ビンゴ
二千十六年、十二月三十一日、午後三時。
赤木と木下は昨夜、警察官二人が車にはねられ、殺害された事件現場に来ていた。現場には黄色いテープが張られ、応援に駆け付けた複数のパトカーによって、道路は封鎖されていた。
「まったく、ひでぇな」
赤木は血の跡がついた地面を見つめ、煙草をふかしながら言った。そんな赤木のもとに、木下が歩み寄ってきた。
「赤木さん、現場で煙草吸っちゃ駄目ですよ、まったく」
木下は呆れながら言った。
「はいはい、で、どんな感じなのよ」
「酷いですよ。まったく」
「え?俺の事?」
「違いますよ。赤木さんの事じゃないです。まぁ、赤木さんの仕事に対する姿勢は酷いと思いますが」
「殴るぞ」
「冗談ですよ」
「で、酷いって何が」
「遺体ですよ。殺された警官二人の。車で引いた後に、鈍器の様な物で何度も殴られた跡があったみたいです」
「狂ってやがるな」
「まったくです。やはり、やったのは橘でしょうか?」
「いや、まだ断言はできないだろ。そうだ、調べるように頼んだやつ。どうだった?」
「ああ、赤木さんの言う通り、接点が見つかりました。でも、何故あんな事を調べさせたんですか?」
「長年刑事をやってるとな・・。おっと、刑事ドラマのベテラン刑事みたいなサブイ事言いそうになった。危ない危ない」
「それと、もう一つご報告が」
一人つっこみをしている赤木の話を無視して、木下は話を続けた。
「なんだ?」
少し寂しそうな顔をして赤木は言った。
「昨夜、この道沿いにある食堂から百十番通報がありまして、何でも、お客同士で揉め事があったと」
「なんだそりゃ、橘の件と何か関係がありそうなのか?」
「うーん、それはちょっとわかりかねるんですか、何でも、食事をしていた男が急にヤクザ風の男二人にラーメンをぶちまけたり、腹をフォークで刺したり、滅茶苦茶だったみたいですよ。ちなみにその三人の男達は無銭飲食で逃げたみたいです。あと、調味料が盗まれたとかなんとか」
「ますます訳が分からねぇな」
赤木は困り顔で言った。
赤木がそんな事を喋っていると、赤木の視線の先に、一台の車が奥の道を走ってるのが見えた。それを見た途端、赤木は表情が変わり、慌てて、自分の車に走って行った。
「ちょっと!赤木さん、どこ行くんですか!」
木下は慌てて赤木を追いかけた。赤木は運転席に座り、木下は助手席に座った。
「まったく、何も言わずに、行動するその癖良くないですよ」
木下は息を切らせながら言った。
「おいおいおいおい、まさかとは思ったが、こいつぁ、ビンゴみたいだ」
赤木はしたり顔で言った。赤木はそのまま車のエンジンをかけた。
「ビンゴって。なにがですが!僕にも教えてくださいよ」
「いや、俺にも詳しいことはわからん。奴に直接聞いた方が早そうだぜ」
赤木はそう言うと、車を走らせた。