番外 No.2 各自・買物
大変お待たせいたしました。
2章の前に番外編です。
この話はNo.9とNo.10の辺りです
今回はsideといった表現を使っております
「とりあえず服を買いに行くか」
なぜなら彼らが来ているのは俺の予備の服だからだ。
創ったときには服も一緒に出てきた。しかし、いつ消えるか分からなかったので一時的に服を貸した。
先日魔熊を倒して〈導化師〉スキルで:換金したら金貨5枚分になったので、全員分の服を買うくらいの余裕はある。
実を言うとこれまでは国王から申し訳程度に貰った半銀貨1枚分程しかなかったため、服は俺たちが着ている分しかない。今なら余程の物品でなければ買えるだろう。
宿から出るときに、この4人の宿泊代を払うのを忘れていたのに気付いた。店主には代金より少し多めに渡して店を出た。
10分ほど歩いて着いたのは「ユニーククローズ」という雑貨屋だ。
おそらく異世界の人間たちのネーミングセンスだろう。そもそもこの世界に英語は無いし、もう少し捻ったほうが良かったように思う。
中に入ると日本でよく見ていた洋服や中世で着てそうなヨーロッパ風の服。果てには武具や魔法の品など様々なものを取り揃えている。
だがあくまで今日は服を探しに来ただけだ。俺たちは武具のフロアを素通りし衣服類のある所へ行く。
「ここからは個人の自由行動にしたいと思う。金は1人銀貨2枚ぶん渡しておくから自分で買ってくれ。時間は……2時間後にここで集合だ。残った金と時間もお前らの好きに使ってくれ。じゃあ解散だ」
全員が店内に散らばるのに時間はそこまでかからなかった。
マップを使って4人を探してみるとシェマとヒース、スグロとジャッカの2グループになっているようだった。シェマが少し心配だがヒースが付いているようだし安心しても良いだろう。
さて俺は俺で店内を回るとしよう。
ブラブラと回っていたらロングコートがあったので一着買う。向こうでは流石に着るつもりはなかったがこっちでは意外とこんな服を着ている人を見る。ならそれに乗るのも一興だろう。
その他の服は気に入ったものは見つからなかったので店先に「オススメ!!」と書かれ売っていた物をテキトーに購入した。
このまま歩いていても仕方がないな。時間もまだ小一時間余っている。……武器だけでも探しておくか。
◇ ◇ ◇
─side シェマ・ヒース─
自由行動になって時間が経ったとき、彼女らは女性モノのアクセサリー売り場に居た。既に2人とも買った服に着替えている。
シェマはフリルあスカートなど見た目相応の服。ヒースはモモンガパーカーにホットパンツと行った格好だ。
「う~ん」
「どうしたのです?」
「やっぱり、アクセって高いんだね。これなんて私が今持ってるだけ使っても買えないよ」
ヒースが花形のアクセサリーを手に持ち、シェマと眺めながら呟く。
「あっ、この髪を結ぶリングゴムとかシェマちゃんに似合いそう!!」
今度は焦げ茶色のリングゴムに興味を移す。値札を見ても十分彼女の所持金で足りる値段だ。
「良いのですか?」
「良いの良いの。初めて2人で買い物に来た、記念の贈り物だよ~」
「そう言うことなら……これからもよろしくなのです!!」
シェマは受け取ってすぐに貰ったゴムで髪をくくって、また二人一緒に歩き出した。
─side ジャッカ・スグロ─
「あんまり可愛くない……」
「そんなに落ち込まなくてもいいだろ。色的には好みって話してただろ」
「色は良いけどそんな問題じゃないの……!!」
こちらの2人は弱々しくもジャッカが決して諦めない口喧嘩が起きていた。
スグロはパーカー付きの着物をモチーフにしたサイズ違いのジャンパーを持っている。
「そんな飾り気の無いのイヤ……」
「なら……仕方ないか。ちょっと待ってろ」
それだけ言い残しジャッカに購入済みだったジャンパーを渡す。そしてスグロは先程までいた衣服店に再び入っていく。
しばらくしてジャッカの元へ戻ってくると、手には先程までは握られていなかった店の買い物袋。
「それ、何なの……?」
「糸とハサミと縫い針。他にも欲しいものはあったが今回はこれで十分だ」
スグロはそれだけ言うと彼用のジャンパー、その長袖部分をハサミで切り取り半袖くらいの長さにした。切った所の布がほつれないようにかがり縫いをする。
彼は「よし、次」とだけ独り言を呟いて、切り取った布を縫い合わせて何かを作っていく。
器用な手つきでそれを作り上げた彼は、ジャッカ用のジャンパーのパーカーとベントの部分に縫い付けていく。
「思ったより上出来だ」
ジャッカに出来上がったジャンパーを渡すのを皮切りに裁縫道具を仕舞う。
「これって、猫ミミと尻尾……? 可愛い……」
ジャッカは猫ミミ付きのパーカーを被る。しかし、布を縫い付けただけなので直ぐにペタンとしぼんでしまう。
彼女はそれが気に入らなかったのか何処からともなく出した針金を猫ミミと尻尾の中に入れ、形が崩れないようにした。
ピンと立ったのを店先にあった鏡で確認して、ジャッカはスグロの方に向き直る。
「どうだ、それなら問題ないだろ」
「うん……ありがと、兄さん」
照れ臭そうにスグロのつけた所を弄る。
対してスグロは「そうか」とだけ満足げに返した。