58話 後世、喜劇として
「アルナ領の国民はね、本当に小さな子供を除いて皆持ってるのよスキル【雪上歩行】を」
スキルうううう、
怖えええ、何だそれは!
雪国だから雪が積もってそれで雪の上を歩くからスキル【雪上歩行】を覚えたんだろうが無茶苦茶だ、
何だそのチートは!常識が覆るだろうが!
強いとか弱いって問題じゃねえだろ!そんなスキル持ってたらそりゃあ10歳未満でも戦力になるよ、
羽の生えた人間と戦うようなもんだろ、勝ちようがねえよ、
スキル1つで圧倒的な差が出来るじゃねえか、やばいぞこれ、ちょっとした事で簡単に覆るぞ戦局が、
「で、どうなったんだ?」
「ミネス騎士団とアルナ騎士団と合同でニコッテの町を解放している間に義勇軍が他の全ての町と村を解放したわ」
「アルナの義勇軍の死者は?」
「0よ」「0なの?」「ええ少し怪我をした子供がいたらしいけどポーションで治したから、義勇軍の被害はポーション3つだけと記録に有ったわ。因みにリベルの方は約15000の兵とミスリルソード12本ミスリルスピア3本ミスリルアックス1本ミスリルシールド2つミスリルアーマー4つ鉄装備の武器が16745本と兜4520個軽鎧が9784個重鎧が2985個後小手とか足当てとかが約12500個で、貴重なアイテムバックは23個も、矢が約18000本でポーションが54本で毒消しそうなんかの薬は1000個位で食料はおよそ2トン位で馬車が651台寝返り牛が729頭おびえた馬が1680頭その他もろもろ」
「詳しいな」
「ええ、うちの話だから事細かく記録に残ってるわ」
「その書物はちゃんとした軍の財政の帳簿だったから嘘は無いわよ」
「多少は横流しとかがあったとしても戦果が増えるだけで減ることは無いわ」
……圧倒的じゃないかアルナ義勇軍は、
「この話は歴史上最大の完勝としていろいろな国にも伝わっているわ」
「それに我が国の三大劇に数えられるほどの話よ」
「我が国の三大劇?」
「ええ、キノコ山のオリマ、アリシアストーリー、そしてこのミネス雪上歩行戦が我が国の三大劇と言われてるわ、それも最高の喜劇と言われてるわ」
「喜劇なの?」「そうよ喜劇よ、ミネス騎士団とアルナ騎士団の合同部隊とリベル騎士団の本隊とのニコッテの町の戦いはすごくまじめな話なんだけど」
「義勇軍とリベル騎士団遊撃隊の話は喜劇なのよ……例えばリベルの騎士団遊撃大隊長が『我はリベル随一の怪力ゴウワン将軍よおぉ、ちから8の【剛腕】持ちいぃぃ恐れぬならあぁかかってえぇ来おぉいぃぃ』と言った後に舞台の家の細工の上から子供達が『僕はレット♪』『僕ミスト♪』『私ナーシャ♪』と言って子供達が顔を出すの、そして『でこの子がリックね♪』と言っておんぶしている子を見せるのよ、そしたらゴウワン将軍が大激怒して子供達の立ってる家にミスリルのオノで一撃を加えるの、そしたらリックが大泣きして、ナーシャから飛び降りるのよ、その衝撃で家が壊れて雪崩になるの、でゴウワン将軍生き埋め、で死亡」
「その後に声だけの演出で『雪山で大声出すと雪崩が起きます』と」
……、
「こんな類の話を真面目なニコッテの町の攻防戦の話にちょいちょい入れてくるのよ、真面目な話の後に」
「で最後はニコッテの町で篭城されて、うちのご先祖様のロークス領主が『くそっ、篭城されては手も足も出ない、こちらは雪の積もった平原まともに暖も取れんぞ、一時撤退するか、特攻かますかしない、このままでは時間とともに不利になってゆくだけだ』と言って、撤退か特攻かで言い争っている横で子供達がかまくら作って暖をとれる様にしたり、子供達が丸太でソリ遊びをして材木を集めて来たり、終いには子供達が『雪下ろししないのかな?』『そうだよね、あんな丸っこい屋根の家じゃ……』と言ってる最中に、雪の重みで敵の大将がいるニコッテの町の領主の館が潰れてリベル騎士団が壊滅するの」
「そして声だけの演出で『雪国では家に積もった雪を下ろします、でないと雪の重みで家が潰れます』と」
「最後にリベル騎士団遊撃隊の被害をおどろおどろしく説明して、アルナ義勇軍の被害はあっと叫んだ後、ポーション3つ♪って軽く言うの、で終わるのよ」
「嘘みたいだけどこの話結構本当の話なのよ、子供達だけで戦った風になってるのは脚色だけど、本当は義勇軍2万がばらばらに同時攻略したのよ、だけどゴウワン将軍の話に至ってはゴウワン将軍の名乗りで雪崩が起こった、というのがどうやら本当の話ぽいのよ、流石にそれじゃあ可哀想だからって家をミスリルのオノで砕いた為にに変えたらしいわ」
「雪の重みで伯爵家の館が潰れてリベル騎士団のトップ達が死亡したのも本当だし、丸太を集めるのに子供がソリにして運んだも本当だし、かまくらも本当だし、リベル騎士団遊撃隊が寒いからって暖を取るために大量に薪をくべて火事も本当だし、寒いからって換気もせずに窒息死も本当の話だし、酒飲んで外で寝て凍死も本当の話だし、ランブルベアの巣に潜り込んで騒いでせっかく冬眠中なのに起こして殺されたり、迷子になって凍死に至っては最初に1個中隊が迷子になってそれを探すのに中隊を6隊送って更に6隊送ってで全滅したし、普通に毒キノコ食べて死んだりとか、リベル国には生えてないキノコだけど普通知らないキノコ食べる?」
事実は小説より奇なりか……、
自然には勝てないよ、後こっちの世界の笑いのツボが分からん。
「話変えるが正規のアルナ騎士団は【雪上歩行】を持ってないの?」
「ええ、持っていたのは全体の5%位、若い子達ばかりだったけど今は皆持ってるわよ」
「当時アルナ領の子供達が板を靴に付けて遊んでいたらスキル【雪上歩行】を覚えたらしいの、でその有効性に気付いて庶民の間で流行ってたらしいの、それで騎士団も覚える為に雑貨店に発注しているタイミングだったらしいわ」
「今はデカかんじきという靴を履いて歩けば簡単に覚えられるという事が分かっているから、うちもその為にアルナ領に騎士団派遣して覚えて貰いに行くわ、ついでにスキル【雪ん子】も付くし」
【雪ん子】?ちょっとスキル【雪ん子】を調べよう、
【雪ん子】
低温度によるダメージを軽減
レベル1で3%軽減でレベル毎に3%上がった、
最大30%カットか、結構減るな、
軽減と耐性は別物か?
軽減がダメージ減らして耐性が食らう確率減らすのかな?
「そういう訳だからアルナ領には誰も攻め入らなくなったわ」
まあそうだろうな、単純に雪の国に攻め入るのはやめた方がいい、
地球ですらナポレオンが大敗しているのにこんなスキルのある世界じゃ完全な死亡フラグだ。
「アルナ領が他国を攻めたりはしないの?」
「しないわね、アルナ領が隣接しているのは同じ雪国のブリザ国」
「他に隣接しているのはミネス公爵領とマニャ公爵領とリディ候爵領、同じ国同士だから」
「何より戦争する食料が無いわ、ミネス領とマニャ領で援助している位だから、特にホットペッパー、うちがホットペッパー打ち切ったら凍死者が大量に出るわ」
「ホットペッパーって……スパゲティー食べ……」
「ええ、スパゲティーに入れるやつよ、辛くて体を温める効果のある食べ物よ」
「それを刻んでお水少し混ぜて布に含ませて凍傷した患部に当てると治るから雪国にとっては大切なもの」
「だから裏切れないし裏切らない、そんな事すれば全てが台無しになるわよ、せっかくご先祖様達が恩義に熱い最強部隊というこの国における最大級の名誉を誇っているのに、それに実際アルナ領の4分の1はミネス領で4分の1はマニャ領みたいな状態だから」
えっ?それ侵略もうし終えているって事?