第四話
少し短めです。ご容赦ください。
―――しばらくして―――
ある朝。俺はいつも通り目覚め、朝食をとっていた。
といっても、人間であった頃のように眠ったり食べたりしているわけではない。体の調整のためにスリープ・モードに移行したり、エネルギーとなる魔素や体を構成する鉱物資源を補充したりしているのである。このあたりの話は俺にもよくわかっていないし、長くなりそうなので割愛する。そういうものらしい。
「今日は左回りで採掘すんぞ」
「右回り終わってないよね?」
「ここんとこの採掘であらかた魔素が散っちまったからな。しばらく右側は休めることになった」
「なるほど、わかったよ」
ダイヤが今日の作業について説明してくれる。いつもはこの食堂―――といっても少し広い以外はほかの場所とほとんど変わらないのだが―――のしばらく先から右に曲がった先の採掘場に行くのだが、今日は左の採掘場に行くらしい。
魔素というのは鉱石に含まれる成分、人間が使う魔道具や俺たちゴーレムの動力源となっている。採掘作業をしていると何らかの影響で鉱石に含まれる魔素が空気中に飛んでしまうので、それが鉱石内に取り込まれるまで休めることになるそうだ。ちなみに、今俺たちがいる場所も魔素を含む鉱石、魔鉱石が多くあったのだが、何年も前にとりおえてしまったため、俺たちの生活スペースになっている。
「あと、今日はトパー、カーパーも同じ方面に来る。ゴルド、シルバとルビー、ガネトはプラチナと人間に会う。なんか話があるみたいでよ」
「トパーたちと一緒なのは久しぶりだね。人間が、ってことは俺は素材の運搬には参加しちゃダメなんだね」
「わかってんじゃねぇか。前みたいにダダこね始められなくてありがたいぜ」
「まだ人間に会うな、ってラビに言われてるんでしょ。しょうがないじゃないか」
「いずれ会えるからその時のお楽しみにしな。さて、そろそろ仕事に行くぞ」
「ああ」
俺たちは食堂を離れ、採掘場に向かった。
採掘場についた俺たちは、魔鉱石の埋まっている壁を崩し、がれきの状態にし始めた。このがれきをまとめてエレベーターのところまで運び、そこで人間に渡しているらしい。
「左側も少し不作気味かな・・・」
「そこそこ休ませたはずなんだがな」
「俺たちはもう少し奥で採掘してみるぜ」
「頼んだぜ、トパー、カーパー」
そういって、トパーたちは奥へと行った。
「トパー、カーパー、大変だよー!」
「一大事だよー!」
しばらく作業を続けていると、ルビーとガネトがやってきた。いつも無駄に動き回っている二人だが、急いでいるのかまっすぐこちらへやってくる。
「トパーたちなら奥にいるぜ。急ぎの用なら事情は俺が聞こう」
「それがさー、ダイヤ……ってダイヤ!?」
「エマスもいるじゃん!まずいよー、エマスはちょっと隠れてて!」
かなり慌てているためか、二人は説明をしてくれない。隠れていろ、と言われても……
「いきなり言われても、隠れてる場所なんてないぞ……」
「何が起こったか教えてくんねぇと、どうすべきか判断できねぇぞ、お二人さんよぅ」
「でもダイヤー、そんな場合じゃないんだってー!もう来ちゃうよー!」
「ことは一刻を争うんだよ……ってマズっ」
「おい、ガネト……なんで、あんな奴がっ」
それを見て、皆は焦っているようであった。だが、俺は余りのことに茫然としていた。
なぜなら、突然現れたのは、
「一体突然どうしたというのだ、S‐3、S‐4……ッ!!お前は、何者だ!」
「人間……」
一人の、男だったからである。
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次回は11/4 10:00更新予定です。