No.30 森中・移動
俺たちは依頼をこなすために目的の森に入っていた。
マップを見ると“鬼神の森”と表示されている。
先日ジャミレスさんに、なぜこんな名前になったのかを聞いて見たところ、お伽噺が由来らしい。簡潔に言うと鬼神が居てこの森を統治していたお話だ。
今でも神を奉った祠が森のどこかにあるらしい、が発見はされていない。
まあ、実際は人型のモンスターが多いから自然とこう呼ばれるようになったとの事だ。
他にも嬉々として雑学を話してくれて、直接伝えはしないが感謝している。
周りを見渡してみると、人が食べられるような植物は明らかなほどに無い。
と言っても色や形は普通なものが多い。しかしAR表示のアイテム説明を見ると殆どが毒持ちだ。毒の無いものも極端に不味かったり甘かったりしているらしい。
全長20メートルほどある大木が10メートル間隔ほどで立ち並んでおり、鬱蒼としている。ただ、湿りっけは無い。
木々の隙間が結構あるので空気は通りやすいのだろう。お陰で俺たちも足の踏み場があるので助かっている。
「2人に聞くが、普段はどんな戦闘スタイルなんだ?」
様子を見るにしてもそれは知っておいて損はないだろう。
先に返事をくれたのはカーミラだった。
「私はそこら辺に転がってる物で戦うわ。ユウキは刀かしらね」
「ユウキは分かったが、カーミラのそこら辺に転がってる物ってなんだ?」
すると彼女は辺りを見回し、しばらくして木の根本にあった5センチ程度の石を拾ってきた。
「こんな感じの石を、私のスキルで形を変えて投げつけるのよ」
「接近戦は出来るのか?」
「あんまり得意じゃないけど、ここらの魔物に遅れは取らないと思うわ」
なら敵の近くで戦えばいいんじゃないか? と聞いたら、魔物の血とかで汚れたくないの。とぶっきらぼうに返された。
森を走り始めてしばらくすると魔物が段違いに多くなった。
「さて、もうそろそろ戦ってもらっていいか?」
「アンタがまずやりなさいよ」
カーミラは、さも当然のように告げる。
「えっと、なんで俺からなんだ? 今からお前らの実力を見るために戦ってもらわないと──」
「だから、その時に私たちを守れる力があるのか不安なの。分かった?」
「……そうならそうと早く言っといて欲しかったな」
だが、そりゃあそうだ。
守ってやるとか言っておきながら頼りにならなかったら、意味がないもんな。
問題は、どの技もろくに使ってないことだ。唯一使ったことがあるのは〈影魔法〉だが、技が派手にならない。
余談になるが、スキルや魔法を使うには条件がある。至極当たり前だが“理解する”事と、魔法の場合“効果に見合ったMPが必要”と言うことだ。正確には“MPが無ければ中途半端になる”だが。
俺の場合はすぐに作って使うことも出来るが、大半が〈導化師〉と〈窓〉の処理能力に頼っているので効果がどの程度で発揮するのかはっきりしない。
まあ、見栄えについてはどうにかなるだろう。
そんなことを別に考えながらマップで検索していくと、この森で一番強い魔物はコイツだった。
ヨトゥン Lv208
ジャイアント系の魔物の中でもっとも強い種類で、別名はデスジャイアントらしい。気性も荒く依頼に出されたら難度はSになるようだ。
今回はコイツを倒しに行きたいと思う。もちろん普段なら戦わないだろう。
しかし、今回は2人に認めてもらうための戦いだ。敵は強いほど分かりやすい。
それにコイツの近くでパーティーであろう5人組が他の魔物と交戦しているんだよな。多分このまま放っておけば5人組は殺される。それは寝覚めが悪い。
とりあえず2人に伝えておくか。
「少し遠いが魔物を見つけた。ジャイアント系の魔物だから不足もないだろ。」
「あら、探査系の魔法を持ってますの? では早く行きますわよ」
「結構強い個体みたいだが、絶対に手を出さないでくれ。俺1人で倒した方が信用できるだろう?」
「分かりましたわ。でも無理はなさらないで下さいね」
「もちろんだ」
俺たちはは彼女らが出せる全速力に合わせて目的地に走っていった
次回から戦闘描写入ります~
感想とか欲しいです。なんか『批判的な返信されるのが怖い』とか言う人が居るのを知ったので一応……改めて、私はどんな感想でも欲しい派です