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導化師は我が道を行く  作者: 錆腐短杖
異世界への旅立ち
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No.21 魔力・操作

 がらがらといった車輪の小気味よい音のする屋根。そこには乾いた風が吹いていた。まるで今の俺の気持ちのようだ。


 馬車から追い出された、それだけだ。

 もともと余裕を持って6人乗りの馬車を借りていたが、一気に5人も増えれば場所もなくなるだろう。

 だから、誰が外に出るか話し始めるとリーダーである俺が行くべきであると()()()()決まったらしい。


 連れてきた5人は客扱いだから屋根なんて論外、疑似人格たちは「せっかくここに存在してるんだから快適に過ごしたい」と言っていた。


 一応、護衛の仕事で来てるから1人は馬車の外に出る必要がある。だから、俺が見張りをするために行くのは問題ない。



 だが、仲間外れにされるのはちょっと悲しいものがあるな……


 因みに、3台目の馬車の屋根には見張り台がついている。そのため横になるためのスペース位はあった。


 俺はそこでマップを見ていた。

 ……改めて思うが、この能力の性能おかしいよな。これを見るだけで近くに敵どころかどんな生き物がいるのかでさえ分かる。


 まあ、この辺りにいる動物や魔物はシェマでも倒せるようなヤツばかりだ。ヒースならば一番強い魔物なら太刀打ち出来そうにないが、ソイツ以外は何とかって所か。


 とりあえず分かったことは、この辺りで今夜中は襲撃してきそうな不安要素は無いってことくらいだ。


 マップを消して、馬車の屋根に寝っ転がる。そこには、俺の世界とは異なる星空。そして、模様─と言うよりクレーターの形─の違う()があった。



 そう、月があるのだ。


 何故、月があるのか。そもそも、この世界は何なのか。この世界に魔法がある理屈。はたまた、魔物が存在している理由……挙げていくとこの世界の“知らないこと”が多すぎる。

 そして、少しずつ知っていく。

 その中でより、この世界を“楽しんで”生きたいと思うのだ。




 しっかし暇だ。こんなことなら暇潰しの道具でも持ってくるんだった。何かやれることはないのか……



 ……そうだ。魔力を操作してみるか。


 と言うのも実は、この世界に来てから変わったことがいくつかある。

 1つ目は身体能力。これはレベルアップによるステータスの上昇の効果だろう。


 2つ目は俺がスキルを使えるようになったこと。理屈はまだ分からないから知りたいことの1つだ。


 3つ目は魔力を知覚出来るようになったのだ。

 これには流石に驚いた。

 この世界に来てから違和感は感じていたが、何か分からなかったから保留にしていた。しかし、ティオールと戦ってマジックウェポンを使用した時に何かが流れ出て剣を形作った時にはっきりした。


 これは魔力だと。


 ラブリアルは魔力らしきものをプロブランに使っていた。

 ならば、俺も努力次第で魔力を自在に操作出来ると思うのだ。


 魔力の概念は、例えて言うなれば『体の隅々を行き渡るもの』だろう。なら、これを目一杯動かせば……

 ……んぎぎ……!!


 なかなか動かないな。むしろ、力んだからか流れが淀んだ気がした。


 なら、次は逆にリラックスして……



 少しずつ、少しずつ流れを早くするイメージで……


 ─ザラ─


 もっとスムーズに速く……


 ─ザアァ─


 全身に勢いよく循環させて……!!


 ─ザアアアア─


 まだ、流れがおかしい所がいくつかあるな……それを取り除いて洗練させて行く。


 ─サアアアア─


 そして、魔力の通り道を流す魔力の量はそのままで。かつ、細く丈夫にしていく。


 ─キュイィィイィン─


 ……何かヤバそうな雰囲気が漂っているが構わず、さっきの行程を繰り返していく。




 ─1時間後─

 つ、疲れた……

 まさか暇潰し程度にやるつもりが、つい本気になってしまったな。最後の方になると最早、循環どころかタイムアタック気味になっていたし。そして、この速度はおかしいのだろう。

 まあ、いい暇潰しを見つけたな。明日から暇なときとか寝る前に少しやることにしよう。次は流す魔力を増やしても良いかもしれない。



 俺が心の中で決意を表明したとき、馬車の中から1人出てくる影が見えた。ジャッカやスグロ辺りだろうか。


「誰だ?」


「ふぁ……あ、仁様、まだ起きてたなのですね……」

 俺の予想に反して、出てきたのはシェマだった。しかし、あくびをするほど眠そうだが。


「どうしたんだ?」

「下にいた皆はもう寝た事を伝えに来たなのです。仁様は何を……?」

「ああ、体の中の魔力を循環させてたんだ」

「魔力の循環?」


 眠気よりも“魔力の循環”と言うはじめて聞く言葉への好奇心が勝ったらしい。眠そうな顔は何処へやらだ。


 そこで、さっきまでしてたことを話すと「私もやるなのです!!」と元気一杯の返事をくれた。

 今の時間ならば遅く見積もっても、まだ22時くらいだろう。


「ああ、構わないぞ。じゃあ、体の中に魔力があるのは感じるか?」

「それくらいヨユーなのです!!」


 小振りな体で精一杯胸を張るシェマ。漫画であれば「ドドンッ!!」と効果音が書かれそうだ。その姿はとても微笑ましい。


「なら、魔力を身体中に回して行くんだ。後は、速く丁寧にそれを動かしてみて」

「ん~……こうなのです?」


 そう言ってシェマはゆっくりと。だが、着実に魔力を回している。


「そうそう。そのまま速く回してみて?」

「はいなのです。……ん~……えいっ やっ」


 掛け声で頑張っていた。暫くして、魔力が体を巡るのに一回転一秒まで縮んだとき


「ふにゅぅ~……」

 と可愛らしい声を出しながら目を回して、もたれ掛かってきた。


 やはり、体の中の魔力を動かすのは集中力を使うのだろう。純粋な魔力体であるシェマでさえ精神の方に疲労感が伝わっているようだ。



 俺は、1度馬車にシェマを連れていく。そして、寝かしたあとで馬車の見張り台の上に戻った。


「とりあえず、見張り変わるまで本気で魔力操作するか……」


 次の見張り番─ジャッカだった─と交代するまで魔力操作を行いながら見張りをする。

 ジャッカに見張りを代わって貰った後は、馬車の中で仮眠をとった。


 そして、交代後に3時間ほど寝ていた俺が起きた所で、ジャミレスさんの元に昨日の話の続きをするため5人を連れていくのだった。

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