敗戦
今回短いです。
直定を治療したのは、異人の男だった。名を、アントクというらしい。
青涯を蘇生させた時と同じく、迅速に手当てを終えたアントクは、呆ける初に「むずかしい」と告げた。
「弾、とりだす。むずかしい。きんにく、あいだ、刺さってる。
弾さわる。この人、とてもキケン」
アントクのたどたどしい日本語に根気強く付き合い続けた結果、判明したのは、決して思わしいとは言えぬ直定の容態だった。
腹部に刺さった弾丸は、筋肉の間に入り込んでいる。摘出しようとすれば、重要な筋肉、神経を傷つける可能性が高い。また、麻酔が存在しない状態でそんな大手術を行うのは、あまりに危険性である。
結局、止血と痛み止めの薬を処方し、傷口を縫い合わせる以外にできることはない。
直定を館へと運び、悲しむ虎丸や華たちを前に、初は途方に暮れた。
二人になんと声を掛ければいいのか? どうやって慰めればいいのか?
幸い、やらなければならないことは山ほどあった。
戦の後処理に、警戒体制の見直し。三好軍と戦うために必要な物資の収集と、輸送。
倒れた直定に代わり、初は小夜と共に、次々と舞い込む仕事を片付け続けた。手を動かしている間は、目の前の現実を忘れることができた。
まともに睡眠をとる間もないほど働きづめ、ようやく事態が落ち着いたのは、戦いから十日後のことだった。
寝不足で重い頭を抱え、ひと眠りしようと寝室へ向かっていた初のもとに、その急報はもたらされた。
「申し上げます! 貝吹山付近にて行われた戦にて、畠山家は敗北! お味方は総崩れにございます!」
「阿波守様以下、安宅家の者共は奮戦いたしましたが、敵の攻勢著しく。我らは皆、散り散りに──」
ふっ、と足元が抜け落ちる感覚。
意識を失った初は、そのまま深い眠りの中に落ちていった。
ごめんなさい。先週は時間がなかったうえに、風邪までひいて酷い目に(~_~)
ちと短いですがご容赦のほどを<(_ _)>
年の瀬も押し迫ってきましたが、皆さま体調だけはお気を付けください。
次回の更新は、12月18日です。