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第7話

Another Story

  綾野 祐介

第7話


 翌日、やっと郷田局長に会うことが出来た

のだが、そこで聞かされたことは思いもよら

ないことだった。


「私にアメリカに行けと仰るのですか?」


「それ以外に聞こえたかね。」


「いいえ、確認したまでです。ただ、理由を

聞かせていただけませんでしょうか。あまり

にも突然ですので。」


「いいだろう。君が最近関わりを持ったこと

に起因するのだよ。報道管制が引かれたこと

も含めてな。」


「私が関わったこと?」


「そうだ。君は最近、滋賀県で起こった墓場

荒らしの件を内密に追っていただろう。」


 会社にはとっくの昔にばれていたのだ。そ

のうえ、本社の局長まで報告が行っていたと

は。


「その件はある筋からの圧力で第二報が出せ

なくなったのだ。だから君がいくら取材して

もその記事は掲載されることはない。そして

その後に君が訪ねた琵琶湖大学の生徒のこと

だが、その件についても圧力がかかっている。

あの場所で行われたのはあくまで映画の撮影

であった、ということだ。」


「それはどちらも同じルートの圧力なのです

か?」


「うちに直接言って来たのは同じだが、その

元はどうも違うようだな。ただ、どちらでも

同じ、というような類のものらしい。」


「と言いますと。」


「アメリカだよ、アメリカ。あそこが日本政

府に圧力をかけてきたのだ。」


 話がだんだん大きくなってきた。


「それで私にアメリカに行けと?」


「いや、それは違う。君には東海岸のある小

さな街に行ってもらいたいのだ。そこで今回

の圧力の原型となっていることを調べてきて

ほしい。」


「ある小さな街?ですか。」


「アーカム、という街だ。」


 それは昨日読んだ本に頻繁に出てくる街の

名前だった。


「アーカム、って実在するのですか?」


「小説の中の話、とでも思っていたのかね。

アーカムもインスマスもミスカトニック大学

もあるからこそ君に行ってもらうのだ。」


 郷田局長は結城良彦が綾野祐介から借りて

読んだ本で得た知識以上のものを既に得てい

るようだ。そしてそれを現実のことと認識し

ている。


「あの神話が実話だと思っておられるのです

か?」


「現実なのだよ、だからこそ圧力がかかるの

だ。だが私は自分の知らないところで事が進

められているのは許せない。事実を把握した

うえで報道管制されるのならまだましだだが、

今回の件は謎が多すぎる。それでほっておく

と社としては拙い事になりそうな君を呼び戻

した、という訳だ。」


 こうして結城良彦は、うえからの圧力が気

に入らない郷田局長の、どちらかといえば単

なるわがままのためにアメリカに渡る事にな

った。綾野祐介に借りた本はそのまま返せず

終いだった。

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