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第23話

Another Story

  綾野 祐介

第23話


 結局アーカム財団からはマリアが戻ったと

の連絡はなく、恩田、結城、浩太の三人で琵

琶湖大学付属病院心理学病棟にに乗り込むこ

とになった。


 心理学病棟は湖北にある本校とは別に湖西

に建てられている。琵琶湖畔ではあるが周囲

は高木で覆われているので周辺から中の様子

は覗えなくなっている。恩田の車で乗り付け

た三人は早速受付へと向かった。


「あっ、恩田先生、おはようございます。」


 病棟の受付職員の方から声をかけてきた。


「おはよう。一昨日電話しておいたけど、地

下を案内したいので、よろしく。」


「はい、お聞きしています。ここにお名前を

いただいて、この入館証を付けていただけま

すか。そちらのお二人だけで結構ですよ。」


 言われる通り名前を書いてプレートをもら

い胸に付けた。


「では、こちらへどうぞ。」


 案内しようとする職員を恩田が止めた。


「いや、地下の鍵を貸してくれないか。僕が

案内するから。」


「先生、ご存知かとは思いますが、規則で必

ず一人は職員が付くことになっておりますの

で。」


「判ったうえで頼んでいるのだけど、駄目な

のかな?」


「申し訳ありませんが、ご要望にはお応えか

ねます。どうしても、と仰るのならご見学は

許可できません。」


 断固たる職員の態度に恩田は仕方なく折れ

た。


「判った、君に案内してもらおう。」


「館内には危険な場所もございますので、ご

了承ください。では、こちらへ。」


 この手の対応には慣れているのだろうか、

その職員は20代前半の若い女性にもかかわ

らず譲らなかった。自由に歩き回ることはで

きないようだ。


 職員を含めて四人は地下に向かうエレベー

ターに乗った。セキュリティカードを翳さな

いと動かないようだ。


「地下1階は女性患者、地下2階は男性患者

が入院されています。地下3階より下は研究

病棟なので今回はご案内いたしません。では

まず地下1階をご案内しますね。」


 恩田助教授から事前に得ていた情報とは違

う説明だった。地下3階は確かに研究室が並

んでいるらしいが地下4階と5階は隔離病棟

で地下6階は恩田助教授も足を踏み入れたこ

とがなく情報もない、とのことだった。恩田

助教授の考えでは、綾野はこの地下6階にい

るのではないかと言うことだった。いかにし

て地下6階に降りるかが問題だ。


 地下1階に降りると、そこは長い廊下の一

番端だった。長い廊下が続いており、その両

側に部屋が配置されている。いくつかのドア

をみてみると、ドアの向こうに小さな部屋が

あり、その向こうにまたドアがあって、奥が

病室になってるようだ。


 一つ目のドアの横には部屋番号が貼ってあ

るが患者名は出ていない。


「病室に患者名は出ていないのですね。患者

の間違いとかは大丈夫ですか?」


 結城が質問してみると


「はい、全ての患者さんは腕にICチップ付

きのベルトをしていますので、投薬の時や点

滴はそのチップを確認してますから間違いは

ありません。」


 名前が出ていない理由を本当は聞きたいの

だが、そこはとりあえず我慢することにした。

しばらく四人で廊下を進んでいたが、景色は

全く変わらない単調なものだった。両側のド

アが規則正しく並んでいるだけだ。色の基調

が白一色なので、普通の精神状態の者でも何

らかの異常を来たしそうだ。


 廊下のほぼ中央付近にナースセンターらし

く職員が詰めている部屋があった。但し通常

の病院のようなカウンターがあって中が見え

る造りにはなっていない。病室よりも大きめ

なドアがあるので、そうだろうと推測できる

だけだ。うっかりすると見逃してしまうだろ

う。


「ここが看護師や職員の詰め所になります。」


 案の定、案内してくれている相馬という名

の女性が説明してくれた。


「なんだか病室との区別がつきにくくて間違

いそうですね。」


 岡本浩太が素直な感想をいった。


「万が一患者が病室を出てしまった時のシェ

ルターになっていますから、わざと判りにく

くしてあるのですよ。」


「いままで、そんな事態になったことはある

のですか?」


 結城が聞いてみると相馬は少しだけ『しま

った』というような顔をした。


「もちろん、そんなことは今まで一度もあり

ませんし、今後もないでしょう。」


 平静を装っていたが、その口調からは到底

事実だとは思えなかった。


「トイレをお借りしてもいいですか?」


 予め決めてあった合図だ。どうしても下の

階に行くタイミングが図れないときは岡本浩

太がトイレに行く、と行って一旦離れてしば

らく戻らないようにし、『トイレにいない。

どこに行った?探さないと。』という流れで

結城と恩田がバラバラに浩太を探すことにし

て案内の人を撒く作戦だった。もちろん浩太

はトイレに隠れて、他の二人が探しに行った

後に地階へと向かう予定だった。


 職員の相馬にトイレの場所を聞いて向かっ

た浩太は、中で意外な人と出会った。

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