第1章 2節 ただ、社畜っつっても、道のりすら過酷らしい。
誰も待っていない続編です。
まだ残酷な表現は出ません。
死んだはずなのに就職したのか……。
楽しい楽しい社畜ライフ(んなわけあるかい)が待っているのか。
神様(の使いみたいな人)はさっきの用以外は何かするつもりではなかったらしく、俺が俺の社畜人生スタートを受けて絶望していた間に、ビルの住所、日付が書かれた紙、「それでは」と一言、を残してどっかに消えた。
嗚呼。死んで、地獄にも行かないとなったら楽園みたいな生活できると思ってたのに。
なんなんだこの世界!地獄あるのに天国ないとか、神様忘れ物してんじゃねぇの?今すぐ作り直せ。これ『世界創造法』とか何とかの法律違反だろ!
さて。
言われるがままに現世に戻ってきたけど。
金ないし。すみかないし。実体ないし。
……どうやって生きてこうかなぁ……。
迷ってても仕方ないね。とりあえず紙に書かれてるビル目指すか。
えっと、名前は「ヴァルハラビル」。
絶対仕事についての何かがあんだろ。名前神っぽいし。
まぁ、向かうか。
地図を見る。
驚く。
2度見っ!
遠っ!!!!!
現在地、俺の住む町、ネンザム。この、ターラントイス王国北東部。ど田舎。周りは大森林でございます。
目的地、ここからおよそ北東に72キロ。クロセーという町。国境を越えないのが救いか。この国馬鹿でけぇからな……。
移動手段としては、飛行魔法使えればそう遠くないんだけど、なんたって魔法が絶望的に使えない俺は初等学校で習う、基本中の基本である飛行魔法すら使えない。使えるには使えるけどどこに飛んでくか分かったもんじゃない。となると歩き。
……うん。遠いよ。何時間かかんだよ。何日かかんだよ。
その間野営且つ需給自足とか。死ぬわ!(死ぬのかな?)死後の死生観はどうなっているのかわからんけど。
死ぬこと覚悟で進まなきゃ、いや、違うな。今まで通り「生きれば」いいのか。
まぁ誰にも届かねぇ独り言言ってねぇで動こうかね。
今の自分の状況を確認しよう。
・装備。死ぬ前と同じみたいだ。愛刀もあれば回復薬も毒消しもあるらしい。
・金品。死ぬ前と同じ。財布あるけど、金は干し肉買える程度。すくねぇな。
・食料。ゼロ。一番の問題はこれか。ない理由は死後に生物が持ってこれないからか。分からないが状況がまずいことは確かだ。
さすがにかの門の下人のように追い剥ぎする訳にも行かねぇな。それやったら今すぐにでも地獄に送られる。
コンパスはあった。とりあえず北東に進んでいればいつかは着く。しかし俺はぼっちだ。今は饒舌だけど、それは心の中でだけ。ピンチの時助けてくれる人はいないし、ほぼ1文無しで食料なし。完全にピンチだ。この状態で進んでも、地方に進めば進むほどにコミュ障俺氏が購入できるものは少なくなる。今のうちに……。
――――俺は今重大なことに気がついた。
いや、それは今気づくには遅すぎた。
俺生きてる人から見えねぇじゃん……。
どうすんだよおい、金あっても何も買えねぇじゃん!
いや、でももしかしたら見えてるのかも、神様そんなに意地悪じゃないかもしれない。
今、1組の親子が俺をすり抜けて売店に向かっていった。それによりもしかしたら、は瓦解し霧散した。
見えてないんだよね?声聞こえないんだよね?じゃあ幼児退行して叫んでいいよね?
「どおぉしろっっつぅんだよぉぉぉおおお!!!!クソゲーじゃねぇかああああ!!!!」
その場には静寂も反応も生まれない。なぜなら認識されていない。今の叫びは虚空に消えたに等しい。
という訳ではないみたいだ。
「うわはははっ!何叫んでんだこいつwww」
マントの男は笑った。
反応されるはされるで悲しいし恥ずかしいんでやめて欲しかったんですけど。
「俺が見えてるん……ですか?」
半信半疑。
見えていなくて、たまたまだったらもう1回叫ぶところだ。
「ああ、見えてるよwww黒歴史誕生の瞬間をしかと目に焼き付けましたよwww」
非常にむかっ腹のたつ俺の存在の肯定だった。
見えてるやつがいる。多分こいつも死人。俺と同じ末路か望んでここに来てるかだな。
さぁ、俺のコミュ障、固有スキル発動!『コミュ障に性別の壁なし』!!!コミュ障の人は誰しも持っている固有スキルのひとつ!さっきの神が女だから話しかけられない、今は男だから喋れる。そんなことは本当のコミュ障には通用しない。誰であろうとなんであろうと話しかけられないのが真のコミュ障、真のぼっちなのだ。
だから、マントの男はひたすら笑うし、俺はひたすら黙ったまま立ち尽くすのみ。
しばらく経ってみるとそこは沈黙が支配している。
しばらくの静寂。
痺れを切らしたようだ。
「で、どうしたんだ黒歴史くん?wwwなんか困ったことでも?」
……救いの手だ!!!
さあ縋れ!俺!
「今からヴァルハラビルという事務所?に向かいたいんですが、食料がないんです。」
それ以降、言葉が継げない。
これが俺の限界だ!
「ふむ、なるほどね。クロセーまで行きたいと。」
さっきまでのおちゃらけたムードとは一変、真剣な面持ちで考え始めた。
「飛行魔法で行けばそんなにかからないでしょ?それだったら食料いらなくないっすか?」
俺はそれに無言を返す。「察しろ。」と言わんばかりに。
それを見て彼は……。
察した。
それ以上のことを彼は何も言わず、
「なら、俺の食料、ちょっとだけ分けてやるよ。」
とだけ言った。
気遣いどうも。めっちゃ痛いです。そして食料を受け取る、
干し肉一欠片。
「ありがとう……。」
素直に元気に礼が言えないのはコミュ障をこじらせてではない。
食料がすくねぇ。本当にちょっとだ。マジか。
……ただそれだけの理由だった。
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