No.26 昇級・推薦
ピロン
[レベルが上がりました]
霧名 仁導 Lv13 → Lv25
お、レベルが上がったみたいだ。
これがゲーム的な仕様ならレベルが高くなるごとに必要経験値が増えるから上がりにくいのかと思ったが──そういえばジャミレスさんが「不死化した後のアンデットボアはS級相当」だって言っていた。
それよりも倒したアンデットボアを一度 :道具箱に入れて解体っと。
何気に :解体は使い道が広い。例えば一部だけを分解したり“血と肉”見たいにかなり限定して行うこともできる。
ジャミレスさんに言った「報酬」は二つだけで良い。スキルとステータスさえあれば十分だ。まあ、後から貰えそうなものはある程度いただいておく。
ボアを一瞬で素材の山にして、全て馬車の荷台に積む。
「あら、全部もらって良いのかしら?」
「いえ。幾つか貰っているので気にしなくて良いですよ」
「それにしてもあなた、解体のスキルでも持っているのかしら」
「さてどうでしょう?」
「さてじゃあ報酬の話をしませんか。まずあとぐされの無いようにお金のことから。あなたの言い値で支払いたいけどどのくらい欲しい?」
おもむろにジャミレスさんがパンッと手をならして笑顔で話し始めた。
「俺としては家に住むのに困らない当分の金さえ貰えれば良いですし──金貨30枚でどうでしょう。あそこの素材と依頼代を合わせても安く思いますが」
「ジントさんが良いなら構いませんが……ならせめて家までの案内をさせていただけませんか。こちらもだいぶ得をさせてもらっていますので」
これ以上の謙遜はかえって迷惑だろうな。この辺りが落とし所か。
「じゃあそれでお願いします」
「他に何か聞きたいことはあるかしら」
「ちょっと良いか」
ここで今まで無言─どころか壁に体を預け無挙動─だったスグロが話に割り込んできた。
「さっき討伐したアンデットボアのランクはS級相当だったらしいな。それに追加の依頼も出された。ならギルドランクはどうなるんだ」
「それについては……あなた方が上げたいかどうかですね。言ってしまうと私はそれなりに高い地位にいます。ギルドランクの試験はC級までなら免除させる推薦状を書くのも出来ます」
ジャミレスさんは予想もしていたのか淀みなく答えている。
「けど、それって大丈夫なのか」
「あなた方に関してはなぜ必要なんですか? 記述は一般教養が身に付いているか調べるものです。功績と戦闘は今ここで示しましたよね。何より、この私が認めたのですから」
俺たちはこの世界の人間ではない。つまり身分を示せる物品はギルドカードのみだ。それだけでもランクをあげる価値はあるように思える。ならそれ以外に何か利点はあるのだろうか。
「ランクを上げた時、俺たちに利点はあるのか。逆に欠点は?」
「利点は─そうですね。例えば一般人には入れない場所に入れたり、高ランクの依頼を受けられるところ。欠点はC級からはギルドからの召集がたまにかかることがあります。強制ではありませんがね」
なるほど……欠点はほぼなく利点がほとんど。なら答えは決まっている。
「なら、受けさせてもらいたい。俺はいろんな場所でいろんな経験を積みたい。そのための手段は多い方が助かるからな」
「分かりました。あなた方が家で休んでいる内に推薦状を書いておきますね。次の町に着くのが明日の朝方だから──多分試験を受けられるのは明後日の午後くらいになると思う。大丈夫よね?」
「ああ、もちろんだ。よろしく頼む」
ジャミレスさんによると記述の試験も形だけだが受けることになるらしい。10分程度で終わり、余程の事がない限り落ちないだろうとのこと。
次の町にはどんな楽しいことが待っているのだろう。
町に近づき道路が舗装されているのか。馬車の揺れもほとんど無くなり、静かに時が過ぎていく。
淡い期待と高揚感を胸に俺は眠りにつく。
夜空は月に照らされミッドナイトブルーに輝いていた。
一章終了です!!
今までお付き合いありがとうございました。
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