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No.35 師匠・対談

「何にしても、俺の一撃を受け止めたヤツなんて数年ぶりじゃねぇのか?」

「私の記憶が正しければほぼ3年ぶりですわ」

「それは師匠がほとんどの人を追い返すからでしょ」

「アイツらが勝手に帰っただけだろーが」


 彼女らの師匠に案内されて家に入ったが、思いの外さっぱりとした内装だった。

 少なくとも見える場所に趣味嗜好が伺える物は置いていない。


「ミラはコイツに茶でも出してやれ。さてと、名前は何て呼べばいい?」

「俺は霧名(むみょう)仁導(じんと)だ。別に強制するわけでもないから、なんとでも呼んでくれて構わない」

「じゃ……あー、考えるの面倒だわ。ムミョウで行かせてもらう。俺はベリト・アグナックってんだが、俺の一撃を受け止めたヤツからはベルって呼ばせてる」

「呼んでもらってるじゃなくて、呼ばせてる、か。なら俺もそうさせて貰うぞ。これからよろしく頼む」


 彼女らの師匠改めベルは、紫色の髪を後ろで縛ったポニーテールで同色の目だ。会ってからずっとメガネとヘッドホンをかけており二本の剣を腰から下げている。

 身長は俺より少し高いくらいで、シャツの下からバストが存在を強調している。


「丁度、良い茶葉があったから使ったわよ。はい、これはアンタの分ね。師匠のも淹れといたから好きなときに飲んでね」

「え、マジで淹れてくれたの!? 最近全然やってくれなかったからダメ元でお願いしたのに……サンキュ」

「今日はやってもいい気分だったのよ」


 ベルは見た目はハーブティーらしきお茶を一口含み「やっぱミラの茶はウメェな、オイ!!」とご機嫌に感想を()らしている。

 俺も一口飲んでみると、確かにそこらの店よりは旨いと言える味だった。


「そういやムミョウは何でここに来たんだ? ──つっても俺に紹介するためだよな。ちょいとミラとユウキは席外してくれねえか」

「分かりましたわ、お師匠様。それでは用事もないようですので、町に帰ってもよろしいでしょうか」

「ならギルドに依頼の達成も報告してもらって良いか? 多分俺はベルに放してもらえそうにないからな。何時もみたいに報酬も2人で山分けでもしておいていてくれ」


 俺はそれだけ伝えると2人に :道具箱から出して依頼の確認部位を渡す。

 今回に限って部位が重い種類の物だったが仕方ない。


「ええ~これ持ってかないといかないの? めんどくさ……」

「カーミラも愚痴をつく前に運んで下さる?」

「あ、そういえば。さっきのお茶どうだった?」

「旨かったぞ。なかなか淹れるの上手じゃないか」


 それだけ聞くと彼女はやけに嬉しげに笑顔で頷く。

 荷物を持たせて、二人並んで町への帰路につく。

 彼女らも決して弱くはない。例え荷物を持っていても負けはしないだろう。



 しばらく経ち、マップでも彼女らが町についたことを確認し一息つく。


「アイツらも町に到着したみたいだ」

「──ムミョウは転移者なのか? さっきの収納スキルといい探査スキルといい、俺の知ってる物と違いすぎる」

「それはこっちが言いたいんだが。そのヘッドホンはあっち(俺の世界)の技術だろう。しかも、なぜ()()()()()()()()()()? 名前ではヒットしたのに、それ以外ではどうマップで検索しても出てこない?」

「……相手の気持ちに疎いヤツは嫌われるんだぜ。その答えにはまだ答えられない。ただ、俺の愛弟子達の仲間でいてくれるなら俺も敵には回らない、とは断言する」

「それだけでも聞けたら十分だ」


 カーミラの淹れてくれたハーブティーを一気に飲み干す。

 なかなかスッキリとした味わいで、今度同じ茶葉を買っても良いかもしれない。


「彼女らは俺がこっち(この世界)に来てから組んだ、最初の仲間だ。黙って見捨てるなんて選択肢はさらさら無い」

「やっぱ面白れぇな、お前」

「ベルに言われたくはないな。この化け物女」

「誉め言葉として受け取っておこうか。底の知れない化け物が」


 お互いに不敵な笑みを浮かべて握手を交わす。

 事実、ベルのステータスを読み取ろうとしたが弾かれたのだ。しかも彼女はそれに薄々勘づいているようだった。

 恐らく何度も挑戦すれば突破もできただろうが、彼女から敵視されるのは避けたかった。

 あっちからも解析してきたが弾き返してやった。


「それと、アイツらからは要らないとか言われたが一応手土産だ。俺が遊ばせておくのも勿体ないしな。納めといてくれ」

「ん? なんか能力が付与してるな。これは……突拍子もねぇこと考えるもんだ!!」

「じゃあ、また俺だけで顔を出しに来る」

「ミラとユウキも連れてこいよ。寂しいじゃねえか」


 家から出て歩き始める。日はかなり傾いており歩いて帰ると日は完全に沈んでしまうだろう。

 俺は既にうっすらと見える2つの月を眺めながら、森の中を歩いていく。

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