたのは痛みだった。そしてどうやら布団に横たわっているようで、肌にはほんのりとした温もりが伝わってくる。
つまり、触覚も機能する程度には〈大罪魔法〉の傷も癒えている、らしい。
周りに目を向けると、恐らく看病のために使うであろう、淵に布のかかった桶が置いてあった。
色々と気になることはあるが、とりあえず湧き出た疑問が一つ。
肌に伝わってくるのが、明らかに布団の温もりだけじゃないんだよなぁ……
そんな嫌な予感を強引に意識の奥底に沈める。
意を決して、そうでもしないと悲鳴が漏れそうな痛みに耐えながら布団を捲る。
そこには右腕にしがみついて、静かに寝息をたてる少女がいた。
彼女を起こさないように慎重に、混乱する頭で一旦布団を元に戻す。
ステイステイ、落ち着け。ベタだが円周率でも数えるか? いや、まず状況確認が先だ。
最初に、この少女は誰か。
それは分かっている。〈死霊魔術〉持ちの、界人と一緒に居た子だ。あと分かることと言えば、先ほど見た桶から彼女が俺の看病をしていたことだろうか。
逆に、それ以外のことは全く把握できないのだが……何にしても、一度ここから出るか。
流石にこのままだと絵面がマズイことになっている。
〈導化師〉の‹瞬間移動›を使用して、布団の横に転移する。
最初にすれば良かったのだが、そもそもこの能力を今の今まで忘れていた。
スキルの確認は、帰ってからの最優先事項だな。
絶え間なく襲ってくる身体の痛みを、心なしか気持ちよく感じる冷えた地面に預けて、しばらく物思いに耽っていた。
俺が起きてから十分程度経ち、洞窟の通路から足音が聞こえた。
マップで誰かを確認すると『和泉 界人 Lv.82』と表示されている。
今回俺が倒れた理由であるアイコンの色は──白だった。
実際は成功しているか若干疑問も持っていたため、内心では胸を撫で下ろした。
どうやらアイコンを確認している間に通路の入り口まで着いたらしい界人の顔を窺う。
彼は布団の外にいる俺に多少驚きはしたものの、辺りを見回すとすぐ眉をひそめて口を開いた。
「なぁ、ヴァイオレットがどこに行ったか知らないか?」
「地面で不自然に寝転がってる、しかも怪我人にかける第一声がそれかよ。あと、彼女ならこの中だ」
「……何もしてないよな」
若干の怒気を含ませた質問、もちろん免罪だ。
首を横に振って「んな訳あるか」と返す。
そしてその横で界人が俺の布団から、寝たままのヴァイオレットを救出していた。
このまま話していても拉致が開かないだろう。
コイツ、頭の端から端まで全部ヴァイオレットの事で埋まっているのかもしれない。
早速、先日のことを要点だけかい摘んで説明する。
「……とりあえず、今わかってることを話す。俺が解除したが、お前らには犯罪者にしかつかない印が施されていた。多分、女神が関係してるから、これは気にしなくていい」
「そうか」
本当に興味がなさそうな平坦な声。
ただ、内容は理解しているのか頷いてはいる。
俺が話している間もヴァイオレットの体を自身の足の上に乗せ、目線は彼女に、手は彼女の頭を撫でている。
そして今回の本題。
途中まで心配しすぎたのが可笑しく思えるほどすんなりなんとかなったが、今回ここに来た理由はジャミレスさんからの依頼だ。
まあ、彼女からもいくらか問い詰めたいことはあるのだが、ひとまず保留。
「これから、お前らはどうする? 少なくとも、俺たちも依頼で来ていたからここからは離れてくれないと困るんだが……前にも言ってたと思うが、俺と一緒に来るか? 二人くらいなら余裕で匿える。別に強要とかはしないが返事がほしい」
こちらはヴァイオレットも直接関わってくるからか、顔を上げる界人。どこまでも彼女中心な男は、淀みなく「いや、遠慮しておく」と、否定の言葉を返してきた。
「ヴァイオレットとも話したが、このままここを離れて気ままに旅をさせてもらう。街に入れるようにしてくれた事は、感謝する」
この言葉は、俺の目を見て言ってきた。
なんとなく、初めて俺だけを見て言ってきたような気がした。
彼は寝たままのヴァイオレットをそのまま背負い、既に纏めてあったのであろう荷物を抱える。
そして恐らく〈転移者〉の効果なのだろう、一瞬で二人が消える。俺だけを残して。
……怪我人、置いていったな、アイツら。