111話 誘惑
「いやララさんやっぱりそれは駄目だよ」
「えっ?」とララさんが悲しそうな顔をした、そして皆の顔も。
「いやそのやり方だと手間が掛かり過ぎるよ、ミネス領って公爵領だから端っこだよね?」
「ええ」と怯えながら答えた。あれ?ララさんなんでこんなにビビってるんだ?
「じゃあ反対方面のライア公爵領に行くまで掛かる日数は?」
「中心同士なら普通に荷物積んでなら3ヵ月ね、馬を何頭も潰す覚悟の最速で1ヵ月半ね」
ん?テーブルに敷かれてる地図を見た。
ミネス領と書かれた場所から対角線のライア領との距離とヤアル領との距離を見比べた。
カークス叔父さんがここに来るのが2ヵ月、行って帰ってくるのを踏まえたら……
最速じゃねえか!馬何頭潰す気だよ。
「もしかしてカークス叔父さんが2ヵ月で来るのって最速でって事?」
「そうよ、一応跡取り候補の上位2名の結婚話での事だから、最速で来ないとしても3ヵ月位で来るでしょうね」と、
「そうか、だったら尚更結果を出しておかないといけないから、そのやり方は却下」と言うと皆が暗く沈んだ。
「それに人間を雇ったたとしても1人で1日に何個出来るのかって言う問題があるよね?」
「それは……」
「1人1日何個出来ると思う?」
「一刻で15個~50個位の様ね、でもMPの事もあるからランク3攻略を目指している人でも1日100個が最大ね」
「で、何人雇うつもり?」と聞くと、
バツが悪そうに「1000人とか?」と聞いてきた。
「その仕方でやっていけると?」
「無理です」とララさんが素直に返して来た。
「仮に出来たとしても1日10万個、10億の人間全員には1万日20年以上も掛かるよね」
「更に回復薬生産の事も考えたら何年掛かるか」
「じゃあどうするの?」とララさんが脅えながら聞いてきた。
「タダで教えれば良いんじゃない?」と言ったら全員があっけに取られた。
「何言ってるのよ、木のお守りですら一人に付き低く見積もっても金貨1枚で売れるのよ、我が国どころかこの星の住民全員が喉から手が出る程欲しい物なのよ、だから最低でも金貨6億枚は稼げるのよ」
金貨6億枚か、まあそりゃあそうだろうね、ある意味現状なら俺以外には作れない必須アイテムだから。
「よく言うよ、本当は稼いでる途中で作り方ばらすつもりだった癖に」と言うとララさんが驚いた。
「分かってたの?」と怯えながら聞いてきた。
「そりゃあこの世界の事考えたらララさんのやり方じゃあ時間が掛かり過ぎる」
「だからある程度稼いだら情報を漏れた風に装って皆が持てるようにするだろうくらい分かるよ」
そう言うとララさんが脅えながら「御免なさい」と泣き出した。
泣かなくていいのに、
「ララさんがやろうとする理由も分かってるから、別に怒っても無い、それどころか流石ララさんと尊敬するぐらいだ」と言っておいた、
「それにそれ安全策でしょ?」
「ええ……そうよ」とバツが悪そうに答えた。
「じゃあどうするつもりだったの?」
「それは普通に誘惑で……」と言い放ちやがった。
ロマンチストレベル6の誘惑だと!
「ほうほうちなみにどの様な誘惑ですか?見せて貰いましょうか」
「えっ?ここで出来る訳無いでしょ」と怒り出した。
「じゃああっちで」と言って引っ張って行った。
皆に見えない所迄連れて行きお願いした。
「本当にするの?」と恥ずかしそうにしている。
「ああ、この世界の住人がどんな誘惑するのか興味深いからね」
ララさんが恥ずかしそうにスカートをまくり上げた。
中の下着が見えた、完全に色気のないカボチャパンツを超えるドロワーズ?ってやつだ。
うん、そんなの見せられても……、
「ね、ねぇ、旦那様、わ、私……赤ちゃんが欲しいの、だから……ねぇ」と顔を赤らめてものすごく恥ずかしそうにしている。
いやそれは夫婦間での誘惑だろう、誘惑と言うかおねだり?と言うか夫婦の営みと言う義務の要求、
……。
「それは俺専用だよね」
「当たり前でしょ!」と怒り出した。
「いや俺以外の男性にするやつが見たいんだけど?」
「貴方以外に誘惑する気は無いわ」と普通に返された。
……、
うん流石ロマンチストレベル6。
根本の部分で誘惑をはき違えてるわ。
皆の所に戻って「複数の男性や別に好きでも無い男性を誘惑して良い様に使うってしないの?」と聞いたら皆が何があったか気付いた様で「あります」「ララ様は純粋なので」「お姉ちゃんには出来ないだけ」「リサもユウお兄ちゃんだけ♪」と言ってきた。
「じゃあ木のお守り、銅のお守り、鉄のお守りと回復薬や異常状態直しの薬は一番簡単なのはばらす予定で」と言うと皆が驚いた。
「良いの?金貨6億枚なのよ、全てを牛耳れるのよ」と、
「それよりこの世界の住人が幸せに暮らせる方が良いからね」と答えた。
流石に今までの話聞いて鉄のお守り無双とか出来ないわ。
死んでいくこの世界の住人を尻目に「馬鹿だね、木のお守り金貨1枚で闘うからだよ鉄のお守り金貨10枚なら助かったのに、がっはははっ」とか出来るか!
助けられるのに助けないで無双してちやほやされるとか人としてすべてを失うわ。
なろうでも偶にあるんだよね、薬師や錬金術師になってちょっとした回復薬作るやつ、で作り方を秘匿する奴、ここまでは良い、そりゃお金は重要だからお金稼ぐのには文句言わない、問題は次の段階に移った時なんだよ、上位回復薬を作れる様になって作るなら下位の回復薬は作り方を教えてやれよと、秘匿したまんまで終わるやつ、中には上位回復薬作らずブラジャーとか作り出すやつ、いや絶対的に回復薬が足らなくて困ってる世界でブラジャーで無双している場合か!しかもそういう世界に限って奴隷に絶対他言無用が出来る。いや絶対他言無用が出来るなら奴隷に教えて勝手にお金稼ぎさせたらいいだろ、何で自分が見ている世界だけで無双するかな、広めて世界救おうぜ。
もっと酷いやつに至っては他の悪徳薬師を潰すやつ、質の悪いポーションを高値で売ってる悪徳薬師に安価で質の良いポーションを作って対抗するやつ、それで悪徳薬師に痛手を負わして、何故か悪徳薬師が犯罪を起こしたりして駆逐されるんだけど、
問題はその後、貴族に存在バレたとか言って逃げ出すやつが多いんだよ、その逃げ出された町、数年後に滅びるよね?
悪徳薬師が悪徳薬師で居たのは供給がしょぼかったからだろ?その貧素な供給すら潰してどうするんだ?責任取って次代の薬師が育つまで居ろよ逃げだすんじゃねえよ。
確かに話としては色々な街が出た方が良いから漫遊するのは否定しないがやってる事が後の事を考えてないから街を壊す漫遊記になってるんだよ。
「ねえ」とララさんが言った。
何故か皆が俺を囲んでいる、何故?
ララさんが俺にくっついたと思ったらほっぺにキスをした。
えっ?何この誘惑?
次にルルさんもしてきた、えっ? 次はリサちゃんが頑張ってしようとしているので膝を曲げてほっぺを差し出した。
そしてルーク君からも、えっ?何この状況?
意味が分からないぞ。




