No.15 戦闘・部下
戦闘描写入ります
「誰って聞いてるのよ。分かるかしら?」
部屋に入って動きを止めた俺を不審に思ったのか今度は取り巻きBが声をあげた。そんなに聞かれたら答えるしかないな。
「誰だお前と問われたら、答えてあげよう私の名を!!」
冷たく鋭い、一筋の風が流れた気がしたが俺は構わず続ける。
「この世に蔓延る悪を蹴散らす、希望の新人、霧明仁導だ!!」
「「「……」」」
なんで、ここで白けたんだ? 少しくらい笑ってくれても良いじゃないか。
「まあ、簡単に言うと……お前らを捕まえに来たんだ」
そう言って俺は手に持った刀を抜き放つ。鈍い紅殻色の刀身がランタンの光に反射した。
「プッ……ギャハハハハハ!! 何いってんだ、コイツ!!」
そして、ティオールは突然噴き出して笑い始めた。俺が姿を見せたときから油断も隙も無いくせに、顔には満面の笑みを浮かべ腹を抱えている。
「何がそんなに可笑しいんだ? 俺はこの刀を抜いただけだぞ」
「そりゃ笑いたくもなるんだ。刀は刀でも木刀、馬鹿馬鹿しいにも程があるんだ。そんなわけだから……黙って殺されるんだ」
取り巻きAとBは苦渋に満ちた顔でこちらに走ってきた。その顔は早く逃げろとでも言いたそうだが、こちらも引く気は一切ない。
Aが棍棒を振りかぶる
それを右に受け流し、背中に一撃打ち込む
〈金剛〉を使用してたからすぐ起き上がるだろうな
この間に、Aの後ろに居たBは俺に迫っている
Bの武器は剣のようで既に俺を上から叩き斬る姿勢に入っている
俺は木刀の柄と、刀身が横一線になるよう持ち受け止める
何とか衝撃を腕と足で殺し、剣を押し返した
押し返したは良いが、木刀が抉れている
Bは驚いた様子だったが、一度大きく後退し、今度は剣を突く形にして走ってくる
後ろではAが棍棒を振りかぶりながら既に俺の近くまで走ってきている
Bの方はあと少し時間がありそうだ
俺は体を半回転させ追撃する体勢に入る
Aの振りかぶった棍棒を今度は刀身が右下から左上に切り上げるようにして棍棒に当てる
木刀の先端辺りで膠着状態になるが、どんどん力を込めていく
バキッ
Aは体勢を崩し俺がいる方によろめく
何故なら、今まで彼を支えていた木刀が折れたからだ
このタイミングで俺はひょいと避けた
俺が今まで居た場所にはAが、俺が今まで居た場所の後ろには剣で突く構えをしたBがいる
数瞬後、BはAの心臓辺りを刺していた
Aの口からおびただしい量の血液が吐き出される
あ、こりゃ剣が肺に刺さったかな
AB両名が唖然としている
「あれ、俺じゃなくて彼を刺しちゃったんだね。早く治療しないと死んじゃうよ」
「な、なんで……〈ルー…ッッ!」
Bはスキルを使おうとするが直前でやめた
ティオールがBを睨んでいる
もしかしたらスキルを使うなとでも言われてるのかもしれないな
「なんでスキルを使わないの? 今ならまだ間に合う」
「でも……これは頭に使わないといけないのに……」
やっぱりそんなところか。もう一押しかな。
「なあ、今から俺は頭を倒すけど。アイツとそこの彼、どっちの方が大事?」
「?!〈ループ〉!」
彼女は、すぐさまスキルをAに使い応急手当をした。因みに、傷口に魔力を纏わせることで、止血や相手の回復力上昇などが出来るようだ。
しばらくするとAの出血は殆ど止まっている。
BはAの側で号泣し始めていた。
「さてと、次はあっちかな」
俺はティオールの方に向いて、死の宣告を告げた