表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/33

第15話

Another Story

  綾野 祐介

第15話


 まず最初に尋ねたのは琵琶湖大学医学部の

恩田助教授だった。岡本浩太が一度綾野祐介

の消息を聞いていたのだが、その時はまとも

に答えてもらえなかったからだ。


「綾野先生ですか、そういえばこの間の四月

の二三日に検診の予定だったんですが、みえ

なかったですね。定期的にデータを取ってい

たのですが。どうかされたんですか?」


 単純にとぼけているのか、元々無表情なの

で見抜くことが出来なかった。あまり追求し

ても埒が明かないので結城良彦と岡本浩太は

その場を辞した。


「恩田助教授からは情報を得るのは難しそう

だね。」


「そうですね、でもどうしましょうか。」


「他の関係者には連絡が取れるのかい?」


「桂田は行方不明です。病院から抜け出して

一度保護されたんですが、また何処かに行っ

てしまったんです。自分の意思ではほとんど

動けない状態だったんで、誰かに拉致された

可能性が高いと思います。警察にも家族が届

けたみたいですが、いまのところ何の情報も

ないようでした。橘教授は自宅で療養中と聞

いていますけど。」


「たしか、この大学の教授もひとりなんとか

っていう山に一緒に行ったんじゃなかったか

な。」


「ああ、新山教授ですね。そうですね、新山

教授のところにいってみましょう。」


 ふたりは生物学教室の新山教授を訪ねてみ

た。しかし、あいにく教授は留守だった。岡

本浩太の同級生である杉江統一は在学中に既

に新山教授の助手を務めているのだが、彼だ

けが控え室に居た。


 杉江統一に結城良彦を紹介した岡本浩太は

直ぐに本題に入った。


「それで新山教授は今日は何処にいかれたん

だい?」


「教授は学会で熊本にいっておられます。帰

りは明日の午後になると思いますけど。本当

は学会なんて行ってる場合じゃないんですけ

ど、なんでもどうしてもやらなきゃいけない

講演があるとかで。」


「なぜ行ってる場合じゃないんだい?」


「大切な実験の最中だからですよ。ほんとに

大切な、ね。」


 詳しくは言わないが杉江の話はかなり思わ

せぶりだった。話したいのだが話せない、そ

んな感じがした。元々功名心の強い青年なの

だ。自分が教授と行っている実験の重要性を

示唆しているが、今の段階ではその内容まで

は話せない、というところだろうか。


「ところで、綾野先生を知らないか、最近こ

こに立ち寄ったとか。」


 岡本浩太が本来の目的について質問した。

何故か杉江は、おやっ、という表情で答えた。


「最近はみえてないけど。そういえばこの間

教授宛に電話はかかってきたけどな、でも内

容は知らない、教授も話してくれなかったし。

戻られたら直接教授に聞いてみたらどうだ。」


 多少突き放したように杉江は話はここで終

わり、というような顔をした。しかたないの

で、教授が戻られる頃に再び訪れることにし

て二人はその場を立ち去った。


「とりあえずは、明日新山教授を訪ねてみる

しかないね、僕も一度大阪のホテルに帰って

明日もう一度こっちに来るようにするから。

その間にできるだけ手を尽くして綾野先生の

消息を当たってみよう。それなりの情報網は

ある筈だから。」


「お願いします、結城さん。僕も心当たりを

当たってみます。」


 とりあえず、また明日、といって二人は分

かれたのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ