汝灰色の汝、我涙拭う者、かの真紅の不死鳥が来る
どうすれば赦されるの。
この責め苦から。
どうすれば逃れられるの。
この絶望から。
助けて助けて助けて。
私はここよ。
私はここにいるの神様。
神様、お願いだから。
お願いだから助けて。
助けてよ、助けて。
私が何をしたって言うのよ。
どうしてこんな、こんな絶望を私は。
ねえ、助けてよ。
誰でもいいから。
私を助けて。
錆色の蕀でがんじがらめの私を。
憎い? 憎いの?
私を憎んでるの?
世界は私を憎んでるの?
もう辛いよ。
やだよ。
あっアアアアアアアア、ハハハハあれは不死鳥さまね。
クキキキキキキキキ、愚かな者共め。
不死鳥さまに頼んであなたたちを皆殺しにしてあげるから。
神様あなたもね、私の体液でドロドロに汚してやるよ。
アハハハハハ、ほらぁ!見てぇ! 私ぃ、胎児を孕んだのよぉ。
みぃなごろぉしぃ、フフフフフフフフフフフフフ。
あっ痛、産まれぇるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ。
ギチギチギチ、キェェェェ、オアアサン、オアアサン
ハアハアハアハアハアハァ、さあ、みんなを、コロしなさい、愛し子。
オアアサン、アアアア、んぐ、あーあー、では手始めに貴方を殺すことにしよう。
ど、どうして私は母―――――ぐぅぇあぐぎぃぃぎぐぼぉああああぐぎにぃぬぬわぁんで、ぬわぁんでぇぇぇぇぇぇぇ。
べちゃぺちゃ、ああ不味い。
母上、貴女は人間を殺せと命じられた。
なら貴女とて例外ではない。
ぐっ!何だ・・・・・これは・・・・!
まさか母上!?
ヴっあああああああ痛い痛い痛い痛い痛い!
バア、こんにちは私ですよ愛し子。
貴女は私が喰らったはずッ!
だ・か・らァ、孕んだのよ、アハハハハハハ私は永遠を手にしたわぁ。
い、いやだぁ食べないでぇ、食べないでオアアサン。
ズルズルズル、べちゃべちゃ、あらこんなに前を大きくして・・・・・マセたガキね、死ねば良い。
ああイヤだぁ、たべられうのわぁ、うっ。
シネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネ。
大人しく喰われてろ、クソガキィ。
ああ、不味い。
キキキキキキキキキキ、神様、私はもうてめぇと同じだよ。
原罪を背負いながらにして永遠を手にした。
罪を知りながら不老、罰を受けてなお不死。
次に喰われるのはてめぇの番だ。
私がそこにたどり着くまで、せいぜい喘ぎまくって、無様に早イキしちまわねぇようにケツの穴しっかり閉めてろよ、このホモ野郎。
ハハハハハハハ、・・・・・・ぐぼぉぉぉぉォォォォ!
やあ、母上。
な、なんで、てめぇは喰ったはず!
ングゥガァァァァ、内側からぁ、喰われちゃううううう!
母上美味い旨いなぁ・・・・・あっイグっ!
べちゃべちゃ、アハハハハハハハハハハハ。
母上は死ななきゃだめだ、そうじゃなきゃ救われない。
助けが欲しいって言ってたろ?
助けたじゃないか。
この上文句まで垂れるのか?
この売女が。
情けなく助けを乞いて、誰かが助けてくれるのが当たり前だと思ってやがる。
窓の外では愛想よく男に尻振って、内では外聞なく糞をモリモリ
出してやがる。
救いが欲しいだと?
なら大人しく死んどけ。
てめぇに居場所なんてねぇんだよ。
居場所を作れねぇてめえにはな。
自分を慰めるのは気持ちいいだろ、え?
私は不幸です。誰か助けてください。私だけがこんなに辛いんです。皆が悪いんです。ああなんて可哀想な私!
ハハハハハ、生きてりゃ辛いのなんてあったりめぇだろうが?
ハハハ、誰もてめぇみたいな糞にまみれた女に同情なんてしねぇんだよ。
ハハハハ・・・・グッフ、・・・・なんだ?
あああああ~キモチィィィィィィんぎイイイイ!
・・・・またか、またアンタか糞女ァ!
あああきもちぃ・・・・自分を蔑んでるやつの肉を噛じるのは最高の快楽ねぇ。
っツ! 痛てえなぁ、糞女ァ。大人しく胃液で溶かされろや。
倫理?論理?知らないねぇ。
てめぇらが語る常識なんて知ったことかよ。
私は助かりたい。
助かりたい。
地獄からねぇ!
私はね、不幸のお裾分けをしたいんだ。
引き摺りこんでやりたいんだ、私の絶望にね。
他人なんて知ったことか!
黙って助けりゃ良いんだよ! 善人ども!
くちゃくちゃ、ふふ旨いなぁ。
人間なんて皆死ねばいい。
不死鳥に喰われてうんこになっちまえばいい。
私だけこんな苦しみを味わうのは不公平。
もう十分でしょう?
はいはい辛い辛い、泣きました、喚きました、殴られました、焼かれました、引き裂かれました、怒鳴られました、犯されました、晒されました、狂いました、突き刺されました、孕みました、嗤われました、流されました、怨みました、呪いました、売られました、汚されましたね―――――――――――――だから何?
だから? だから十分じゃない!
・・・・・もう赦してよぉ、わたしだってこんなになりたくなかったよぉ。
綺麗でお気に入りの服を着て、休みの日には仲の良いお友達と遊園地に行って遊んだり、美味しいご飯を食べたりしてね。
そして、いつか運命の人に出会って、初めてはお姫様みたいに優しくしてもらって、私は感動で泣き出しちゃうの。
結婚して、赤ちゃんができて幸せになってそれから――――。
遅いな。
もう遅い、全て元に戻らない。
汚れなかった頃の、綺麗で純白の母上にはもう。
ああ―――――――――――――そうね、もう止めましょう。
もう、終わったことだものね。
ははは、あのね愛し子、私、もうお風呂にも入れないの。
身体中が痛くて痛くて仕方ないし、足の筋を切られたみたいでもう一歩も動けない。
おっぱいがね、この前半分に切られちゃったの。
多分もう貴方にお乳をあげられないね。
愛し子を授かるための子宮も、あの人の灰皿にされちゃった。
もう終わったこと、だよね。
人生、やり直せないよね。
消せないんだよね。
うううっ、あああああああああ!!!
もう、もう、二度と、うううっ、二度と私は、あの日溜まりに帰れないんだ。
そう、それが普通。
永遠に助けなどこない、たとえどんな苦痛を味わおうとも。
人間は不死鳥の様に孤独な存在だから。
ねぇ愛し子、私を殺してくれる?
あなたはもう不死鳥だ。
そう、そうね。
もう、母上を喰らうことはできない。
貴女が死を望んでしまったから。
ええ、そうね。
私は生きていくわ。
永遠に。