No.18 戦闘・団長 3
影ティオールが消え去ったこの場には戦意を失った2人と俺、そしてティオールだけになった
そこにティオールの悲鳴じみた怒号が響きわたった
「何でお前が〈影法師〉に勝てるんだ!? アレは俺の身体のリミッターも外した状態なんだ!! 勝てないはずは無いんだ!!」
「へー、そうなの? じゃあ、アレに勝った俺にはお前は勝てないことになるんだが」
「…勝てない? そんなはずはないんだ……やっと本物を殺して俺が本物になったのにあり得ないんだ……あり得ないんだ!!」
倒す前に気になったことがあるから先に聞いておこう
「本物を殺して本物になった? どういうことだ?」
「影法師が本体を殺せば本物になれるんだ。せっかく自分を手に入れたんだ。ここで死ぬわけにはいかないんだ!!」
ティオールは精神的にもガタガタなはずだ
しかし、俺に短剣を前に構え走ってくる
なるほど、なら代償無しで自分より強い分身が出せたのも納得が出来る
だって術者が殺されるかもしれないのだから
それに、冒険者から盗賊になったのも人格が変わったからだとすればあり得るのかもしれない
まあ……
「どっちにしろ倒す事には変わらないが」
俺は蛇腹剣に<爆発>を付与する
そして、ティオールに届く程度に刀身を伸ばしながら無造作に切り払う
ティオールは流石は歴戦を潜り抜けた実力というべきか、とっさに短剣を構え直しガードする
短剣と蛇腹剣が斬り結んだとき、刀身に付与した<爆発>発動
至近距離で起こる鼓膜を破るような爆音と爆風
俺は踏みとどまったが、元々満身創痍だったティオールはふきとばされた
ティオールを見ると片ひざを付き脇腹を押さえている
どうやら、壊れた短剣の破片が勢い良く刺さったようだ
かなり出血している、ほっといても死ぬくらいに
「なぜお前はそんなに強いんだ!? クソ……クソ……クソッ!!」
「言い残すことはそれだけ?」
ヤツが出来る限り痛みを感じないように首を落とす
「せめて安らかに眠ってくれ」
俺はティオールの体を土に埋める。そして奴の短剣をその近くに添え、この場を去った。
◇ ◇ ◇
ザッ ザッ ザッ
誰の声も聞こえてこない、しかし数日前に戦闘をしていた部屋に土を掘り返す音が響き渡る
「あー、やっぱり首は持っていってるかー。これじゃ報酬金、横取りできないじゃねぇか。まあ、良いんじゃないかな。クソめんどくせぇな。そんなことないってば」
そこには支離滅裂な言動を吐きながら、狂ったように一人で話し始める男がいた
そして、寂しい部屋に一言
「君が強くなったら戦おうね。仁導名霧くん…」
そう呟きながら去っていった。