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021 宣戦布告

◆□◆021―A 呪いのビデオ?


「『NEWSリターニーズ』をご覧のみなさん。<ひなたママ>でしゅ。今日はみなさんに残念なお知らせでしゅ。『NEWSリターニーズ』は、今号をもちまして廃刊となるでしゅよ。もう各種メディアでご存知の方も多いでしゅよね。大阪大戦に巻き込まれて大ダメージを受けたでしゅよ。ひなの横に並んでるのが、悪い子ちゃんたちでしゅ」

カメラがパンして猿轡された上に目隠しされ、手脚まで縛られた青年が映る。


「こちら側から、通天閣をビーム兵器で狙撃したあほ兄ちゃん。道頓堀を火の海にしたアホの子。大阪城公園の本丸叩き崩そうとしたナニワのドアホ侍。以上3人を公開処刑していくでしゅー。拍手ー、ってひなまで手を縛ってたら拍手出来ないでしゅよ」


「アホゥ。お前がワシら裏切ろうとしとんのは、わかっとんのじゃぼげぇ。いや、ワシは天使のような優しい男やからなあ。許してやってもええ思うたんやで」

カメラが手持ちに変わって揺れる。

「でも、波羅君がな。裏切りモンを許したらあかんやろ言うんや。組織の幹部が裏切りモンやったら組織成り立たんいうてなー」

幼女の蒼白な顔が大写しにされる。


「名前出すなっつうの」

画面の外から声がする。

「<薔薇蜜>の方で呼んだ方がえかったか?」

カメラが乱暴に振られ、背後を映す。学生服のように黒い服の男がフレームインした。その横に拷問器具のようなものが見える。


黒服の手に押し返されて、再び幼女が映る。

「ひなは、ひなは裏切ってないよっ!」

「今は、やな。まあまあ、それはええんやて。でもな、組織には必要なんや。血の粛清ってヤツがなあ」

頭を撫でられて一瞬緩んだ幼女の表情が再び凍る。

キャップ帽の男が自らフレームに入る。

「<Shavetter>をご覧のみなさん。<洒落神戸U2Me>ですぅ。お初にお目にかかりますー。こんにちはー。今日は<洒落神戸>の名前だけでも覚ーえといてーね」

「芸人か」

「ツッコミはいらんっちゅうねん。波羅君」

「名前出すな」

「<Shavetter>のトレンドワードに『大阪 天使』上がってきとりますなー。こんなんバズるとは、なんか照れますなあ。わしが大阪の街に天使を降臨させたんですわ。みんな見てくれましたかー」


キャップ姿の男は自分のスマホの映像を見せた。誰かがアップした映像だ。雲の形のようにも見える何かが道頓堀の水を巻き上げて火の海を鎮火させるところである。

「合成? トリック? ちゃうちゃう。わしらの目にははーっきりみえとるんやがな、この魔法で作られた天使の姿が」


再び幼女の顔に映像が戻る。そして、捕らえられた3人を映す。

「大阪さんには受け入れてもらえんかったけど、わしら大阪の街は愛しとるでー」


捕らえられた3人がジタバタしはじめた。幼女が悲鳴を上げた。拷問器具らしきものが動きはじめたのだ。先端にドリルがついていて、着実に幼女の腹部を狙っている。一瞬だけその様子が映る。


「今日の配信は、これからわしらが全国区になって人助けをしていこうっちゅう宣言と、それを邪魔するヤツらがどうなるかっちゅうのを見てもらいたいわけですわ。第一弾『裏切りモンの末路』。観念せい、<ひなたママ>」


そこから映像は<ひなたママ>の縛られた脚だけが映っていた。音声は誰のものか分からぬ悲鳴で音割れしていた。両足で床を叩くように動かしていたが、しばらくしてパタリと止まった。

その後も悲鳴は止まらなかったから、間近で様子を見ている捕らえられた3人組の声だったのだろう。


「グッロ!」

不意にカメラが動き出し<ひなたママ>の背後に回る。<ひなたママ>を貫通したドリルは、椅子の背もたれを破壊して止まっている。

3人組の悲鳴が大きくなった。どうやら別室に連れて行かれそうなのを泣き喚いて拒んでいるらしい。力づくで<洒落神戸>の仲間に運ばれていく様子が映る。


「これから組織強化を図るにあたり、わしらの名前も必要やろうと思うんやけど」

「唐突やなあ」

「裏切りモンは処分したからもう別の話してええやろ。それとも何や、波羅君。3人組処刑するところまで配信させる気ぃかい」

「そりゃあもう、ええわ」


<洒落神戸>を名乗る男は<ひなたママ>の斜め背後にカメラを置き、波羅という男と漫才でもするように並んで立った。<ひなたママ>を貫通したドリルの先端が鈍く光った。


「波羅君、うちらの名前が必要やないか思うてんね。どないな名前がええやろねぇ」

「ようこの空気の中で、そのテンションでいられるなー」

「終わったこと振り返ってどないすんねん。人間、前向いていかなあかんですよ、波羅君」

「名前やめぇて。しかも前向いたら、口から血ぃ吐いて白目向いた<ひなたママ>おるし、こわいわ」

「んなことええからチーム名考えてほしいんや」

「ええんかい。まあ、ええわ。ほな、<NEWSリーターニーズ>でダメなん」

「じゃあ波羅君、うちらに逆らうチームやって」

波羅という黒服が、洒落神戸を名乗るキャップ姿の男を向いて立つ。一度フレームから出た洒落神戸が波羅に粋がった様子で近づく。


「何じゃきさーま。どこのもんじゃーい」

滑稽な調子で誰何の声をあげる波羅。

「我らは<NEWSリーターニーズ>。毎朝みなさんに新鮮な話題とお得な情報をお届けする者」

「ちょいちょいちょい待ち」


「なに? なに?」

ふたりはカメラに向き直る。

波羅が首を振る。

「無い。それは無い」

「何がやの」

「今から戦おうっちゅう相手にお得な情報お届けしてどないすんの」

「あかんの、波羅君」

「そーれーはーないやろー」

「ほれ、<NEWSリーターニーズ>じゃあかんのやって」

「ホンマやな。で、なんかいい案あんの?」

<洒落神戸>は拷問器具を片付けはじめたので、波羅は返答を待った。<ひなたママ>を貫通していたドリルの先端が映像から消える。硬直しているのか<ひなたママ>は椅子に座ったままの姿勢だった。

「よっこいせ。こうやってわしらは粛清という犠牲を払って道を歩みはじめたんや。まっとうな道を歩くことはでけへん。それでも綺羅星のように輝いていたいわけや。そこで考えたのが<ドロップアウトスターズ>や」

「めっちゃええ名前やん。テンション上がるわ」


波羅は手を叩いたが、<洒落神戸>はそれを手で制する。

「ところがひとつ問題があるんや」

「なんですの」

「せっかくわしが考えた名前なのに、勝手に使てるやつがおるんや」

「そら、先約がおったっちゅうことやないかい」

「アホ抜かせ。わしが先やったっちゅうねん。ついさっきや。そいつらが世界eスポーツ連盟に登録したんわ。こっちはもっと長いこと考えとったっちゅうねん」

<洒落神戸>は指を天に向けた。


「どっちが<ドロップアウトスターズ>の看板を掲げるのに相応しいか勝負しに行こうやないか」

「逆恨みいうかとばっちりいうか」

「なんや波羅君は、反対かい」

「いいや。相手を気の毒に思うただけや。で、その偽<ドロップアウトスターズ>いうのはどこにおんねん」

「九州や」

「九州!? そらまた遠いなあ」

「ドドッピヨン薔薇蜜ならひとっ飛びやろ」

「んなわけあるかい」

「待っとれよ九州!」

二人は漫才を終えて満足したかのように笑いながら部屋を出ていった。


画面にはしばらく<ひなたママ>の後ろ姿が、写真のように映っていた。

変化があったのは三十秒も経たないうちだ。

低い唸り声のような音声が混じりはじめた。段々と大きくなりハッキリとしてくる。呻き声だ。

<ひなたママ>のすべすべとした髪が揺れはじめた。

その頭がガクンと揺れた。

椅子を吹き飛ばして、不自然に肩を吊り上げて立ち上がった姿が一瞬だけ映る。

カメラを載せていた台に椅子が当たったのだろうか。カメラが落下し、どこを映しているかわからぬ横向きの映像になった。

激しい落下音の後も呻き声は続いた。


そこから11秒後、よろめくように歩く足が映る。白い靴。白いソックス。腹部を貫かれ、断末魔の苦しみを伝えていた<ひなたママ>の脚だ。

低い呻き声とともに、徐々に近づいてくる。

カメラが踏みつぶされて、そこで配信が終了する。


これが<Shavetter>にアップされた謎の集団の配信映像である。

なお、ユーザーから「暴力的である」という通報を受けたため、現在では「この配信は視聴することができません」と表示されている。



◆□◆021―B 感染


「あの、あの、あの。分からないから開けられないです。開けられないですー」

「いや、だーかーらー。あんた、イタドリちゃんなんでしょ。ちゃんと書き置きしてるってもちもちプリンちゃん言ってたよ」

矢車喜久恵の家の玄関ドアを挟んで、板取花純美と苗代一悟が押し問答を繰り返している。


喜久恵の出勤時間になっても花純美が目を覚まさなかったから、世話人として一悟を呼んだのだ。

一晩明けて一悟の方から喜久恵に連絡があったのを、渡りに船と家にやってくるように頼み込んだのだ。

「だーかーらー。こうやってあんたのためにご飯買ってきたんじゃない! 重い重い重いー」


それからさらに押し問答を繰り返し、ようやく花純美は一悟を部屋に上げた。

書き置きにもきちんと喜久恵の字で、一悟が朝飯を作りに来る旨が書いてある。それでも初対面の人物と二人きりというのは実に気まずく思う花純美である。


そんな花純美の表情を察して早速料理に取りかかる一悟。僧衣のような服の袖を腕まくりして手際よく料理を作っていく。

「イタドリちゃん、なんか食べたいものある? ボク、何でも作れるよ。買ってきた材料でできないものだったらごめん」

一悟は野菜を手早く切りながら話しかける。

「ないです。全くないです。あの、なにかお手伝いできることありますかー。お手伝いー」

「いいよ、座ってて。ゼリーでも食べとく?」

「あい」

「一個よ。食べ過ぎてボクの料理食べられなくなったら困る」


花純美は異世界では、<料理人>のスキルを有し料理を作っていたが、得意になったものといえば「黒焼き」くらいで、作る才能はからっきしである。自覚もあるので大人しくゼリーを口に入れる。

「なんかお母さんみたい。お母さんみたい」

花純美が言うと、一悟は少し照れたような表情を浮かべた。

「ふふん。じゃあおちびちゃんにとって桜童子はパパ?」

「おちびじゃないよー、ドリィだよー。むー。んとねぇ、にゃあたんはぬいぐるみのときはパパ。人型のときは、体操のお兄さん」

「ふふ。なんだそりゃ。じゃあボクは桜童子(チェリー)ちゃんの元カノだから、義理のお母さんみたいなもんでいいな」

「いいかどうかわかんないけどいいよー」

「おちびは食い物口に入れた途端ガード下がるな。男関係気をつけなさーい」

「大丈夫だよ、わたしね、人妻だし」


包丁が滑って、カタンとまな板が鳴った。

「あっぶね。手を切りかけた。え、おちび、人妻?」

「そだよ。旦那しゃまいるの」

「じゃあ、ボク来る必要ないじゃん。まったくー、もちもちプリンちゃんったら」

「あ、あ、でも、修行中なの。修行忙しいのー」

切った食材を鍋に手早く投入して火を入れる一悟。そして、居間に戻って腰を下ろす。


「次の料理作るまで三分間。旦那のこと話して。何? 僧侶」

茶色の髪をふわっと払う一悟に、まだビクッとしてしまう花純美。

「ちがうよちがうよー。【ドロップアウトスターズ】の一員なんだよー。きっと今頃<アンサイジング>の練習してるはず」

「なんだ、彼氏もチェリーのちゃんのお仲間かい。<帰還者>ってやつだろ。じゃあボクの息子みたいなもんか」

「かなあ。旦那しゃまはカード作るのが上手いの。でもわたしがお姉ちゃんだから、わたしがいなきゃダメなんだよー。わたしが魔力あげたらカードいくつも作れるの」


一悟が眉を上げて微笑みながら惚気話を聞く。

「えっちした?」

「ぶあ! お母さん! 聞いちゃダメ、聞いちゃダメだよー」

「したのね。いいなあ」

「あの、あの」

「なあに」

「にゃあたんとも、したのかな。したのかな」

「当たり前じゃん。元カノだもん」

酒焼けしたような声だが、とても艶のある声に花純美はドキドキとした。

「ハイ、三分。次の料理終わるまでボクが濡れるような話用意しといて」

「ムリムリムリムリ。やっぱりわたし手伝うよ」

「じゃあ、玉子三つ割って」

「了解、了解ー!」


手早く割ったものの、殻だらけで一つは黄身が割れてしまった。それでも手伝えたことが嬉しくて満面の笑みでボウルを手渡す。中味を見て手首でコツンと花純美のおでこを叩いたが、その後で一悟はたくさん撫でてやった。


オムライス、豚肉と根菜のスープ、野菜サラダが食卓を彩る。カップラーメンが主食の花純美には豪勢な料理だ。夕べから何も食べてない花純美は目を輝かせた。

「ヨダレ、拭きな。ティッシュどこだろ」

「大丈夫大丈夫ー! 食べていいのー」

「どうぞ。そのためにボクは来たんだ」

「お母さんありがとう! いただきまーす」

どうやら花純美の中で一悟はお母さんキャラに認定されたようだ。一悟にとってもまんざらではないらしく、愛娘でも見るかのような眼差しでガツガツと料理を平らげる花純美を見ていた。


「げふっ」

「取って食やしないよ。ゆっくり食べな」

「お母さん、お腹減ってない?」

「ボクは、ホエイプロテイン摂るからそれでいいの」

「ほえ?」

バッグからシェーカーを取り出して、ガボガボと振ってみせた。

「女ホルのせいで太りやすいんだ」

「ほる?」

「やけぼっくいに火がついたから美容熱まで再燃したってこと」


ふうんと唸ってまたガツガツと料理に貪りつく花純美。鼻でため息をつく一悟。

しばらくもけもけと無言で食べていた花純美が唐突に喋る。


「にゃあたん好きすぎて綺麗になりたいってこと!?」

不意をつかれて一悟は目を丸くした。そして、耳まで赤くした。

「ごほっ」

「口いっぱいに入れたまま喋るから」

いそいそと茶を注ぐことで、表情に出してしまったことをごまかそうとするが、一悟の手は震えていた。どうやら蔵人にしても一悟にしても、自分の感情を探られることに弱点があるらしい。


「ごほっ。でも、にゃあたんにはレンレンがいるよー?」

その頃には自分の感情をきちんと糊塗して、余裕のある大人の女の表情を一悟は見せた。

「そこはほら、チェリーちゃんが望むなら、愛人だって欲望処理係だって構わないし」

「ダメだよーダメだよー」

「あら、お堅いのね」

「鉄壁だよー。ガッチガチだよー。でもね、でもね、お母さんも幸せにならなきゃダメだよー」

花純美の言葉に再び情緒を翻弄される一悟。不意に立ち上がり、キッチンで大きく深呼吸した。

「おちびちゃん。おかわりいる?」

「ううん。お腹いっぱい」

「ボクも家族ほしいなあ。チェリーちゃんはホントいい家族をもったよ」

「え」

ようやく感情のコントロールを終えた一悟は、花純美の隣にストンと腰を下ろした。そして、すっと太ももに手を置いて身を寄せて囁いた。


「ボクを家族にしてくれ」

急に迫られて、今度は花純美が取り乱す。

「わた、わたしには、旦那しゃまがいて! お母さん、わた、わたしたちの娘にするには、おっきすぎるし! その、あの!」

すっと身を引いて一悟は言う。

「そうじゃなくて、ボクを君たちの仲間に入れてほしいんだ。そう、チェリーちゃんの作った家族にね」

「ど、ど、ど、どういうこと。仲間っていうなら、もう仲間なんじゃないかな。イルカお義姉さん、旦那しゃまのお姉ちゃんも【工房ハナノナ】には入ってないけど、仲間って言えばもうすっかり仲間だし」

「入れてよ、【工房ハナノナ】」

「ギルドの加入は、にゃあたんか、レンレンの仕事だから伝えとくけど、それは異世界でのギルド名で、今は<ドロップアウトスターズ>っていうの。<ドロップアウトスターズ>!」

「じゃあそれで」

「でも、基本は<帰還者>の集まりだよ。<帰還者>」

一悟は髪を掻き上げると、ずいっと顔を近付ける。

「その、<帰還者>ってやつになりたいの」


「むりむりむりむり。異世界戻れないもん」

「ぷにぷにプリンちゃんから大まかな話は聞いてるよ。あんたたちは第三種生命体に寄生されて<魔力細胞>を持つことになったのよね。つまり、言い方を変えれば『異世界由来の病を発症した』ってことにならない?」

「んー。んー。んー。あ、そうか。そうそう、そんな感じ」


一悟は立ち上がった。

「それをボクに<感染>させられないかって言ってるの」


この件は、すぐに蔵人に相談するべきものであった。他人に<アンサイジング>の能力を付与することの危険性や、その後の影響について即座に言及してくれただろう。

何より元カノを自称しているくらいだ。厄介がって認めるはずもない。それでも花純美が一悟に協力したのは、単純に言えば料理が美味しかったからだ。


信頼した相手の提供するご飯は美味い。それが花純美にとって何よりの判断材料だ。

ただ、花純美はカード作りに関してはとても下手だった。本人の資質は、<肉体強化>のカードばかりではなく、カードの並行使用や作成にも関係があるらしい。


「おかしいなあ。全然<擬神化>できないよ」

花純美に習った方法で、スプーンを<擬神化>しようとしたが一悟の手の中にあるスプーンはスプーンのままだ。

「この<感染:アフェクト>のカード、感染力弱くね」

「スプーン舐めないで、私の使ったスプーン」

「空気感染も接触感染もダメ。これでダメなら血液感染か性感染しかないからな。覚悟を決めて」

「えー! えー! えー! 私が覚悟するのー!?」

「ボクだってチェリーちゃんを護れるようになりたいの」


うーうー、と唸ってそれならばと頷く花純美。

「あ、でも、でも、ほら、魔力を渡す時は手をつなぐから、ね、今度手をつないでから試してみて」

「おちびちゃんの素直さ、ある意味ヤバいね」


手をつないだまま<擬神化>に挑んだが効果はなかった。

「あの、あの、あの、血、飲む?」

「飲まない。おちびちゃんを抱く!」

「ほら、ほら、ほら、潜伏期! 今、潜伏期っ!」

「とりあえず抱いてから考える。さあお脱ぎ。お布団入るよ」

そういうとムササビのように布団を広げて追い回す一悟。キャッキャと逃げ回る花純美。

「だーかーせーろー」

「むりむりむりむり」


玄関まで逃げると、そこには喜久恵が帰ってきていた。

「だーかーせ、ごふっ」

「レンレンおかえり。あ、これは、そのね」

「おや、むちむちプリンちゃん、おかえり」


「あんたたち、何暴れてるの。ご近所の迷惑考えなさいっ!」


このあと滅茶苦茶叱られた。

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