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No.43

「それで? 何か弁解することはあるか?」


 地面には正座をしたカーミラとヴァイオレットが、正面では俺が腕を組み彼女らを見下ろしていた。

 カーミラはばつの悪そうにそっぽを向き、ヴァイオレットに至っては俺など眼中にないようで早く界人の方に行きたそうにウズウズしている。

 そもそも正座をしているのだって、界人に「座れ」と言われてしぶしぶだった。少なくとも俺の手には負えない、界人へと面倒事は放り投げるとする。



 さて、とりあえず俺はカーミラの行動に口を出すことにするか。

 カーミラはやはり罪悪感はあるのか、ごもりながら呟いた。


「だって、あのままじゃダメだと思ったし……」

「最初に言ったはずだが別に今回は俺だけでも問題なかった。まあ流石にあんな化け物を隠し持っていたのは予想外だったが……それでも、命だけは大切にしてほしかった。あのまま攻撃が直撃してたら少なくとも無事では済まなかっただろ。せめて扉から部屋を飛び出すなりしておけば──」

「その辺で十分じゃないですの?」


 ふと言葉を遮られ横を向くと、ユウキが蔑視するかのようにこちらを覗き込んでいた。

 なぜそんな風に見られたのかは分からないが、ひとまず耳を傾ける。


「そもそも、今回ミラは私に一度意見を聞きました。なら、私にも責任がありますわ」

「ユウキは普段から抜け目ないだろ。反省もしてるみたいだしな」

「ならそれこそミラもですわ。むしろ今、一番負い目を感じているのは彼女ではなくて?」


 カーミラを見ると、いつもなら俺の方に振り向く彼女は一向に眼を合わせてこない。そして口数も少なく、どことなく表情も暗い。

 これは……やってしまったかもしれない。この雰囲気は依頼でミスをやらかして、落ち込んでいる時のものと同じだ。


「……すまない、気が立って動転してた。大丈夫か?」

「……全然大丈夫じゃない。お詫びに今度買い物付き合ってよ」

「分かった。じゃあその帰りに最近できた氷菓子でも食いに行くか」

「え、良いの?! 行く行く!!」


 先程までしょんぼりとしていたが、一瞬にして笑顔が咲いた。そんな、表情がコロコロ変わるところも彼女らしくて微笑ましかった。



 あぁ、そういえばこの際だし聞いておきたいことがあったんだった。


「二人とも、俺たちと暮らす気はあるか?」

「へ!? なな、なに言ってんのよ!? わ、私はまだそういうのは早いと思うのだけど……」


 カーミラは俺が問いかけた途端、頬を朱に染め狼狽(うろた)え始める。彼女は頻りに変なことをボソボソと呟いているが、俺は首をかしげるしかない。


「そっちこそなに言ってるんだ。お前ら、まあ一応借金あるらしいしどこかの宿を借りてるんだろ? なら部屋の空きもある俺の家に来た方が節約になる。それに、依頼も待ち合わせせずに直接行けるしな」


 まあ、借金に関しては十中八九嘘だとは思うが。これまでの依頼の報酬はほぼカーミラたちに渡しているため、合わせれば軽く一般人が一生遊び呆けても手に余るほどの財産のはずだ。

 それなのに返済しきれない量なのが疑問に残る。

 あと……カーミラだけならまだしもユウキが一緒だと、そんなこと(借金)しそうにないんだよなぁ。

 カーミラを蹴飛ばしてでも止めそうな気がする。


 先程まで何らかの勘違いをしていたのであろうカーミラも内容を理解したのか「ああ、そう言うことね……分かってた、分かってたわよ……」と不貞腐(ふてくさ)れながら呟き、でも、と(うずくま)り悩みだした。

 ユウキは手で口元を隠しながら、足元の悩める子羊に「……せっかくの提案ですよ、試しに受けてみては?」と(悪魔)お告げ(囁き)を与える。

 そして、カーミラは何かが吹っ切れたようだった。


「ああ、もう!! 考えるの止めた、お願いするわ!! ユウキも良いわね!?」


 勢いに任せて吐き出したカーミラに対して、ユウキは薄く微笑みながら「ええ、構いませんわ」と肯定の意を示したのだった。

 その頃界人らは


「やっぱりあの化けもんの“破壊砲”危なすぎるよな? そうホイホイ撃って良いもんじゃないのも分かるよな?」

「うん、分かった。これからは、君に、聞いてから、撃つ。それにしても、あの人、全部、消した。すごい」

「え、ああ、アイツは俺と同じ場所から来たから……」

「君と、同じ?」


 叱るつもりが一瞬で話題を逸らされる界人。

 そして知らぬ場所でヴァイオレットからの強さと価値の評価が上がってる仁導(邪魔者()から人間並みに)。



 〈影ノ映世(カゲノウツシヨ)

 選択したもの(今回は三人の放った技そのもの)を影の世界に写し移す。発動条件は周りが薄暗く、ほぼ影に包まれていること。

 移すには、体積や本来当たれば受けるはずのダメージなどに比例するMPが必要。

 実は仁導は軽々しく防いでたように見せていたが〈MP回復力上昇〉を使用していたのに一気にMPが半分くらい減って、内心冷や汗を流していた。

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