No.16 戦闘・団長 1
俺がティオールに向けて戦闘宣言したとき、彼は奥にある椅子から気だるげに、ゆっくりと立ち上がった。
「ハァ~……お前さんも命知らずだ。大した実力だが俺に敵うとでも思ってるんだ? これでもBランクに近かったんだ。そう易々と倒せると思わないでほしいんだ」
まあ、確かにな。
俺がLv.1の時で、尚且つ武器を持ってなくて、更に連携がバッチリなティオールが10人くらいで戦ったら互角だっただろう。
この世界では強い部類に入る。それは間違いない。
「うん、かなり強いよ。だから、ちょっと付き合って。
俺の能力の実験にね?」
「炎よ、風よ、数多の万物を切り裂け 〈ウィンドカッター〉〈ファイヤーカッター〉」
ティオールは表情を見せずに魔法の詠唱を始めた
しかも、所々省いて詠唱をするときであれば必要不可欠な部分しか唱えていない
魔法を避けようとしたその時、ティオールが地面に腕を突っ込んで「掴まえた」と呟いたのが微かに聴こえた
地面に腕を突っ込む? いや……影に腕を入れている?!
まさかと思い足元を見ると、俺の影から腕が延び足首を掴んでいた
予定より早いが実験を始めるか……
今回試すのは〈システムウィンドウ〉と〈100の魂〉の2つだ
窓は“能力名には書いていないが使える能力”がたまにある
今から使うのはその内の一つで<ステータス振り分け>だ
例えば、Lv.1の時ならINT8000を3000にして、未使用ポイントを5000作る。すると、INT以外のステータスに振ることができるのだ。
この5000ポイントをSTRに振り元が8000だったのを13000にできる
ただし、HPとMPは増減させる事が出来ないようだ
今回はMENを50だけ残し、攻撃を一発くらったら死ねるくらいにした
これが1つ目の実験「ステータス操作は働いているのか」
〈100の魂〉は一度試して見ないと分からないが実験する
2つ目の実験は「一度死んだ場合、ステータスはどうなるのか」
これは振り分けたステータスがリセットされるのかどうかを確かめるためだ
3つ目の実験は「100の魂は一度に二回分の致死ダメージを受けたときに魂は二個減るのか」
運良く致死ダメージの攻撃が同時に二つ来てるからな
二筋の魔法の刃が俺の体を貫通した
突然走った痛みに思わず顔をしかめるが、1つ目の答えは「是」のようだ
元のステータスではこんな事態になりっこないのだから一目瞭然だ
2つ目と3つ目の答えはステータス画面を見れば分かる
俺はすぐさま確認する
もちろん、ティオールには見えないよう非表示にして、だが
解は「ステータスは元に戻り、魂は一しか減らない」と来た
さて、これにて実験終了!!
あとはこいつを片付けるだけだな
俺たちは緊張した面持ちで改めて向かい合う