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第16話

Another Story

  綾野 祐介

第16話


 翌日、結城は昼過ぎに岡本浩太の部屋にや

ってきた。何か情報を掴んだ様子だった。


「何か判りましたか、結城さん。」


「ああ、多少のことはね。橘教授には会うこ

とが出来たよ。自宅で療養しておられた。精

神的にはかなり参っているみたいだったけれ

ど、体のほうは何の問題もない、と言ってお

られたよ。綾野先生の消息には心当たりはな

いそうだ。それと、最近自身の遺伝子に残さ

れているクトゥルーの記憶が、少しずつ甦り

つつある、とも仰っておられた。何か思い当

たったら連絡をくれるそうだ。途方もない話

だね。どんな、気持ちなんだろう、自らがク

トゥルーの子孫である、ということが判った

りしたら。」


「僕も子孫ではないですけど、一部はツァト

ゥグアの遺伝子を取り込んでしまいましたか

らね。もう、結婚は出来ないと思っています

よ。子孫を残すなんてとんでもない話です。

こんな思いは僕の代で終わらせないと。」


 結城良彦は岡本浩太の顔をまざまざと見直

した。不用意に彼の心の傷を突いてしまった

こともさることながら、若い浩太がしっかり

と自分を失わずに生きていこうとしているこ

とに驚きを覚えたのだ。ただの若造ではなか

った。


「すまないね、余計な話だったな。」


「いえ、いいんです。それより、僕も心当た

りのある何人かに聞いてみたんですけれど、

僕の叔父のところに最近電話があったらしい

んです。」


「あったらしい、とは?」


「ええ、実は留守番電話にメッセージが残さ

れていただけで、叔父も叔母も直接は話せな

った、という話なんです。」


「それで、そのメッセージにはなんと?」


 録音されていたメッセージは、


「ご無沙汰しています。綾野です。ちょっと、

勇治に相談があるから、近いうちにそっちに

行きます。では、また。」


 というものだった。この時点では行方を暗

ませる様子はなさそうだ。相談、とはどのよ

うなことだったのだろう。


「相談内容に心当たりはないか、叔父に尋ね

てみたんですけど、特に思い当たらないそう

です。ほんとに綾野先生はどこに行ってしま

ったんでしょうね。」


「君に何も言ってない、ということは、何か

突発的な出来事のために姿を消したとしかお

もえないがね。そうだ、そろそろ新山教授を

訪ねることにしよう。」


 二人は熊本から戻っているはずの新山教授

を生物学教室に訪ねるのだった。



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