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第17話

Another Story

  綾野 祐介

第17話


「やあ、よく来てくれたね、岡本君、それと

こちらが?」


「はい、はじめまして結城良彦といいます。

陽日新聞の記者をやっています。綾野先生と

は少しかかわりがありまして、国内では取材

をさせていただき、アメリカでは一緒に行動

したこともありまして。」


「そうなんです、あのりチャードさんと綾野

先生とでダゴン秘密教団の廃墟跡からサイク

ラノーシュ・サーガを発見した時にも立ち会

っていたそうです。」


 ヴーアミタドレス山に行ったときに多少の

事情は聞いていた新山教授は、少しは気を許

したようだった。それまでは新聞記者と聞い

て警戒していた様子だった。


「なるほど、それで岡本君と一緒に綾野君を

探しているという訳か。」


「ええ、なんでも教授のところに電話があっ

たと聞いたものですから。」


「杉江君から聞いたのだね、だが残念ながら

私のところにかかってきた電話の内容から綾

野君の現在の居場所を探すのは無理だろうね、

まったくそのような話は出なかったから。」


「そうですか、ちなみにどのような用件で綾

野先生は電話をかけてこられたのですか?」


 一瞬新山教授の目が杉江統一を睨んだ。余

計なことを話した、と咎めているかのようだ

った。


「それは話す必要のないことだな。当人の私

が手がかりがなかった、と言っているのだ、

それ以上はいいだろう。」


 もう、この件については話すことはない、

といった感じで新山教授は自分の机に向かっ

てしまった。杉江と岡本浩太は顔を見合わせ

たが、それ以上は教授を追求できる筈もなか

った。


「判りました、では新山教授、私たちはこれ

で失礼します。ただ、何か思い出されたりし

ましたら、岡本君にでもご連絡いただけます

でしょうか?」


 新山教授は仕草で、わかった、と表現して

言葉は発しなかった。もう話したくもない、

という態度だ。


 岡本浩太と結城良彦が部屋を出ると杉江統

一が追ってきた。


「ごめんな、浩太。教授から怒られてしまっ

たよ。でも、電話がかかってきたときは、そ

れほど重要な内容とは思えなかったんだが。」


「いや、いいさ。でも何か変わったことがあ

ったりしたら、連絡をくれないか、教授には

内緒で。」


「綾野先生の行方のことだからな、判った、

連絡するよ、じゃあな。あ、結城さんもすい

ませんでした。」


「ああ、よろしく頼むよ、杉江君。」


 杉江が離れて行くのをまってから、結城が

浩太に話しかけた。


「杉江は何か知っているみたいだな。」


「そうですね、でもあまり追求しても何も話

さないでしょうね。あいつ、新山教授に心酔

しているから。」


「そんな感じだね。電話の件も本当に重要だ

とは思わなかったのだろう。だから私たちに

簡単に話してくれたのだろうな。教授に怒ら

れるとは思わなかったのだろう。」


「確か綾野先生が、あの二人は何か隠してい

る、と言っていたことがあります。そのこと

と関係があるんでしょうか?」


「関係があるのかもしれないし、ないのかも

知れない。いずれにしても二人の動向は注目

しておかないといけないだろうね。」


 浩太と結城は今後の対策を練るために浩太

のアパートへと向かうのだった。


年内はここまで、次回は年明けになります。

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