『覆水、盆に帰らず』
ことわざって否定する訳じゃないですが、あくまで、昔の言葉じゃないですか。
現代風にしたら、もっと分かりやすいんじゃないかって思いまして書き始めました。
突然ですが、<b>助けてください。</b>
僕は今、文芸部の先輩に捕まえられています。
「さぁ、信濃くん。今日から、私新しいことわざ辞典を作ることにしたから手伝ってちょうだい」
「やめてください。相模先輩、だいたい僕まだ文芸部に入ってないですから」
これはほんの数分前のこと。放課後、たまたまこの文芸部の前を通りかかったとき、突然その中に引き込まれ、さらに、紐で椅子に縛り付けられたのだ。
「じゃあ、信濃くん。早速始めよっか」
「とっ、取り敢えずこれ、外してもらえますか?」
僕はそう言いながら、紐を差し出した。
「そうねぇ。じゃあ、ここの部員になることと君の連絡先を私に教えてくれたら、外してあげてもいいけど」
先輩は部室の棚から、入部届を持ってきた。
「ここに名前を書いて頂戴」
「いや、まず、紐を外してもらえないと、名前を書けないですから」
先輩は僕の話をわかってくれたのか、紐を外してくれた。
僕は入部届に名前を書き、連絡先を伝えるべく、鞄の中でスマホを探した。
しかし、見つからない。
ふと、先輩をみると必死にスマホを操作している。よく見ると、先輩が持っているスマホは僕のだった。
ロックを外そうとしている。
てか、外した。
━━━何で、番号を知ってるんですか? 誕生日にしたのがわるかったのか? ていうか、何で僕の誕生日をしってるんですか?
色々質問をしたかったが、それをすると、また椅子に縛りつけられそうでしなかった。
すると、どうやら連絡先の登録が終わったようで、満足そうに僕にスマホを返してくれた。
***
「それじゃあ。今日は『覆水、盆に帰らず』ということわざをアレンジしていくよ。これは、一度やってしまったことは、もう二度と取り返しがつかないという意味よね」
「確か中国の故事から産まれた言葉でしたっけ。呂尚という役人がかつて貧しいときに別れた妻から、のちに復縁を求められたときに、盆と呼ばれる水を入れる容器の中身をだして、これを元通りに出来たら復縁してもいいって言ったていう、はなしでしたよね」
「信濃くん、さすがだね。でも今の時代、盆と言っても水を入れる容器だってわかる人は少ないよね。だから、信濃くん。早速現代風にして」
━━━うぉ。まじか、丸投げですか。
覆水、盆に帰らずねぇ。ふくすい、ぼんにかえらず。ふくすい⋯⋯。Mr,fukusui dosen't comeback in summervacation.うーん、やっぱり盆を何かに言い換えるべきか⋯⋯。
「そうだ、相模先輩。盆をスマホに言い換えたらいいんですよ」
「そうね。なら水はアプリといったところかしら?」
そう言って僕に発言を迫ってきた。
「アプリですか。でしたら、『一度消したアプリは、スマホに戻らぬ』なんてどうでしょう?」
「確かに分かりやすいけど。もっと短い方がいいんじゃないかな?」
「でしたら、『アプリ、スマホに戻らぬ』では、どうでしょう?」
「それ、いいじゃない。元の形も残っていて、しかも、わかりやすい」
そう言って、先輩はノートに書き記し始めた。
━━━良かった。気に入ってもらえたみたいだ。
書き終わったのか、先輩は僕にその文面を見せてきた。
あ行
「アプリ、スマホに戻らず」
意味⋯⋯一度消したアプリのデータはスマホに戻らないことから、一度してしまったことは取り返しがつかないという意味。
僕に見せつけて満足したのか、荷物を片付けてさっさと帰ってしまった。
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